組織における問題点。多くの解決の糸口は…【株式会社TRAPE 代表取締役|作業療法士 | 鎌田大啓】

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― 株式会社TRAPEを立ち上げた理由は?

 

鎌田先生 会社設立は2015年9月です。法人の仕事が軌道にのってきていて、その頃には介護事業を行っていた介護保険事業者連絡会という、介護保険事業業者が集まる会の会長をさせていただいておりました。

 

その会は、その市にある施設部会(特養・老健)、ケアマネ部会、通所部会(通所介護・通所リハビリ)、訪問介護部会、訪問看護・リハビリ・入浴部会、福祉用具貸与部会、グループホーム・特定施設部会、小規模多機能・サ高住部会などのTOPが集まる会で、介護事業所の課題、地域と行政に関わる仕事をしていました。

 

その市の行政と政策の今後の話をしていると、グランドデザインの把握、深堀りについて行政マンのみなさんもお困りになっていることが多く、なかなか先に進みにくいことを経験しました。

 

そこで、もっとグランドデザインの把握、深堀りを行政マンが動きにくいのならわたしが行ってパスしようと考え、当日は直接厚生労働省の方々が話される場(東京)によく大阪から遠征していました。

 

― その頃から既に厚生労働省の方々と関わりがあったんですか?

 

鎌田先生 いえ、全くありません。

 

関わりをまず作るために、厚生労働省の企画しているセミナーに参加して、終わったら必ず名刺交換をし、そのときに必ず自分の考える地域づくり、介護について述べてくるということをしていました。

 

そうすると、色々とディスカッションができるので裏話も教えてもらえますし、自分のことも覚えてもらえます。

 

「これからは既存の介護事業を今までと同じ感覚でやるでは無理だ。これからは地域の方々という主語を常に軸とした中で保険内サービスの在り方、また新たな付加価値、保険外サービスというものも見据えて包括的に考えていくことをしないと中長期的に住民の生活、人生をサポートすることができなくなるのではないか。」と思いました。

 

つまり、適正な危機感をもち、社会環境の変化に応じてこちら側が変革することで適応していかねばならないと思い、自分の所属法人でまず展開したくTOPにいろいろプレゼンしました。

 

しかし、その会ではそういう考えはいらないとうことがありピリオドを打たれたので、自分でやるしかなくなり、株式会社 TRAPEを立ち上げました。

 

地域資源をReデザインする

― 株式会社 TRAPEの事業内容について教えてください。

 

鎌田先生 株式会社TRAPEでは、地域資源を『Reデザイン』し、介護・ヘルスケア事業をより価値のあるものにするためにコンサルティングを行っています。

 

一般的に介護・ヘルスケア事業所は生産性が低いと言われており、さらにこれから介護事業所の経営は厳しくなっていくことが予想されます。

 

そのためには保険内のサービスの効率性、新たな価値の創出に加えて保険外のサービス、新収益事業が必要です。

 

私がコンサルティングで関わった事業で行う人材育成は、最終的には保険外サービス(地域づくり事業、新収益事業)を提供するのに必要な人材を育成していくことを主にしています。

 

「ご利用者様や入居者様が地域の中でどうすれば自分らしく暮らしていけるのか。また、利用施設を卒業できるのか。」

 

そこまでデザインすることができる人材を育てることをゴールとしています。

 

 

トップの意識が変わることで組織ががらっと変わる

― 具体的にどのように働きかけていくのですか??

 

鎌田先生 まず、理念を確認して、それについて徹底的に聞いていきます。

 

よくある事例が、トップが組織の理念を現場は分かっているはずと思い込んでいるケースです。でも実際は誰も分かっていないということが多くあります。

 

トップと現場のギャップが生じて問題が生じると、ミドル層の人たちの責任だと言うのですがそうではなく、実はトップの意識が変わることで組織ががらっと変わります。

 

まず現場にクレームをできるだけ多くあげてもらうと、大体五十件くらい上がってきます。

 

そのうち、法人しか解決できない課題もありますが、実はリーダーたちが改善できる課題がとても多くあります。

 

同時にではリーダーたちだけの責任かというとそういう環境づくりは法人(TOP)がすべきことなので、クレームや問題点に関してフローチャート式に問題を遡っていくと、結局は法人自体も一緒に頑張らねばならないねということになります。

 

問題点やクレームに対してどこから手を付ければいいのかを可視化し、そこから解決するためのプロセスをマネジメントしていきます。

 

組織はお金を払ってでも本当によくしたいと思っているので、私もトップと現場のどちらかの味方をするということはせず、外部からの立場でみんなで向かう先の共有を徹底的に行っていきます。

 

ー なるほど。クレームや問題点は事業所ごとに違ったりするものですか?

