尾状核が罰の予測などの感情の処理に関連|京都大学研究

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京都大学白眉センター・霊長類研究所 雨森賢一 特定准教授、米国マサチューセッツ工科大学 雨森智子 リサーチサイエンティスト、AnnM.Graybiel 同教授らの研究グループが、持続的で悲観的な価値判断を引き起こす脳部位を、霊長類の尾状核と同定した。

▶︎ 持続する悲観的な意思決定の源となる神経メカニズムを解明―不安が頭から離れない原因とは?―

 

不安、気分、意欲、あるいは、好き嫌いの価値判断は、大脳辺縁系から大脳基底核まで脳内に広く散在する回路で情報処理され、行動に大きな影響を与えている。本研究グループは先行研究で、マカクザルの前帯状回皮質の微小電気刺激によって、罪の過大評価が起こることを発見した。これを受けて本研究では、マカクザルの尾状核が、持続的で悲観的な価値判断を引き起こしていることを明らかにした。

 

本研究では、マカクザルに葛藤を伴う価値判断を必要とする課題を行い、その尾状核を微小な電気で刺激して、局所神経回路の機能を調べた。その結果、ある部位の刺激により、サルが罰を過大評価することを突き止めた。この悲観的な意思決定は刺激実験終了後も長期にわたり持続することから、持続的な悲観状態が引き起こされることがわかった。

 

 また、尾状核の刺激は、同じ意思決定を異常に繰り返す現象を誘導することもわかりました。さらに、刺激実験時に尾状核の神経活動を同時記録し、この持続的な悲観状態と、局所電場電位のベータ波振動が相関することも発見した。

 

 こうした異常な繰り返し選択は、意思決定の柔軟な変更ができず、悲観的な価値判断に固執してしまう現象を表しており、不安障害の一つである強迫性障害のモデルとなる可能性がある。本研究成果は、ヒトの不安障害やうつ病の治療の基盤になることが期待される。

 

尾状核が罰の予測などの感情の処理に関連|京都大学研究

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