アスリートには気管支喘息が多いということを知っていただろうか。
卓越した身体機能を持ち合わせたアスリート。実は気管支喘息の有病率が高いのである。
今回、気管支喘息と運動の関係性について大久保病院スポーツ内科の田中祐貴医師が記事にしていたものを紹介したいと思う。
気管支喘息は、気道に慢性炎症が生じて過敏になり、攣縮が起きた結果、呼吸困難感、喘鳴、咳嗽、痰などの症状を呈する疾患です。日本人の有病率は小児で約10%、アスリートはそれよりもやや多く約13%という報告があります。
一方で、気管支喘息と診断されている・いないにかかわらず、運動時に喘息症状を呈する場合があります。運動を開始してしばらくすると息切れや咳、痰などの症状が出る他、(呼吸器症状が軽微でも)例えば陸上選手ではこれまでのペースについていけない、記録が伸び悩むなどのパフォーマンスの低下を招くこともあります。
引用元:日経メディカル
気管支喘息は一般的に知っている人も多いと思うが、運動誘発性喘息は、喘息予防・管理ガイドライン2015(日本アレルギー学会)では、EIA:exercise induced asthmaと記載されている。ちなみに国際的には運動誘発性喘息と運動誘発性気管支収縮は区別されており、運動誘発性気管支収縮はEIB:exercise induced bronchoconstrictionと記載されるようである。喘息を表す「asthma」と気管支収縮を表す「bronchoconstriction」で区別して認識しておく必要があるようだ。
EIAの発生機序に関しては様々な原因が解明されている。アレルゲン、運動、ストレス、過労、薬剤、感染、月経、飲酒、タバコ、天候、気圧変化などあげればきりがない。
アスリートでは、上記のような多くの原因にさらされることが多く、屋内競技よりも屋外競技、換気量の多いサッカーやマラソンなどの持久力競技などでは特にEIAの有病率が高いとされている。
気管支喘息を患っている人はわかると思うが、気温や気圧の変化が大きい梅雨の時期や、起座呼吸など外的な刺激に影響を受けやすいのも特徴の一つである。
「運動誘発性」でいえば特に「再加温説」や「乾燥説」が知られており、それぞれ運動による換気量の増大により、気道の冷却と加温とが繰り返される過程や、気道が乾燥して気道内皮細胞の水分量が減少することから浸透圧変化が生じる過程で、喘息発作が誘発されるというものだ。
冬の寒く乾燥する時期に疲れやすかったり息がきれやすいのもこのためと考えられる。
アスリートの中には自覚のないままEIAやEIBを発症している人も少なくない。我々が正しい知識を持つことは、アスリートの状態をより正確に把握することに繋がると考えている。