ウーマンズヘルスケアはこれからの領域
ー まず、先生がPTになろうと思ったきっかけはなんですか?
布施先生:私、親が泌尿器科の先生なんですよ。だからなんとなく、「私医者になるのかな」と思ってました。
ただ私自身、人が亡くなるというのが嫌でした。
祖父が開業していたのですが、家にご遺体があるのが普通で、ご家族さんもすごく泣いてて、「私こういうのに耐えられるかな」と思ってました。ただ、周りの人が医者ばかりだと「今日は尿が漏れたおばあちゃんが来たよ」とかそういう会話がご飯の時に普通にあって、「骨盤底筋っていうのがいいらしいんだけど、やってくれる人がいないんだよな」といっているのも聞いて、人の役に立つ職種って色々あるんだなと思ったのは覚えています。
それで、私自身ずっとバドミントンやっていてオリンピックとか目指したいと思ってたりもしてたんだけど、当然無理で。。。チビ助だし(笑)
トレーナーになったらいいなと。それで色々調べる中で、理学療法士というのを知りました。
ー 先生は大学院に行かれていらっしゃいますが、大学院に行こうと思われたきっかけはどういったものだったのでしょうか?
布施先生:えっと、大学院に行く前から私は研究してました。大学院にいったのは6年目だから、5年くらいは研究やっていて、
学会発表していましたね。ただ、論文にするとアクセスでき、医者も見れるとわかったんで、論文を書く術を知らなきゃいけないと思って入ったんですよ。
ー 今、この領域(ウーマンヘルスケア)は注目されつつありますが、先生のこの領域についての展望をお聞かせ頂けますか?
布施先生:この領域(ウーマンズヘルスケア)で食べていけるかと言うと食べていけないです。まだ確立されていないので。起業されている先生がどうやって生計立てているかというと知らないのですが、病院で働いている方でこの領域で給料をもらって食べている先生っていないと思います。
不安か不安でないかと言うと私は不安に思っています。今の学生達が卒業して、この領域に興味を持ったとして数年後、女性PTとして整形や中枢とか一つの分野として、同じ土俵に上がっているかというのは、今私たちのこの年代がどれだけ頑張るかというのにかかっていると思うので、もっと積極的に勉強会とか学会とかに参加しようと思っています。
ただ、当然PTだけに広めてもダメで、産婦人科の学会とかに参加して医者に薬だけじゃなくて、こういうことも出来るって知ってもらってオーダーしてもらわないと何もできないんですよね。
確立するにはまだ5年か10年かかかると思っているので地道にやっていかないといけませんね。
運動指導を「処方」される権利を得る
ー 今現在、この領域についての反応はどうなんでしょうか?
布施先生 反応はですね、いいんですよね。だから続けていけるんですけどね。
うちの病院ではリハ前後でDrにかかるんですけど、
「どうでした?」と聞くと、「よかった」って言っていただけています。
それまで腰が痛くても「妊娠しているからしょうがないよ」
って医者が言うしかなかったのが、「運動指導」っていう1つの薬ができる、
処方ができると先生達には言っていただけていると。
薬と同列で理学療法っていうのがあるって周知されていくと
薬の処方の感覚で出してもらえていいですよね。
うちの病院(東京北医療センター)って地域振興協会っていう
けっこう大きな組織の拠点病院なんですね。
そこで成功をすると地域の病院に活かしていけるかなと思うんです。
ただ今はお金をとってないので。
お金とってどうやっていくかっていうのを
今後は考えていかなきゃいけないんですけどね。
心身環境と組織環境どちらも大事
ー ウーマンズヘルスの領域は女性進出が叫ばれている昨今では、重要性が高まっていると感じます。
布施先生:女性は出産して子供を持つと勤務体系的に残業ができなかったり子供が熱とか出たら誰かに託して仕事でなきゃ行けなかったりしますよね。
今のリハビリの勤務体系って大変だと思うんですよね。結婚を期に辞める人、子供ができて辞める人、子供が落ち着いてきて復帰する人など、色々いると思うんですけど復帰するひとってどうやって復帰するかというと、やっぱり病院じゃなくて老健とか訪問なんですよね、私の周りは。
