筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)や線維筋痛症は、痛みや強度の疲労感が生じ多くの罹患患者を悩ましている疾患ではあるが、原因は未だよくわかっていない。近年は、脳や脊髄の一部に炎症の痕跡が見られること、脳やホルモン分泌の中枢である下垂体を介した恒常性の維持機構の仕組みが崩れていることが明らかになってきている。
今回は、名古屋大学大学の木山 博資教授と愛知医科大学の 安井正佐也助教の研究グループらは、深部感覚の持続的で過剰な興奮が、脊髄内の反射弓に沿って、ミクログリアを活性化させ、これにより慢性的に痛みが生じていることをモデル動物を用いた実験で明らかにした。
▶︎ ストレス下での持続的な筋緊張が慢性的な痛みにつながる仕組みを解明
研究グループは、持続的な筋の緊張が生じるストレスモデル(ラット)を用いて原因を解析。その結果、筋肉や皮膚での炎症や神経・筋損傷が生じなくとも、重力に抗して姿勢を維持する抗重力筋の過緊張が、意識しにくい固有感覚を持続的に刺激 させ、反射弓に沿ってミクログリアを活性化させ、痛みが生じていることが明らかになった。
今回の研究成果は、ストレス等によって一部の筋緊張が長期におよぶことにより、通常では、 意識しない固有感覚の過興奮がミクログリアを介して痛みを引き起こすことを示しており、神経障害性疼痛や炎症性疼痛とは異なる新しい痛みの発生メカニズムを示したもので、今後筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)や線維筋痛症患者さんの痛みを和らげる治療の標的として、筋緊張の抑制が有効である可能 性が浮かび上がってきた。
本研究は本研究成果は国際科学誌「Journal of Neuroinflammation」の電子版に3月30日付けで掲載されている。