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【認知症のある方を担当したら】 その4「こそあど言葉」使用の適否

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あんまり身近過ぎて意識しにくいんじゃないかと思うのが、「こそあど言葉」。


「これ」「あれ」「それ」
リハ中に無意識に使われてる言葉の1つだと感じています。

 

どうでしょうか?

 

「こうして」「ここをもってそれからこうやって」
使っていませんか?

 

 

認知症のある方に、この「こそあど言葉」を意識して使い分けるとスムーズにリハが進むこともよくあります。

ポイントは、言語理解力と構成障害の有無と身体活動体験です。

 

認知症の方は言語理解力も低下していることがよくある


さまざまな脳の疾患によって引き起こされる認知症という状態像は、記憶障害以外にもたくさんの障害が起こります。

このことが案外知られているようでいて知られていなくて、だから目の前で起こっていることが何なのかわからないというケースが少なくないように感じています。

 

 

たとえば、平行棒でつかまり立ちを促すような時に「身体を前に倒してそれから腰をあげましょう」と声をかけた方が良いのか、それとも「このあたり(指で場所を指し占めしながら)を手でつかみます」「はい、よいしょ」と動作介助をした方が良いのか、その方の状態によって異なります。

 

 

これから何をするのかを伝える時の工夫として、言語理解力が低下している方には、こそあど言葉を使うと同時に視覚的情報としてジェスチャーで示すという伝え方をする方が有効なことがよくあります。

 

 

上記の例で言えば「このあたり」「ここ」という言葉と指差しが該当します。

 

 

認知症のある方でも言語理解力が低下していることはよくあり、長い文章や名詞が並列的に使われるような文章だと理解できない場合が出てきます。

 

日常生活の具体的な事象に関してはあまり表面に目立たなくても、非日常的な行動を促す場合に顕在化するということがよくあることです。

 

逆に言語理解力がそれなりに保たれている方でも構成障害がある方には、こそあど言葉を使うことやジェスチャーの多用を回避した方が望ましい場合もあります。

 

構成障害とは、全体と部分・部分と部分の位置関係の認識と再現に困難があるという状態像です。構成障害があると「見てマネをする」という行動が困難になることがあります。

 

「ラジオ体操第一」と「みんなの体操」の違い

たとえば、集団体操を行う時に、昔からある「ラジオ体操第一」は手続き記憶化しているので的確に模倣できるけれど、最近始まった「みんなの体操」は手続き記憶化していないので、目の前でセラピストが運動しているのを見て模倣しようとするのだけれども的確には再現できない。

 

あるいは、何か手工芸的なActivityを提供した時に、工程を説明する時にセラピストが隣で見本を作りながら「ここをこうして」「そこをもちあげて」等のこそあど言葉で説明してもわからなかったり、違うことをしてしまったりといったカタチで現れることがよくあります。

 

こんな時に「認知症だからやっぱり難しかったか」というような大雑破な判断だけでは、ご本人のためにもセラピストの成長にもつながりません。

 

構成障害があってできなかった時には、言語理解が保たれている方場合には、こそあど言葉を使わずに「折り紙を横半分に折って」「両端を同時に上に向かって持ち上げて」などの言葉で明確に伝えた方が工程の理解に結びつくこともあります。

 

あるいは、今回は詳しくは触れませんが、工程を言葉で説明するのではなく、対象に工程を語らせるような工夫をすることもあります。

 

認知症のある方に、「ここでどんな運動をするのか」「ここでどんな風にして作るのか」を説明する時には、言語理解力と構成障害の有無とを踏まえてどちらの能力に働きかけるのか、セラピスト自身が明確にしておくことが必要です。

 

また、構成障害があったとしても生活歴の中で身体活動体験を豊富にしてきたような方の場合には、簡単な折り紙はできなくても、目で見て身体を動かして再現することはできるということがよくあります。

 

認知症のある方の記憶障害の有無だけではなくて、その他の現在の障害と能力を評価する、加えて生活歴からどのような要素のある体験をしてきたのかを評価する、これらはとても重要なことです。

 

そして得られた評価結果を治療や日常生活の場面で活用するということが求められています。

HDS-RやMMSEや時計描画テストや立方体透視図をして終わり。〇〇は〇〇点で終わり。

 

ではなくて、そのテスト結果に投影されている能力と障害と特性を評価する。

 

何のための検査なのか。


目の前にいる方により適切な治療を提供できる、より適切な関わり方ができるようになるために検査するのです。


他の整形疾患やCVA後遺症片麻痺のある方と何ら変わることはありません(^^)

 

* バックナンバー

 認知症のある方を担当したら その1:事前準備

 認知症のある方を担当したらその2:挨拶でのスクリーニング

 認知症のある方を担当したら その3: ~イスになかなか座らない患者さんを例に~

 

お知らせ

「月刊よっしーワールド」

▶︎ http://kana-ot.jp/wp/yosshi/


「食べられるようになるスプーンテクニック」
▶︎ http://www.nissoken.com/book/1824/index.html 

 

佐藤良枝先生プロフィール

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1986年 作業療法士免許取得
肢体不自由児施設、介護老人保健施設等勤務を経て2010年4月より現職

2006年 バリデーションワーカー資格取得


2015年より 一般社団法人神奈川県作業療法士会 財務担当理事
隔月誌「認知症ケア最前線」vol.38〜vol.49に食事介助に関する記事を連載

認知症のある方への対応や高齢者への生活支援に関する講演多数

 

【認知症のある方を担当したら】 その4「こそあど言葉」使用の適否

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