― ブラジル人の理学療法士と一緒に働いているというお話がありました。ブラジル人の理学療法士は物理療法をすごく使うと伺ったのですが?
塙先生 そうですね。チームにある物療機器を利用して、電気治療、寒冷療法、温熱療法、超音波などを合わせて1時間以上実施しています。
「股関節が痛い」と言っている選手に対して、足部のテーピングなど、患部外を診るということに対しては珍しいと言われます。
今でこそファンクショナルトレーニングと言われはじめていますが、最初はブラジル人の理学療法士や選手本人からも疑問に思われました。
ただ、選手は痛くなくなればどんな方法でもいいので、すぐに受け入れてもらえますね。
― 塙先生は選手のどこに着目して評価していますか?
塙先生 動きよりも、症状を一番に診ています。
理学療法士はどうしても動きばかりを見て、教科書的に「いい姿勢」や「いい動き」にしようと思う傾向があると思います。
ただプロスポーツ選手は、自分が動きやすいからその動き方をしているのであって、それが選手としての特徴なんです。
可動域が少ないのも特徴ですし、O脚でスラストが出ていても、症状がなかったらスラストを止める必要はありません。
もっとしっかり身体を触って、選手の状態を感じ、症状が出ている原因がなにかを考えたほうがいいと思っています。
骨・筋肉などの形態や左右差、堅さなどを評価して、治療の前後で変化をしっかり見極めてあげなければいけません。
今は病院の時みたいに、わざわざ歩かせて動きをみるということをあまりしなくなりました。動きを見るのは練習中です。自然な動きをしている選手の姿をみています。
例えば「膝が痛い」と選手が言ってきたときに、まず触って通常時との変化を確かめます。
その後、アプローチをして元に戻っても、症状がなくならなかったときに、「半月板はどうだろうか、水を抜いた方がいいのだろうか」と考察し、結果的に水を抜いたら症状がなくなったというケースもありました。
凄腕の治療家
塙先生 鹿嶋に住んでいる凄腕の治療家がいて、その人から学ばせてもらったことが本当に大きかったと思います。
その方が、触ることが大事だと言っていました。触っただけで、その方がどこの出身か、◯◯の地域で育ったらこんな皮膚になるんだと分かってしまう。驚かされることが多かったです。
選手も、環境や言葉のかけ方一つで動きが変わったり、アップしていて眼の角度を見ていると、その選手が”モード”に入ったのが分かったりします。
ファンの応援で変化する選手もいます。
あまり科学的ではないので、こういうことを理学療法士の世界で話しをすると「えっ」と、思われるかもしれませんが、、、(笑)
モード
塙先生 試合中は全然痛がらないのに、試合が終わって画像を撮ってみると、断裂していて血だらけだったということも珍しくありません。
痛まないように動けていたのか。体が痛まないようになったのか。
ただそのときは”モード”に入っていたから良かったものの、こちらが声掛けをしてしまうことで、不安になり”モード”に入ることができなくなってしまう選手もいます。
声掛けには気を配る必要があります。理学療法士やトレーナーが「大丈夫」と言ってあげることで意外と問題なく試合ができたり、さするだけで良くなってしまったりすることがあります。
*目次
【第一回】プロサッカー選手に携わるまでの道のり
【第二回】プロサッカーチームに求められる理学療法士になるために
【第三回】選手の動きよりも症状を診る。
【第四回】塙先生にとってのプロフェッショナル
塙 敬裕先生プロフィール
【学歴】
平成22年3月 文京学院大学 保健医療技術学部 理学療法学科 卒業
平成27年3月 東京リゾート&スポーツ専門学校
アスレティックトレーナー科 夜間部 卒業
【職歴】
平成22年4月 医療法人 博生会 本牧病院 リハビリテーション科 入職
平成25年3月 ひぐらし整形外科内科 リハビリテーション科 入職(非常勤)
平成26年5月 ナースステーション東京・池袋 訪問リハビリテーション 入職(非常勤)
平成27年4月 鹿島アントラーズFC 育成部トレーナー 契約
平成28年2月 鹿島アントラーズFC トップチーム フィジオセラピスト 契約
現在に至る