社会的地位を得るために【田中まさし先生】

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高齢者・障害者の就労を積極的に支援

 

― 掲げている課題のうち、「高齢者の就労促進」についてリハ専門職はどのように関わっていけるとお考えでしょうか?

 

田中氏:日本は労働者が足りていませんし、生産年齢人口、つまり社会を支える人が地方ほど急減していきます。ただ、調査によると65歳以上の高齢者でも働きたいと思っていらっしゃる方が、潜在的にものすごく多いということが分かっています。

 

高齢者を雇用する側の企業側としては、やはり労働者の健康面・体力面が気になると思います。そこで専門職が、具体的な運動機能と職務内容を勘案して、どうすれば就労を可能とできるかを橋渡しする役割を担うことができれば、高齢者や障害者の方々の就労が、もっと拡大していけるのではないかと思います。補装具や介助機器の利用、環境設定など、その人に合わせた対応が求められます。

 

住んでいる地域で、自分でやれることを見つけて元気に暮らしていくために、働ける可能性のある方を、一人でも二人でも多く就労につなげていくシステムが重要ではないでしょうか。

 

もちろん働くことによって精神的な活力や、身体的な老化とか虚弱状態の防止にもなっていくわけですから、健康増進というだけではなく生活能力の維持、生きる喜び、自分らしさ、社会的な価値の創出につながるものと思います。

 

― 精神障害に関しては、どのように考えていらっしゃいますか?怖い人といった差別的なイメージは根強くあるように感じています。

 

田中氏:残念ですが、それはあるかもしれませんね。マイナスイメージで、最初からシャットダウンされてしまうこともあるかもしれません。ただ、そういう方々も、自分で働きたい、社会に出たい、役に立ちたい、人に必要とされたいと思っていらっしゃる方はたくさんいます。

 

でも一旦、閉ざされた環境に置かれてしまえば、健常者の方と触れ合う機会が一気に少なくなってしまいます。その状況の中で「社会にそろそろ出ましょうか」と言われても難しいですよね。

 

 お子さんにとっても同じです。療育・発達支援等を受けている方ばかりの環境で育ってきた子が、18歳になったから「社会に出ましょう」といっても無理な話です。

 

ですから、お子さんたちが社会に出て行くために必要な社会経験は何かということを、もう一度しっかり見直して、そこに結びつけるために必要な要素を、その都度、適切な時期に提供できるような仕組みが必要だと思います。

 

地方を回っていると、今はお母さんたちも相当困っていらっしゃいます。子どもさんたちの行く場所がない、見てもらえるところがない。多くの施設が予約待ちの状況です。子育て支援センターのような場所に、リハ専門職が配置され、障害児や健常児を問わずに相談や支援ができると良いですね。健常児の親であっても、我が子の発育や発達は心配ですよね。専門家がアドバイスしてくれたら心強いのではないでしょうか。これから、いろいろな方々のご意見をよく聞きながら必要な制度づくりに取り組んでいきたいと思っています。

 

高い専門性、そしてスキルチェンジへ

 

 ― 今も、就労支援に関わっているセラピストはいることはいますが、なかなか増えていかない状況です。「職域拡大」と声をあげても、病院等から離れて働くのに不安なセラピストも多いようです。

 

田中氏:今持っているスキルだけでも、社会が抱える問題に対して、やれる業務や果たせる役割はたくさんあると思っています。2040年以降、医療・介護サービスは人口減少とともに縮小していく方向なのは分かっていることです。病院や施設での業務が縮小して、そこでも働くセラピストの仕事は新たに役割が増えない限り減っていくでしょう。今のうちから早く、地域・在宅へのスキルチェンジをしていただきたいと思っています。

 

ただ、スキルチェンジをする際に、どの方向にスキルチェンジをしていくのかが重要です。やみくもにスキルチェンジをしても仕方がありません。

 

これからの医療や介護は自治体が判断して展開されていきます。ご自身の住んでいる地域と行政の動きを把握すること。それぞれの地域に応じたスキルチェンジの方向性を見定めながら進んでいっていただけたらなと思います。

 

 

ー 他に若手療法士に対してよく伝えていることはありますか?

 

田中氏:学生によく言っていたのは、「気が利く人になれ」、「いてくれて良かったと言われる人材になれ」ですね。気が利くためには、観察する力、ニーズを捉える力、行動・実践する力が必要です。特に行動力はとても大切だと思います。

 

患者さんからも評価されなければいけませんし、働いている病院・組織からも評価されないといけません。人の想いを実現し喜ばれる、患者さんや利用者の安心な暮らしを回復しさんから喜ばれる人材となってほしいと伝えています。

 

高い専門性を持ち、これを活用して障害・生活・地域・社会をいかに良くしうるかはとても大切です。注意したいのは、社会的地位を得るために打算的に何かをやるのではなく、相手に喜んでもらうために努力をしたその先に、自分の価値、あるいは社会における自分の評価があるということです。

 

理学療法士であれば、患者さん・利用者さんに喜んでいただける、その人をやる気にさせるファシリテーターにならないといけないと思っています。相手のニーズに合わせて自分が変容していく、それこそがプロフェッショナルです。そのためには常に自分に欠けている要素は何かというのを、自問自答していかないといけません。

 

もちろん人間ですから、「まあまあ時間をかけてやろうや」という寛容さが必要なところも当然あります。息抜くところも大事です。自分でメリハリをつけ、10年、20年先の社会から目をそらさず前へ進んでほしいですね。

 

―  最後に今後へ向けて活動される意気込みをよろしくお願い致します。

 

田中氏:この国は民主主義社会ですから、要は多数決です。この国を変えたい、あるいは地域を良くしたいといった願いを実現するためには、数多くの皆さん方がそれに賛同しているということを社会に示すことが必要です。それが世の中を変える力になっていきますし、法律制度を変えていく力になります。

 

逆に多数決で負けると、行きたくない所へ行かなければなりません。本意ではない旅行先に我慢して行くことになるということです。

 

われわれリハ専門職も国民の一人ですから、自分たちのやりたい仕事、自分たちのやりたい生き方、あるいは自分たちの生活をより良くしたいと願うのは、国民の一人としての権利

です。

 

それぞれが声を出して、意思表示をして、でも足りない部分は謙虚に、自己研鑽に励んでいきながら、総意を示すことで結果を出していく必要があるのではないかというふうに思っています。

 

リハ専門職の生活・身分・職域が拡大安定して、研修・自己研鑽を経て高い専門性を発揮する。そして地域住民のニーズに応え、笑顔ある暮らしを守るために頑張っていきたいですね。

 

【目次】

第一回:役割、身分や待遇を向上してリハ専門職がさらに評価される社会へ

第二回:タスクシェア・タスクシフトの推進へ

第三回:社会的地位を得るために

 

田中まさし先生経歴

【社会活動】

日本理学療法士協会 理事

日本理学療法士連盟 顧問(前会長)

自由民主党東京都参議院比例区第三十六支部 支部長

社会福祉法人千歳いずみ学園評議員

社会福祉法人晃裕会評議員

学校法人淳心学園評議員

北海道理学療法士連盟会長

日本理学療法士協会代議員

日本理学療法士協会政治参加特別委員会委員

【来歴】

昭和40年10月11日 北海道札幌市生まれ

昭和62年~ 清恵会第二医療専門学院卒業後 河内総合病院・上山病院・札幌東徳洲会病院

平成7年~ 北海道千歳リハビリテーション学院 (副学院長、理学療法学科長)

平成22年〜 北翔大学大学院人間福祉学研究科人間福祉学専攻修了(修士)

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