巷では、筋肉痛は若ければ早く出現し、年齢を重ねると遅れて起きると言われている。しかし、それには根拠が存在していないようだ。
▶︎ 加齢で筋肉痛が遅れるように…それって単に運動不足なだけ?
運動後に1日または2日遅れて出現する痛みは「遅発性筋痛」と呼ばれている。遅発性筋痛は、運動に不慣れな人が遠心性収縮による筋収縮を繰り返す事で、筋組織が損傷し出現するとされている。
ある研究によると、最大筋力の80%以上の伸張性収縮を行った方が、30%の負荷に比べ48〜72時間後において有意に痛みの発生が多いとされている。筋に対する負荷の割合も遅発性筋痛の要因になりそうだ。
また、普段の運動習慣でも痛みに変化があり、運動習慣がない人は、運動習慣がある人に比べ痛みが長く続いたと報告している研究もある。
筋の微細損傷により炎症部に白血球が遊走し、好中球がブラジキニン等の疼痛物質を産生する。さらに好中球やマクロファージが、プロスタグランジンやサイトカインを産生・放出する事で発痛の増強に関与する。しかし、加齢により毛細血管密度が低下し、血液循環の低下から白血球の遊走が遅れる事で発痛物質の産生が遅延し、痛みの出現が遅くなるとも考えられている。
損傷の範囲がZ帯まで及ぶと、2〜3日後に広範囲に広がり、回復するのに10日間かかるとも言われている。
遅発性筋痛については、未だ詳細不明な部分が多く、様々研究がされている。今後は、年齢との相関についてはっきりとした研究結果が示される事を期待したい。
参考
運動習慣と加齢による遅発性筋痛の発生パターンに関する磁気共鳴画像による検討