ー 確かに、私の身の回りも多い気がします。
布施先生:それを否定するとかではなくて、病院に復帰する人って本当にいないんです。ただ、「うちの病院に来てください」って言われたときにすごくできるPTってたくさんいると思うんですよね、40代のPTとかって。
でも、なかなか実際にはいないんですよね、病院に中堅層の女性のPTが。だから、実際に今の学生達が病院に実習に行った時にそういうバイザーがいると、とても勉強になると思うんですよね、モデルケースになるなーって。
今のリハビリの勤務体系って大変だと思うんですよね。結婚を期に辞める人、子供ができて辞める人、子供が落ち着いてきて復帰する人など、私がやっているのは、そういった数が圧倒的に少ないので、そういった環境を作っていかなきゃいけないなって思って始めたのがきっかけなんです。
ー 女性が働きやすい環境をつくるためには、女性が「健康」で働きに出れる身体の環境も含まれますよね。そういった点でやはり、ウーマンズヘルスは重要だと思います。そんな布施先生も子どもさんがいらっしゃいますが、現在育児と仕事の両立で心がけていることはありますか?
布施先生:とりあえず熱を出されると大変ですよね。あとは全部自分でやる仕事を作らないってことかな。今、妊婦リハも3人でやっているんですけど、私が休まなきゃ行けないってなった時に、私がいなくても動ける体制を作っておく。
私が休んじゃうと、止まってしまうっていうことにならないようにですね。
ー なるほど。やはりそういった仕組みや体制作りが、組織には求められるわけですね。
出産は働き方を見つめ直すタイミング
ー 先生ご自身は、お子さん生まれて変わったことは多いですか。
布施先生:仕事の量が少なくなっちゃったっていう感じはすごくします。だから、優先順位をその都度その都度立てておかないと、与えられた仕事は終わりません。
自分がやりたいことも進まなくなっちゃうので、今日は研究のことをするとか、この1週間でデーターを取りきるとか、細かい短期目標をたくさん立てるようにしていますね。
ただし、達成できなかったからって落ち込まない、何があるか分からないので、いい意味で諦めることも大事という気持ちでいます。
今後はそういった面も含め考えていかなきゃいけないんですけどね。
ー なるほど。子どもが産まれるということは、女性にとってはすなわち、働き方を変えるとタイミングとも言えますね。では、最後に先生の今後の展望をお聞かせ下さい。
布施先生:
私の展望としては、この領域に興味がある女性PTがメリットのある職域にするってことですね。
布施先生ご登壇イベント
【日時】2017年10月15日(日) 10:00〜18:30
【大会長】佐藤 千佳(女性のリハビリテーション研究会)
【会場】浅草ヒューリックホール
※総武線「浅草橋駅(西口)」より徒歩1分
※都営浅草線「浅草橋駅(A3出口)」より徒歩2分
【対象】療法士、看護師、助産師、その他セラピストなど
【定員】500名
詳細はこちら>>http://woman-forum.jp/whcf2017tokyo/
布施陽子先生の経歴
最終学歴: 文京学院大学大学院 保健医療科学研究科学位 : 保健医療科学修士
【主な経歴】
2006年4月 東京北社会保険病院リハビリテーション室 理学療法士
2012年4月 東京北社会保険病院リハビリテーション室 理学療法士(非常勤)
2012年4月 文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科 助手
2014年5月 東京北医療センター リハビリテーション室 理学療法士(非常勤)
【専門分野】
・産婦人科(産前・産後)理学療法
【研究課題】
・腹横筋機能、産前産後の理学療法
【学術論文】
【学会賞】
・第48回日本理学療法学術大会優秀賞(2013年)
【著書】
88の知が生み出す臨床技術 ブラッシュアップ理学療法(共著,三輪書店,pp108-
ヤンダアプローチ-マッスルインバランスに対する評価と治療-(