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小児の摂食・嚥下障害に作業療法士として立ち向かう【神作一実先生|文京学院大学 教授】

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第314回のインタビューは文京学院大学 保健医療技術学部 作業療法学科の神作一実先生。前半では、神作先生がなぜ歯学の博士を取得したのか。今のOT教育に関して本音のメッセージをいただきました。後半では、発達障害児リハに関して。乳幼児期のうちにやる必要があること・ないことについて聞きました。

- 神作先生が作業療法士になろうと思ったきっかけを教えてください。

 

神作先生 記事になるような話じゃないんだけど(笑)高校の時の友達が、リハの学校(府中リハビリテーション専門学校)を受験するというので、受講料もタダだったし、予定も空いてたから受けたって感じ。

 

だから、入学したときはとんでもない学校来てしまったなと思いましたよ。忙しくて。他の学校の友達から「遊ばない?」って電話かかってきても、「それどころじゃないよ!」ってね。失敗したと思いましたね。

 

でも、授業は面白かったんですよ。身体ってうまいことできているなと感心しました。関節の動きに応じたカタチになっていたりとか、脳の構造と機能の話とか。だけど成長したいという動機は1mmもなかったから、実習は死にましたね(笑)

 

ー 先生は作業療法士で歯学の博士をもっているという、珍しいキャリアですよね。はじめ、摂食分野に進んだのはどういった流れだったのでしょうか。

 

神作先生 新卒で入った施設は、東京都の杉並区にあるたんぽぽ園という発達障害の子が通所しているところで、そこにはお弁当をうまく食べられない子供達もいっぱいいたんですよ。

 

丸呑みでゴホゴホむせたりするのを見て、「なんでこの子たち食べられないのかな」って疑問に思いました。ただ1人職場で相談できる先輩も周りにいなかったものですから、はじめは「摂食・嚥下リハビリテーション」を翻訳している鷲田孝保先生に、飛び込み電話で相談に乗ってもらったりしていました。あとは、施設の子の何人かが昭和大学歯学部口腔衛生学教室(当時)の先生方が実施していた外来を受診していることを知り、受診同行させてもらって、直接指導を受けていました。

 

ちょうどその頃くらいからは飯田橋にある口腔保健センターに月二回、研修に行かせてもらったりもして。そうこうしているうちに、普通研究生になることをと誘われてからは大学で解析の手伝いをやり始めたという流れです。

 

ー 博士課程にまで進まれたということは、その頃から、後々教員になろうと思っていたんですか?

 

神作先生 いや、全然。もう全く考えていなかったですよ。臨床大好きだもん。もう、やみつき。毎週木曜日が週一の臨床日なんだけど、ニコニコして行っちゃうくらい。

 

私って、自分で転職したことないんですよ。最初にたんぽぽ園から早稲田医療技術専門学校に移った時も、五味重春先生(肢体不自由児療育の創始者)から「学校ができるから、来なさい」と呼ばれ、「これ断ったら日本で仕事できなくなる」と思って移っただけですし。子供が生まれてからは、通うのが大変だと思っていたら、また五味先生から「僕の友達が、君の家の近くで学校を始めたから」と言われ、東京医療学院に移りました。ここ(文京学院大学)も、養成校時代の二つ上の先輩である長崎先生から電話がかかってきて、移りましたし。

 

ー 今の時代、将来に漠然と不安を抱えている若手や学生も多いと思います。先生は、修士を取ったほうがいいか学生から聞かれた場合、先生は勧めますか?

 

神作先生 まずは対象者やご家族から学ぶことが多いから、臨床に出るのがいいと思います。学部生には、「5,6年経って、自分の経験値だけでいいのか、感が良くなってくるだけでいいのかな、って疑問に思ったら、修士においで」って伝えています。大学院は、今までの経験を一度整理して総括するいい時間になると思います。

 

ー 今はエビデンスベースドがしきりに言われていますよね。その影響もあるのでしょうか。

 

神作先生 そうですね。作業療法士制度ができてから約50年間、研究がなかなか広まらなかったのは臨床家ばかりを育ててきたからです。制度としても専門学校からスタートして、大学ができたのはずっと後なわけですから、学問として蓄積が少なかったというのは当然です。

 

全ての作業療法士が研究する必要はないとは思いますが、当然エビデンスという科学的な根拠がなければ対象者に責任を持って対応することができないと思います。子どもたちの幸せに繋がらないような療法も混じってくることになりますので、根拠が必要なのは当然です。

 

教科書の知識だけで作業療法ができると思うなよ

 

ー 他に、学生や卒業生に対して、よく伝えているメッセージはありますか?

 

神作先生 とにかく対象者から学んでねとはよく話しています。教科書からは、今目の前で起きている現象を理解するための最低限の知識しか手に入りません。知識は頭に入っていて当たり前。教科書に書いてある内容でさえ、アップアップなら作業療法士はやめた方がいいと思います。

 

作業療法士にとって大切なのは、対象者にとっての意味のある作業は何かを考えること。その人らしく生きるとはどういうことかにフォーカスをすること。ブルンストロームステージがよくなろうが、車椅子のフィッティングがうまくやれようがそれだけでは本質的には意味がないんですよ。

 

そういうプロセスを通して、その人らしく生きるということに役に立たないと意味がない。教科書にはそんなことを中心には書いてありません。

 

摂食・嚥下分野に関して言うならば、食べられるということがゴールではなく、食べることで得られる楽しさや、食事の場を通して得られる他人との繋がりが大切です。

 

高齢になって身体に不自由のあるおじいちゃんが、「私はいいからみんなで行ってきなよ」と気をつかう状況も嫌だし、 家族が気を遣って「今日はお家でご飯にしようか」というのも嫌。おじいちゃんも一緒に外食するために、どういう条件が整ったら外食できるのかという条件を考えるのが作業療法士にとっての専門性だと思っています。

 

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小児の摂食・嚥下障害に作業療法士として立ち向かう【神作一実先生|文京学院大学 教授】

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