組織間リリース vs ハイドロリリース

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拘縮肩を例にとれば、関節包に癒着している棘上筋や肩甲下筋を剥がすというゴールは同じであっても、それに要するプロセスが全くことなります。

組織間リリースは、浅層から深層に向かって全ての癒着をすべて解決しながら前進する地上戦。これに対して、ハイドロリリースは深層の関節包に直接爆撃を加えられる空爆のようなものと言えます。

 

■ 関節包に癒着している棘上筋や肩甲下筋を剥がすプロセス

 

地上戦の最大の問題は時間がかかることです。これを短縮するのに、地上戦であっても効果的にターゲットを絞り込むことが求められます。

 

外転可動域が60度程度だと、腋窩から肩甲下筋には届かないので、下垂位で関節包までのアクセスルートを作る必要があります。これまでの地上戦の作戦としては、大胸筋を上腕二頭筋や広背筋からリリースすることで上方にめくり、次に烏口腕筋を広背筋に対して内側に剥がし、広背筋と大円筋を上腕骨頭側から下方にめくり、それから肩甲下筋の下縁を上方にめくる様にしていました。問題点としては、骨頭と臼蓋の下側に巻き込まれた肩甲下筋を上方にめくるのが困難であることです。外転位ならば容易な治療が下垂位だと困難を極めます。

 

ハイドロリリースでは、後方から上腕三頭筋起始部をかすめて肩甲下筋の下縁をリリースするという話を聞きました。これを参考に、最初に後方から肩甲下筋の下縁を最初にめくることができないかと考えてみています。

 

2018年度の組織間リリース中級編では大腿骨頭を360度触ることをゴールにしますが、その次のレベルでは肩甲下筋と棘上筋を関節包から剥がすことを目標にしたいと思います。それに向けて、痛みの強い拘縮肩においても痛みを与えずに剥がし終えるようなプロセスを作り上げたいと思います。

 

■ 末梢神経のリリース

 

ハイドロリリースで末梢神経をリリースするとき、神経鞘内に生理食塩水を打ち込みますが、徒手による組織間リリースでは神経鞘と筋との間の癒着をリリースします。次のステップとして、組織間リリースで神経鞘内のリリースが必要か、またその結果治療効果は向上するのかを検討していく必要がありそうです。

 

神経症状の原因が、「神経のテンション」であれば、どちらのリリースでも効果があるということも理解できます。一方で、神経そのものの圧迫と考えると、絞扼を解消せずにリリースのみで症状が改善することが説明できません。神経症状としても、絞扼と癒着は異なる症状を呈します。

 

組織間リリースでの神経鞘外のリリースで効果がなければ神経鞘内の治療を行うというのが妥当なところですが、神経鞘内のみの治療で解決できない問題があるとすれば、神経鞘外の癒着の影響が残ってしまっているからかもしれません。

 

神経鞘の内・外の癒着がどの程度症状に影響を及ぼすのか明らかにするには、同じ症例に対して二つの治療法を順次行うような治療過程が必要なのかもしれません。

 

■ 筆者・セミナーご紹介

筆者:蒲田和芳

・広島国際大学総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 教授

・株式会社GLAB(ジーラボ) 代表取締役

・一般社団法人日本健康予防医学会 副理事長

・株式会社リベラシオン 代表取締役

 

セミナーご紹介:蒲田和芳が講師を務める~全身の関節疾患の治療法を学ぶためのセミナーシリーズ~CSPT2018 クリニカルスポーツ理学療法セミナーの受講者お申込み受付中です。

http://www.glabshop.com/cspt2018/

 

長期間の「拘縮」や「可動域制限」に対しても、確実に可動性を回復させるための徒手療法技術ISR(組織間リリース®)セミナー2018も受講者お申込み受付中です。

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組織間リリース vs ハイドロリリース

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