【1/14】小倉秀子先生の講演「機能的リハビリテーション・発達運動学的アプローチをPTとして獲得するためには何が必要か」
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患者中心の医療を学びにアメリカへ
―――なぜ理学療法士になろうと思ったのですか?
小倉先生:私の母は「女性に学問はいらない」という時代に生まれ育ち、「栄養士になって自立をしたい」という夢を断念せざるを得ませんでした。母は私が子供の頃から、女性の自立の重要性を強調しました。
そのため、私は子供の頃からすでに経済的に自立出来る仕事を探し、中学生の頃、理学療法士(以下PT)の存在を知りました。私はいわゆる体育会系の単純な性格なので、理学療法士を知ったとき、自分の性格に合うのはこの体育会系の仕事だと思い、PTを目指しました。
―――養成校をご卒業後、横浜の大学病院に勤められ、渡米していますよね?どうしてアメリカだったのですか。
小倉先生:父は私がPTの学生だった頃、末期ガンの診断を受けました。当時、患者に対して末期ガンの告知をしない時代だったのです。周りの家族は父が余命まもないと知りながら、父は本当の病名や余命を知らずに亡なくなりました。
父の闘病生活1年間は、父に嘘をつきながらの本当に辛く苦しい一年でした。この経験で、日本の医療の在り方に大きな疑問を覚えました。自分の人生を最後まで責任をもち、自立するという意味で、アメリカに行ってみたい気持ちを強く持ちました。
―――いきなりアメリカというのも思い切った選択だったと思いますが、準備などはされたんですか?
小倉先生:アメリカに行こうと決意した時点では、ほとんど英語が話せない状態でした。将来のためを思い、貯金はしていたので、おそらく400万円ほどあったでしょうか。最初は、3ヶ月の語学留学を目的に行きました。
尊敬する同僚の紹介で、カリフォルニア州のバークレーを選んだのですが、バークレーは本当に自由でのびのびとしており、素晴らしい出会いがありました。
障害者の方々が自立して暮す姿を街で見かけ、色々な国から苦境に負けず頑張っている人々との出会いに感動しました。バークレーでの生活と人々との出会いが、ここで暮らしてみたいという気持ちを強くしました。
アメリカのための資金と語学力
―――その当時の資金稼ぎはバイトですか??
小倉先生:そうです。大学へ編入してからの夏休みには日本で複数のPTのバイトを掛け持ちしながら、学資、生活費を貯めました。2年ほどそのような生活で、大学へ編入し、学士号を取りました。
―――現在の旦那さんは日本人ですか?
小倉先生:いいえ、私の夫は、21歳の時にチェコからアメリカへ亡命し、現在アメリカ国籍です。私は夫とサンフランシスコで出会い、カリフォルニアの形式で結婚しましたので、夫婦別姓を選びました。
日本は2重国籍を法律で認めていませんので、私は日本国籍を選びました。ということで、ご質問のお答えを言えば、夫はアメリカ人で、私は日本人です。
―――ご主人の影響でヤンダアプローチ、DNSアプローチに出会ったのですか?
小倉先生:いいえ。これは石川県で理学療法の発展に貢献されている荒木茂先生の影響です。
海外に行くための心得
―――印象として、アメリカのPTはあんまり徒手をやらないイメージがあるのですが、どうでしょうか?
小倉先生:職場によると思います。しかし、私の今の職場では、徒手療法の長期講習会に参加して、きちんと行う人は少数派の印象があります。今の職場の20代・30代のPTでは徒手療法などの長期講習に行っている人の方が少数です。個人的にはそれはとても残念だと思います。
―――そういうのを勉強する環境って整っているんですか?日本ではほぼ毎週の様にセミナーがあるんですが。
小倉先生:カリフォルニアではPTは免許を更新する際に一定の教育プログラムの単位が必要です。しかし免許更新のためだけに、オンラインで簡単にできるものや受講料の安いものばかり選び、きちんと勉強しないPTもいます。
アメリカにいようが日本にいようが頑張っているPT、怠けているPTはいます。最終的には国に関係なく、勉強するしないは個人の力であると強く感じています。
―――お給料は実際どれくらいですか?
小倉先生:新卒でもカルフォルニアの場合は、年収600—650万円くらいでしょうか。日本の新卒の方々がアメリカを目指したいと思う気持ちがわかります。日本の新卒の方のお給料はきっと米国の半分程度ではないでしょうか。
―――海外に行きたいPTも増えてきましたが、なにかアドバイスいただけますか?
小倉先生:まず、海外に行くにあたり、お金が必要です。私の場合、英語学校で勉強している頃は、生活費と英語学校の費用など切り詰めても1年間300万円、大学に入ってからは年間500万ほど使いましたので、貯金したり資金を調達する手を考えておくことが必要です。
日本にいるうちから語学の勉強を開始すること、そしてアメリカでは州ごとに法律が異なりPTの免許試験内容なども異なりますので、自分の行きたいと思う州の下調べすることは大事だと思います。
また最低一度は自分の行きたい州に行き、本当にそこで暮らせるかどうか検討してみた方がよろしいかと思います。
―――州の選び方ってありますか?
小倉先生:そうですねえ。東京が好きな人はニューヨークが好きそうな気がします。カリフォルニアはなんとなく関西系のような気がします。しかし、やはり実際に行って見て自分にあっているか確かめるのがとても大事と思います。
―――海外で働く日本人療法士のコミュニティってあるんですか?
小倉先生:あるのかもしれないけど、私は知りません。そもそも日本人の友達はアメリカには一人しかいませんし、孤独に生きていますので・・・。これだからアメリカがあっているのかもしれませんね。
―――今もし、別のところに留学できるとしたらどこに行きたいですか?
小倉先生:スカンジナビア系に生まれたかった・・・。社会保障がきちんとしていて、老後に安心して暮らせるところがいいな。あとはカナダ。我が家の近所と違って、治安が良さそうだから(笑)。
―――オーストラリアとかはどうですか?
小倉先生:オーストラリアは行ったことがないので、わかりません。ただ、お正月が夏のシドニーで是非元旦に花火が見てみたい。
―――先生のおすすめの本を教えてください。
小倉先生:専門書では苦労して訳したヤンダアプローチ。若く悩めるPTさんにお勧めなのは、迷いのち晴れ (絶版になっているので探すのが大変かも・・・)
―――生にとってプロフェッショナルとは?
小倉先生:専門の勉強を一生続けること。50歳を過ぎると体力的、精神的に新しいことを勉強するのがどんどん大変になってきていますが、負けずに頑張ります。
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【目次】
第二回:ヤンダアプローチ、DNSアプローチとの出会い
小倉秀子先生の経歴
東京都新宿区出身。東京都府中リハビリテーション学院卒業し、
現在日本では理学療法士・
※ヤンダアプローチに興味がある方は、こちらをご覧ください。
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