ー マインドフルネスでは、今を大事にすると思います。そんな中でも、未来のことを考えたりしますか?
織田 当然考えますよ。家族もいますからね。その辺は、家族ができてから考えるようになりました。1人の時は「今を生きる」という感じでしたが。
ー 養成校の学生さんや若手療法士から、未来に対して不安があるという悩みをよく聞きます。未来を考えすぎていて、未来を考えるにしてもまずは今を考えれば“今ここにいる状態”だから不安はないのではないかと思います。その辺についてはいかがですか?
織田 よく自分が言われていた思考優位というものです。考えばかり先行して、今やっている事に集中出来ていない状態だと思います。
今やっている事を一生懸命やっていれば、未来も変わるのでは?という事です。
未来を見ることは悪いことではなく「今は未来を見ているんだ」と気付いていたら良いんじゃないでしょうか。
一方で、今が抜け落ち、未来にとらわれているとダメなのかな?なんて思います。
未来の方に思考が回っていることに気付かず、どっぷりと浸かってしまうと辛いですよね。
「未来はどうなんだろう?と今、思っている」と考えると現在に帰って来られます。
ー すごいメタ認知なんですね。
織田 そうなんです、メタ認知なんです。
帰って来られる「今」という場所があるという事が大切で、メタ的に気付いている事がすごく大事です。
ー では、特別にマインドフルネスを勉強して、日常に取り入れるというよりは、日頃からの考えが重要ということになりますか?
織田 その通りです。だから、マインドフルネスというのは、作業療法のその作業の中に、確実にあるんです。
だから、自然にマインドフルな状態になっているのだと思います。意識しないままにマインドフルネスを体験していることも多いでしょう。
そのように、事実として感じてはいるのですが、ひとは往々にして「心ここにあらず」となってしまう、そんな生き物なのでしょうね。
それに気づいた時には、もう一度自分自身の心を、今ここに置いておきましょうという感覚ですね。
ー ということは、先生も患者さんを触っているとき、指の感覚や空気感などを感じながら臨床に望んでいるということになりますか?
織田 もちろん感じながらやっています。例えば、自分が患者さんを触っている時、実は同時に患者さんから触られているんです。その相互性を感じながら、臨床を行っています。
弁証法的臨床ということですね。
ー 非常に勉強になりました。先生は多くの知識をお持ちですが、どのような書籍を常に読んでいるのでしょうか?先生のおすすめ書籍を教えてください。
織田 マインドフルネスでおすすめな本は「マインドフルネスを始めるあなたへ」という本です。
ジョン・カバットジンが書いている本で、マインドフルネスの輪郭を掴み易くためには、わかりやすい一冊となっています。
ー 最後に先生にとってのプロフェッショナルとは?
織田 「目の前の人に対して最大限の事ができる事、人」だと思います。
織田靖史先生 プロフィール
作業療法士,博士(保健学) 玉野総合医療専門学校 作業療法学科
吉備国際大学保健福祉研究所 準研究員
(一社)日本作業療法士協会教育部 重点課題研修班 中四国エリア エリア長
精神障害者Futsal team "CitRungs Tossa" 監督
日本ソーシャルフットボール協会(JSFA) 地域推進委員(高知県)