機能未知であった脳領域「前障(ぜんしょう)」が、大脳皮質の「徐波」活動を制御することを発見ー。
理化学研究所の吉原良浩氏らが、神経回路遺伝学的手法を用いて発見し、5月11日付で科学雑誌『Nature Neuroscience』オンライン版に発表した。
▶︎ https://www.riken.jp/press/2020/20200512_1/index.html
大脳皮質の深部には、「前障」と呼ばれる薄いシート状の脳領域があり、ほとんど全ての大脳皮質領野と神経連絡しており、双方向性に情報をやり取りしている。
このことから、大脳皮質全体が関わる高次の情報処理過程を前障がつかさどるのではないかと考えられ、これまでその機能について、多感覚情報の統合、注意の割り当て、脳の同期的活動の制御など、多くの仮説が提唱されてきた。
しかし、今日に至るまで前障の機能の実体は未解明のままだった。
今回、研究チームは、前障の神経細胞を選択的に可視化あるいは活動操作できるトランスジェニックマウスを作製し、神経解剖学・電気生理学・光遺伝学の技術を駆使して、前障の機能の解明に取り組んだ。
その結果、前障が睡眠中や休息中の大脳皮質で見られる徐波活動の制御に関わっていることが初めて明らかになった。