 

鎌田先生 「業務量が多い」「仕事が忙しい」とか「ひとが足りない」といった問題は、けっこうどこの法人でも当てはまります。

 

よく「うちの事業所はこういう特徴があって…」と聞きますが、業務工程ごとに考えると、大体どこも6割は同じですし、そのところに限っていうと事業所ごとの特徴というのは実はほとんどありません。

 

そんなものはマスターべション

 

― 例えば、私が前勤めていた病院では「業務後に残って院内勉強会をするなら残業代を出してくれ」という話がありました。業界でも割と多いクレームの事例だと思うのですが、その場合、鎌田さんはどのように考えますか?

 

鎌田先生 まず理学療法士・作業療法士・言語聴覚士ならば、ただ勉強するだけではなく、それを実践できて、かつ患者さんに価値を提供できるレベルのものにならないと、請求するべきじゃないと思っています。

 

誰のために勉強会をやっていることなのかを明確にすることが大切で、「何のために勉強会をやってるの?」と聞いたときに、「自分がこの技術を身に付けたくて…」というのでは自己満足でしかありません。

 

そんなものはマスターベーションです。

 

勉強はあくまで主役=患者様、利用者様、地域の方々を専門職種が元気する際に活用する「手段」をゲットする機会です。

 

手段が目的化してはいけません。しかし、これが今とても多いと感じています。

 

― 人材育成の経験が豊富な鎌田先生にお聞きしたいのですが、今は若くして組織のリーダーになる療法士が多いと思います。「教育」に関して、苦労した点など何かアドバイスいただけますか?

 

鎌田先生 私も、たくさん苦労をしてきました。

 

最初は、介護職員の方にセミナーや研修に色々行ってもらったり、環境をできるだけ整えてきたつもりでしたが、それではほとんど変わっていきませんでした。

 

そこで、今度は他の人に教育を任せるのではなく自分で想いを伝えようとしましたが、それでもやっぱりうまく伝わりませんでした。

 

「理想論は分かりました。でもそれはあくまで理想で、実際はできません。」と言われたこともあります。

 

教育を行っていくうえで、重要なことは相手の立ち位置を一度全面的に受け入れるとうこと、そこから「引き算」を行い、相手自ら受け入れたくなるものをビビットに提供していく、そして具体的に伝えることだと最近強く思います。

 

このためには「ひと」「環境」「作業」のアセスメントがとても重要となります。

 

役職者の一番の業務は?

ー 具体的に方法を教えてあげるということですね。

 

鎌田先生 あとは、セラピスト同士のコミュニケーションはうまく取れるのに、ケアマネージャーさんなど、外部の人がいる場になると、縮こまって口数が少なくなってしまう人もいます。

 

しかし、そういった場面で発言したりすることのほうが大事で、絶対に跳ね返ってくるものがありますし、若い理学療法士・作業療法士の皆さんはもっと失敗ありきでいいのでチャレンジしたらいいと思います。

 

その環境をつくるのがマネジメントをまかされている役職者(管理者)の一番の業務ですから。思い切ってやっちゃいましょう!

 

跳ね返ってきたものを受け止めて、役職者(管理者)の方は次どうやったら伝わるのかを一緒に並走しながら考えてあげることが大切です。

 

またそういった場面設定を、どれくらい作ってあげられるかもポイントだと思っています。

 

いかにビジネスとして儲けていくかも大切

― 先生は街づくりにも関わっているということをお聞きしました。

 

鎌田先生 リハビリテーションを行うのに、最終的に地域の方が自ら社会参加し活動的になってもらうことが大切だと思っています。

 

そのために、地域の方たちが「どういう街だったら外に出ていきたくなるのか」「ワクワク体験ができる街なのか」というのを考える必要が出てきます。

 

例えば、ひとが集いたくなる街にするにはどうしたらいいかということを美容師さんと一緒にチャレンジしたりしています。

 

さらに、これからの街づくりは、いかにビジネスとして儲けていくかも大切です。

 

「いいこと=正論」はとても素晴らしいのですが、持続性がないので、結局地域の方々が享受できる資源にならないんです、

 

「いいこと=正論」の『Reデザイン』だと思っています。

 

地域に住む高齢者として捉えているのではなく、一人の生活者=消費者として捉えています。

 

一緒にその子供も連れて街に出てきてもらって、美味しいご飯を食べてお金を落としてもらえるような仕組みを考えています。

 

そのように、ワクワクする街ができることでケアマネージャーが立てるプランの中に、「あの街に行く」という目標設定にもなると思っています。

 

それがまさにリハビリテーションだと思うのです。

コミュニティヘルスケアデザイナーとして

 

鎌田先生 私は、作業療法士としてというより、作業療法やリハビリの概念を使って街に住む方をどう元気にしていくかということに興味があります。

 

それをコミュニティヘルスケアデザイナーと呼んでいます。

 

「作業療法士です」といって活動をすると、「法律で開業権がないのに」と指摘されたりすることもあるので、私は作業療法士という名称を使って仕事をしていません。

 

ただ、作業療法やリハビリテーションの考え方は大好きなので、それを取り入れながら地域を元気にしていっています。

 

それが、結果的には作業療法士の価値を上げることに繋がっていくと思っています。

 

鎌田先生による「介護事業所の効率化」をテーマにした講演開催!

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