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高木綾一先生 -ワーク・シフトを体現する理学療法士(PT)- 最終回

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キャリア教育の重要性

インタビュアー細川:

多くの経験の蓄積が大事ということですね。確かにネガティブ転職のほうが圧倒的に多いですよね。大きな法人だと、中堅層が抜けちゃっている。管理職は埋まっていて上を目指せないからとりあえず辞めようと。そういうことを考えると、1年目の段階でキャリアデザインの研修を新人教育などに入れるべきだと思うんですが、いかがでしょうか?

高木先生:

そこが皆無な状況だと思います。今は、各学校や大学でキャリア教育をしなさいと文科省から御達しがあるので、各大学がキャリア担当者を決めて、キャリア教育を行いだしました。多くの大学では4年生を中心に行い、3年生は任意参加で1・2年生はどっちでもいいよみたいな感じです。今後は、医療職を目指す学生と経済学部、経営学部、心理学の学生を同時に教育し、多様なスキルを磨くことが常識な時代が来ると考えています。専門職だけの集まりは、あまりに考えが偏り、ソーシャルスキルの開発を阻害していると感じています。

インタビュアー細川:

大学院ではなくて、”専門職大学院”みたいな感じでアカデミックじゃなくて、色んな他職種も含めて”メディカル専門職大学院”みたいな感じですかね。

高木先生:

近いと思います。
高木2

淘汰されないための準備を

インタビュアー細川:

最後に介護保険に関して、療法士でデイサービスや訪問看護を経営されている人が増えてきています。介護保険下で働く療法士に求められるスキルやどういったことを重視したら生き残っていけるかの高木先生の解釈を教えてください。

高木先生:

介護保険に関しては、2011年からの地域包括ケアモデルが推奨されています。ただICFの概念なので、心身機能も活動、参加も全部を包括しなさいと。これをベースに置けるかとどうかいうことの試金石が2015年度の改定になっている。

 僕は思うのですが、地域包括ケアモデルを主体とした研修会が急に増えていって、それに価値があるとわかったら、セラピスト達は頭が悪くないのですぐにそちらの勉強をしっかりとやると思います。ただし難しいのは小さい事業所です。大手医療法人や大手株式会社のような資金があるところは、教育的な投資や、セラピストの大量採用に対して抵抗がありません。

 しかし、小さい事業所やこれから始める事業所は運転資金がなかったりすると、教育的な投資の余裕がない。また、地域包括ケアに対応できる人材を養成する余裕もない。小さい事業所はPT、OT、STだったら、誰でも良いという採用をしているところが、現実的にまだまだ多い。能力の低いPT、OTを採用しても何のイノベーションも起こらない。ライセンスだけでなく、その人プラスαの能力を精査しないで給料として年間400万の投資を行なえることが、私には不思議で仕方ないです。

 400万と言ったら相当な利回りを期待しなければあかんのに、そこのチェックを経営者や管理者がしない。巷のコンサルティング会社なんか、「OTさんだったら女性が多いから、育児中の女性OTのパートが狙い目です」と事業所側に言って、事業所側も「そうなんだ」と言って採用活動をする。つまり、採用できれば誰でも良いみたいなことを平気でする。パートが悪いということではなく、人材開発にあまりに興味が無さ過ぎる。セラピストは凄い活躍の場が増えているが、採用する側のリテラシーがなさすぎる。

 また、サイエンティストモデルのPT,OTが今後、どのように化けるか、大変興味があります。でも、サイエンティストモデルバリバリのPT、OTでコミュニケーション能力が低かったら現場が大混乱に陥るのも目に見えている。

 雇われる側も雇う側もキャリアデザインを考えなければ、今後の医療・介護制度の激変の中で淘汰されるのは目に見えています。

インタビュアー細川:

では、療法士にメッセージをお願いします。

高木先生:

2025年問題、ならびに直近の医療・介護報酬改定、地域包括ケアモデルは、法律というツールを使ってセラピスト達の働き方の変化を望んでいます。それに気づいて欲しいですね。以上です。

【バックナンバーはこちら】

第1回:これからの働き方を考える上で知っておきたい「3世代ジェネレーション分類」

第2回:アグレッシブルに動いて「ポジティブ」なキャリアを

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  高木綾一先生の経歴

【主な略歴】

1999:帝塚山大学 教養学部 卒業

2002:関西医療学園 理学療法学科 卒業

2008:大阪教育大学大学院 教育学研究科 修了

2002-2007:医療法人寿山会 喜馬病院 リハビリテーション部(2006年よりリハビリテーション部部長)

2008-2014:医療法人寿山会 法人本部(2008年より法人本部長)

2014-現在:株式会社WorkShift代表取締役

2015-現在:関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教

【資格等】

理学療法士・認定理学療法士(管理・運営)・3学会合同呼吸療法認定士・修士(学術)

【株式会社Work Shift】

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高木綾一先生 -ワーク・シフトを体現する理学療法士(PT)- 最終回

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