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第一回:西上先生に救われた過去【甲南女子大学 助教|壬生 彰先生】

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一本のレールをひたすら進むのみ

ー まず、先生が理学療法士を目指されたきっかけを教えてください。

壬生先生:高校生の頃まで、ずっとバスケットをやっていまして、高校2年の頃、膝の手術をして、理学療法士にお世話になったことがありました。

 

当時、進路としては高校の教師になりたかったので、私立の文系大学に行こうと思っていましたが、担当の理学療法士にも「理学療法士を目指したら?」と言われ、この道に進みました。

 

実際には、1年浪人して広島県立保健福祉大学(現県立広島大学)に入学しました。勉強は1年の浪人を経て、理学療法の勉強を始めたので、楽しかったと思います。ただ、大学2年ごろから違う学科の友達は、徐々に就活が始まっていて、政治、経済などという話が飛び交うわけです。

 

一方自分たちの道といえば、ある意味では、一本のレールをひたすら進むのみ。自分の人生はこれでいいのか、と悩み編入して教員免許を取り行こうかと考えたこともありました。

 

ー それは大きな決断ですね。それでも思いとどまった理由はなんですか?

壬生先生:実習で高知大学医学部附属病院に行った時、いまの上司でもある西上先生と出会いました。理想の理学療法士像を見つけることができ「僕の仕事はこれだ」と迷うことなく、理学療法士の道へ来ることができました。

 

ー 何とか首の皮一枚残して、理学療法士になられて、一番初めに勤めたのはどちらですか?

壬生先生:最初は、兵庫県にあります済生会兵庫県病院という、300床ほどの急性期病院です。きっかけは、実家が兵庫だったので、地元に帰ろうということが一番にありましたね。

 

専門分野でいえば、中枢疾患ではなく整形外科を専門としたいと思いましたので、急性期病院でありながら、整形外科疾患が中心であったこの病院に就職希望を出したという流れです。

 

歩けるけど動かせない

ー 病院でのご経験が、現在複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)を研究するキッカケとなったのでしょうか?

壬生先生:当時は「何でようならんのかな、どうしたらええんかな」と悩んでいました。慢性的な痛みについて、心理社会的な要因も含めて多面的に捉える必要があることは今でこそ知られるようになってきていますが、当時の私はまだ、バイオメカニクス的な視点でしか考えられていませんでした。

 

その中でも、西上先生に色々と相談する中で痛みについて「もしかしたら」という考えが芽生え始めた頃、5年間勤めた済生会を退職しました。

 

今になって振り返ってみれば、あの人こうだったんじゃないかな、と思うこともあります。ただ、その時の経験だけではCRPSの研究をしようというところまでは、いっていないです。

 

ー その当時はまだCRPSと言っていない時代でしたか?

壬生先生:いや、もうCRPSという言葉は使われていました。それまでカウザルギーや反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)と呼ばれていたものが国際疼痛学会(IASP)によって1994年にCRPSと定義されました。

 

最近はPTOTの国家試験でも、CRPSに関連した問題が出るようになってきていますよね。

 

ー CRPSという言葉ができた当初、我々理学療法士の専門分野として対応していたのでしょうか?

壬生先生:当時から運動療法や電気刺激療法などの症例報告はありますが、実際患者さんが目の前に来られたら一体なにから手をつけたらいいのかわからない、という状況だったのではないでしょうか。

 

私自身、CRPSの研究を始めたのが、クリニックに移ってから不思議な患者さんに出会って、疑問をもったのがキッカケだと思います。遠方から、いらっしゃっている患者さんで、「自分の足がわからない」「動かし方がわからない」という訴えがありました。

 

かといって、筋が萎縮しているわけではなく、普通に歩くこともできます。でも、随意的に動かしてみて下さい、といっても動かせないという状況でした。

 

CRPSに興味をもったきっかけは、ここでの経験ですが、実際に研究を始めたのは大阪大学大学院に入ってからですね。

 

続くー。

 

【目次】

第一回:西上先生に救われた過去

第二回:疾病利得

第三回:痛みは良くならないとしても

最終回:慢性疼痛を阻止せよ

 

壬生先生オススメ書籍

慢性疼痛治療ガイドライン
慢性疼痛治療ガイドライン
Posted with Amakuri at 2018.10.22
「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」研究班
真興交易医書出版部

 

痛みの集学的診療:痛みの教育コアカリキュラム
痛みの集学的診療:痛みの教育コアカリキュラム
Posted with Amakuri at 2018.10.22
日本疼痛学会痛みの教育コアカリキュラム編集委員会
真興交易医書出版部

 

壬生 彰先生のプロフィール

学歴

2007 年 3 月 広島県立保健福祉大学保健福祉学部理学療法学科 卒業
2013 年  3 月 神戸大学大学院保健学研究科博士前期課程終了 修士(保健学)
2018 年  3 月 大阪大学大学院医学系研究科博士後期課程 単位修得退学
 

職歴

2007 年  4 月 社会福祉法人恩賜財団済生会兵庫県病院リハビリテーション科(2012年6月まで)
2012 年  7 月 医療法人曉会田辺整形外科上本町クリニックリハビリテーション科(現在に至る)
2015 年  4 月 大阪大学医学部附属病院麻酔科ペインクリニック(現在に至る)
2017 年  4 月 甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科 助教(現在に至る)
 

受賞歴

2014 年  6 月 第36回日本疼痛学会 優秀演題

その他(社会活動や著書など)

2016 年 9 月 日本ペインリハビリテーション学会 代議員(現在に至る)

 

第一回:西上先生に救われた過去【甲南女子大学 助教|壬生 彰先生】

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