就職はしていないです
――理学療法士になったきっかけを教えてください。
成瀬先生 実は大学へ入学するまで理学療法士を知りませんでした。大学では、医学部を受験しましたが不合格になりました。後期では合格圏内の大学として、神戸大学医学部保健学科を受験したため、入学まで理学療法士を知りませんでした。
入学してからわかったことですが、結果的には医者より向いているなと思いました。それに気づいたのは、4年の頃でしたが、「人に元気を与える仕事だな」と思えたのです。
バイトが忙しく1年間大学を休学したこともあり、不真面目でしたが、魅力に気づいてからは、勉強をしっかりしましたね。
成瀬文博
理学療法士、株式会社エブリハ代表取締役、神戸女子大学非常勤講
株式会社エブリハは「人々の健康増進をサポートする」企業として
―― 就職はどちらに?
成瀬先生 就職はしていないです。正規職員としての就職はしていません。病院や介護施設の非常勤勤務をしていました。
実は学生の頃、謝恩会の実行委員などの活動を行なっていたため、就職活動もしないまま卒業年の3月31日を迎えてしまいました。結局、ハローワークに行ってバイトを探しましたが、「時給の高いところから教えてください」と伝えたら、お説教されてしまいました(笑)
当時はまだ、時給3,000円という募集もあり、リハ室の立ち上げをいくつか経験できました。その頃の経験は、非常に役立っています。理学療法士のバイト以外にも、コンサートのバイトや家庭教師をして、掛け持ちを2~3年ほど行なっていました。
「理学療法士ってこんなもんか」
―― 理学療法学生協会(JPTSA)を始めたのは?
成瀬先生 皆さん学生の頃、実習行くでしょう?私たちも3年時に、見学実習があり、初めて臨床の場に出ました。最初に思ったのは「理学療法士ってこんなもんか」ということでした。
「なんでこの人は理学療法士なのにマッサージばかりやっているんだろう」や「この先生、LCSが何の略かわからずに使っているんだ」など、想像していた理学療法士の姿と現実にギャップを感じ、疑問に思い始めました。
実習終わってから同級生に聞くと、みんなが同じことを思っていました。
同じ大学を卒業した、他学部の学生は年収600〜700万ほどあります。それなのに理学療法士は年収300万。
「この格差はなんだろう」と感じたときに「他校の学生の話も聞いてみたい」と思い、直接広島までいき、飲み会を開催しました。
「理学療法士には明るい未来がある」、「自分たちの力で何かを変えられるのではないか」と考え、学生のうちから、話し合う機会や、自己研鑽が出来る場所があったほうがいいのではないかと思い、それが出来る形として学生協会をはじめました。
―― 今も続いていますよね。
成瀬先生 そうなんです。他の団体がどうやって運営しているのか全部調べ、それを参考に、絶対続くような仕組みを作り上げました。
そのため、後輩とは今でも接点があります。私は神戸大学の7期生なのですが、今の20期生のことも知っています。年に一回は会うようにしています。
「僕らの時代のPTはこんなんやったんやで」ということを話したり、
「君らの時代はこうしたほうがいいんじゃないか」
というようなやり取りを今でもしています。だからいまでも続いているんじゃないかと思います。
日本の学生と海外の学生の違い
―― アジアも仕掛け人なんですか??
成瀬先生 仕掛け人は台湾人です。日本で理学療法学術大会があったとき、台湾の大学生たちが、「アジアの学生と交流したい」という趣旨の発表をされて、その後、国立台湾大学の学生たちが中心となって、日本の大学に連絡を取ってきました。
その連絡してきた中に神戸大学が入っていました。日本の大学の子とつながりたいと、神戸大学以外にもいくつかの大学に声をかけていたみたいです。
たまたま神戸大学の先生が受けて、僕のところまで話が来ました。
私が、学生さんを引き連れ、台湾まで行き、日本にはすでに学生協会があり、組織運営も確立しているという話をし、それを参考に、アジア理学療法学生協会(以下APTSA)ができました。台湾・日本・韓国・香港・インドネシア・マレーシア・フィリピンです。
―― 日本の学生と海外の学生の違いは?
成瀬先生 決定的に違うのはアグレッシブなところですね。日本の学生は安定志向が強く、生活に困窮もそれほどしていないのでハングリー精神が少ないのかなと思います。すべて安定していて、就職しなくても保護されるため、その辺で差が出るのだと感じます。
例えば、先日インドネシアでAPTSAがあり、それに参加する学生と事前に打ち合わせした際に、インドネシアのことを調べたのかを聞いたところ、全く調べていませんでした。
人口や宗教、文化や言葉などを知らない状況では、ただ行くだけになり、学びがなくなります。自分の頭で考える、実行するパワーが日本の学生には足りないと感じます。
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