百聞は一見にしかず
インタビュアー:海外に行ってらっしゃって、日本で想像していたこととは違うことや驚いたことなど印象的な出来事はありましたか?
小川先生:実はJOCVに参加する前は中国という国に対してあまりいい印象を持ってはいなかったんです。昔旅行に行ったときに人の押しが強くて怖かったのと、日中関係や戦争のことで何か言われるんじゃないかなあと思っていたので…。
でも実際行ってみると、すごく明るくて面倒見のいい方たちばかりでした。国同士の関係としては良くないけれど、人と人としては一緒だよと言ってくれて、私は全然嫌な思いをせずに過ごせました。中国の方の優しさを感じることができたし、中国の方たちにも自分を通して日本に対していい印象をもってもらえたかなと思っています。
実際行かなかったら、ニュースなどの情報で形成されるイメージをずっと持っていたと思うんですけど、行ってみてイメージが変わったので、実際に交流することの大切さを肌で実感しました。
インタビュアー:ご家族はご心配されなかったですか?
小川先生:受けたことは言わずにいたので。笑
一次に受かった時に初めて受かったと報告しました。最初は反対されましたが、でもあなたは言い出したら聞かないから、と言われて最終的には応援してもらえました。
インタビュアー:海外に2年行くとなると女性としてのライフイベントとの兼ね合いで難しい部分があるのでは、と思ったのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
小川先生:高校生のころから協力隊に行くことが一番の目標になっていたんですね。ですからそれが終わるまでは結婚とか出産とかもあんまり考えられなくて笑。
学生のころ考えたプランとしては協力隊に行って帰国したら、35歳くらいまでには結婚出産を経験出来たらいいなあというような漠然としたものは持っていたんですけれども。丁度協力隊に行く28歳ころに周りの友達は結婚して、帰ってきたら子供いるぞみたいな感じでしたね。
でも、JOCV参加者の中には結婚してから行く方もたくさんいましたし。夫婦で行く人もいました。だからいろいろな選択肢があるし、柔軟に考えても大丈夫だと思います。私自身、帰国後にJOCVで出会った方と結婚しました。
キャリアの選択肢に幅を持つ
インタビュアー:行くからと言って何かをあきらめるというのではなくて、両立する手段もあるということですね。
小川先生:そうですね。
インタビュアー:帰国されたあとの道はいろいろな選択肢があると思うんですが、行く前に考えていたキャリアプランと、実際今までのキャリア、これからのキャリアをどのように考えていらっしゃるかということを聞かせてください
小川先生:協力隊は務めていた病院に籍をおいていくこともできるんですね。こうすると帰国した後は就職活動なしで病院に戻れるのでそういう人も多いんです。でも私の場合は帰国した際にやりたいことが出てきた時に困るな、周りにも迷惑をかけてしまうなと思って勤めていた病院を辞めてから行きました。
行ってみて思ったことは、今まで、回復期で脳卒中を見ることがほとんどだったんですけど、中国に行ったときはそんなこと関係なくいろんなことを聞かれるんですね。整形分野のことや急性期のことなど、まだまだ自分の経験・知識が足りないなあと思って、帰国後は急性期の総合病院に就職したいなと考えるようになりました。あと、もう一つの選択肢としては大学院に進むことも考えました。日本ではみんなが医療やリハビリテーションを受けられるのが当然のようになっています。でも中国ではそうではなくて、機会も限られてしまっているので、そういった社会制度とか、公衆衛生的な勉強をしたいなと思いました。
非常に悩んだんですけど、院の資料を取り寄せて読んでいるときに、私は「自分の中で全体的に知りたいなとは思っているけど、実際の具体的な研究テーマをもっていない。この状態で院に進んでよいのだろうか」と思ったので大学院ではなく、病院に就職することにしました。将来的に、訪問リハビリを実施したいという希望があったことも、就職を選んだ一つの要因であるかもしれません。もっと将来の話ですが、JOCVではなくシニア海外協力隊にも興味があります。
海外に出ると、理学療法のことはもちろん、日本の医療制度とか文化とかももっと知りたいなと思うことが多くて、それも日本で働こうと思った一つの理由であると思います。もちろん先輩や同僚の中には中国でそのまま働いている人もいますし、日本で起業している人もいますよ。本当にいろいろ選択肢があると思います。
若いうちの財産は時間と経験
インタビュアー:JICAに行ってよかったと思うことは何ですか?
インタビュアー:最後になりますが、海外で働きたいと思っている学生に向けてアドバイスをお願いします。
また、ネパールに行ったとき、周りの人たちにはすごく優しくしてもらったんですけど、同時に自分は何もできないなあという、無力感を感じたんですね。なので、今度協力隊で行くときは、自分の専門性を生かせる領域で行こう、と決意して、中国での回復期病院に応募しました。いろいろ経験しておくと、そのように、その時の反省を生かすこともできると思います。学生のうちにしかなかなか長期休みは取れないので、海外に行くだけではなく、たとえば日本全国一周するとか、やりたいことをどんどんやった方がいいのではないかなと思います。
小川暁子先生の経歴
【主な経歴】
埼玉県立大学をご卒業後、回復期病院に4年勤めたのちに2年間中国へ青年海外協力隊として派遣される。帰国後、東京都健康長寿医療センターに半年勤務され、現在新東京病院に在籍。