認知症先進医療開発センターの竹内真吾、木村展之両博士らは、Ⅱ型糖尿病がアルツハイマー病の主病変蛋白質であるアミロイドβの蓄積を加速化させるメカニズムをマカクザルで解明した。
アルツハイマー病患者の脳内では発症の約20年以上も前からアミロイドβの蓄積が始まっており、認知症発症の大きなリスクとなることが知られている。また、Ⅱ型糖尿病はインスリンが働かず、アミロイドβの蓄積を進行させると考えられてきた。その詳細な仕組みは不明のままであった。
研究チームは、Ⅱ型糖尿病に罹患したカニクイザルの脳組織を詳細に検索した結果、Ⅱ型糖尿病サルの脳ではコレステロール代謝が変化して神経細胞の生体膜に存在するコレステロール量が大きく上昇していることを発見。さらに培養細胞を用いた検証実験により、生体膜のコレステロール量が上昇するとライソソームと呼ばれる細胞内でタンパク質の分解を担う小器官の機能が低下し、アミロイドβの蓄積が加速化することを明らかにした。
これらの結果から、Ⅱ型糖尿病によるAD発症リスクの増加には、脳内のコレステロール代謝の変容が重要であることが示唆された。本研究成果は、The American Journal of Pathology誌 2019年2月号に掲載されている。