今週より理学療法士学会の分科学会運営幹事選挙の投票が行われている。日本運動器理学療法学会においては15人の定数に対し、19人の立候補者の激戦区だ。
投票権を持つ会員は、選挙公報に書かれている「当該学会にこれまでの業績等」や「立候補の趣旨」を見て投票するわけだが、その中で業績に関して「ございません」と書いたツワモノがいる。
江原弘之。43歳。
普段は神奈川県にある西鶴間メディカルクリニックに勤める江原さんに、今回の立候補の本当の趣旨、また学会にかける想いを伺った。
ー 今まで運動器理学療法学会に関与していなかったのになぜ今回突然立候補しようと思ったんですか?
江原 今まで、理学療法士の学会から一線を置いていたのにはワケがあって。実は5、6年くらい前に一度理学療法士協会のお問い合わせに「理学療法士による慢性疼痛に対する取り組みってどのように考えているんですか」と問い合わせたことがありました。
その時に、「物理療法分科学会の中の疼痛管理というところでやっています」と返事をいただきました。様々なガイドラインでは慢性疼痛には物理療法は単独では推奨されていないことが多くて、むしろ運動が推奨されてるんだけどなぁと思いました。多分、お問い合わせを担当された方もあんまり分かっていないんだなって思いました。
そこから僕は日本ペインクリニック学会や、日本運動器疼痛学会とかで医師や多職種で検討するような発表をしてきましたが、理学療法の学会では発表するのをやめてしまいました。認定理学療法士(運動器)も取っているし、日本運動器理学療法学会にも一応所属はしているんですけど、何もやってきませんでした。なので正直にございませんと書きました。
ー なるほど。
江原 あとは、同時期に自分の理学療法士としての方向性として悩んでいたというのもあります。10年目くらいまでは技術の勉強をしたり、痛みのリハビリ科の体制を作ることに力を入れてきたのですが、10年目過ぎたあたりから今後自分はどうしていこうか考えて。
一つはNPOを立ち上げて社会貢献、社会活動にシフトしました。今回の選挙のことを知り、ふと慢性疼痛のリハビリの経験を理学療法学会に還元するというのもいいなと思ったんですよ。慢性疼痛領域では理学療法士が今すごく求められています。私が運動器理学療法学会に関わることで職域の広がりだったり、職種連携の強化に貢献できるのではないかと思いました。今までこちら側をないがしろにしてきてしまいましたが、やはり自分も理学療法士の端くれなので恩返ししたいという感じですね。
ー 江原さんが運動器理学療法士学会の運営幹事になったら具体的にどんなことをしようと考えていますか?
江原 慢性疼痛のコンセプトは、有酸素運動と認知行動療法と言われているので、テクニックよりもではなくて、身体を動かす方に持っていくだけでけっこう良くなるんです。心理社会的要因も注目されています。怪我や障害の改善だけでなくパフォーマンスの部分にも関わってくるからです。世界の常識を広めていきたいです。私は慢性疼痛専門の医師や心理士の方ともネットワークがあり、そういったことを盛り込んだ企画ができればと思っています。
また、過去の学術集会の抄録を読んでも、運動器疾患のセッションに慢性疼痛の演題が入ったりと整理されていない印象があります。発表する側も聞く側も座長の方も混乱してメリットはないですよね。慢性疼痛のセッションができるほど演題が集まる様にしていきたいですね。
あとは自分はSNSでの発信も得意としているので役立てたいですね。学会は確かに研究や臨床のデータを発表していく場ではありますが、それ見てもらったり来てもらったりして議論していかないと発展はないと思っています。同じ人ばかりが参加する会よりは、できるだけ色んな方に来てもらった方がいいですよね。それにはある程度”面白い”とか”興味深い”と思わせる「バズる」要素が入っていないと広まらないと思うんです。
立候補の趣旨に、プロレス観戦が趣味だと書きましたが、プロレスにハマった理由はそのエンターテイメント性と振り幅なんです。勝ち負けに繋がる試合前からの流れや、試合中にも展開されるドラマに惹かれました。ファイティングオペラと呼ばれたハッスルから、スポーツライクといわれたUWFまで振り幅が広くて、高齢者介護からスポーツ選手まで関わる理学療法にも必要な振り幅に通ずると思います。
リハビリテーションに関わるとなると、人の生活に関わるわけで、心身ともに支えていく一端を担っていくわけだから、そういった広い視点を持つということは必要なのかなと思います。学会を面白いものにするのに、少しでも協力できればなと思っています。
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【本日12時より分科学会運営幹事選挙です】日本運動器理学療法学会運営幹事立候補者、江原弘之です。
— Hiroyuki Ebara@NPO PHN (@lopeslopeslopes) 2019年2月10日
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