補聴器は聴覚リハビリの一環
ー 新卒から今の会社(スターキージャパン)で働いたんですか?
梅村 いえ、もともとSTになる前に社会人として働いていて、STになったのは30歳を過ぎてからになります。はじめ勤めたのは大学病院で1年間働いていました。
ー それから補聴器メーカーに転職したのはどういった理由だったのですか?
梅村 妻に聞こえづらさがあって、補聴器を付けた時とそうでない時の反応が全然違うのを知っていたので、難聴の方に補聴器で聴こえる喜びを提供するという価値を身近で感じていたというのがあります。ただ、お恥ずかしい話、給与面も一つの理由でした。
ー スターキージャパンでの業務内容というのはどういったことになるのでしょうか?
梅村 スターキーは補聴器の製造販売会社で、私は営業職として補聴器販売店との御取引を推進する役割です。製品説明やフィッティングアドバイスなど幅広く行っています。
ー 言語聴覚士資格を持っているから、採用されているんですか?
梅村 ゼロではないと思いますが、それよりも私の場合は、STになる前に働いていた時の営業経験をかっていただいたんだと思います。
補聴器販売店や同業他社で言語聴覚士を積極的に募集・雇用しているところがあるとも聞いています。
販売店ではお客様(難聴者)との補聴器購入の相談やフィッティングなど、同業他社ではマーケティングやカスタマーサポートなどを仕事にされている方々もいると聞いています。
ー 僕らセラピストが病院で働いていると、患者さんから「補聴器が合わない」と言われることがあるのですが、そういうときどんなアドバイスをすればいいのでしょうか?
梅村 まず認識をして頂きたい事があります。補聴器は装用したら誰でも直ぐに満足できるものではないという点です。
補聴器は聴覚リハビリの一環ですので、なるべく装用をして自分の耳の様に使って欲しいと思います。ただ、聞こえていなかった音が急に聞こえるようになるわけですから、違和感を抱く方や装用の効果に満足されていない方が少なからずいらっしゃいます。
補聴器は音質調整やカウンセリングが大切ですので、耳鼻科医の先生、聴覚領域に知見のあるSTに相談されるのが良いと思います。
もし職場に相談できる相手がいらっしゃらない場合は、その方の補聴器を調整しているお店にコンタクトを取って、不具合の対処方法等をご相談されると良いと思います。お店には補聴器調整のカルテがあるはずです。
相談される上で、どんな理由で「補聴器が合わない」と思っているのかが大切です。一概にポイントをお伝えするのは難しいですが、「音が大きい」「音が小さい」「上手く付けれない」「付けていると痛くなる・痒くなる」など概要がわかれば対処も進みやすくなると思います。
また今は、お客様のスマホと販売店のパソコンで遠隔で調整ができる補聴器もあります。もしそういった補聴器であればセラピストも対応し易くなると思います。
ー 遠隔でも調整できる時代なんですね!それはわざわざ足を運ばなくてもいいので、とても便利ですね。
梅村 ただ、補聴器は対面販売と調整が基本です。人対人でカウンセリングを含めてお客様(難聴者)がご自身にとって適したものを選ぶことが大切だと思います。
補聴器技術の進歩は著しく、音質調整や雑音抑制など様々な調整が細かくできるようになっています。
従来の補聴器よりもお客様(難聴者)に合わせたフィッティングが可能になってきています。ただ、その分補聴器は高価ですので是非とも根気よく補聴器に向き合って頂き、自分の物にして頂きたいなと思います。
ー 補聴器を買う際の参考に、いい販売員とそうでない販売員の見分け方っていうのはあるんですか?
梅村 勿論、良く聴こえさせてくれる販売員がお客様からすると良い販売員だと思います。見分け方というのは中々難しい質問ですが、補聴器の業界では、一定の補聴器調整技能を習得した人が取得できる「認定補聴器技能者」という資格制度があります。
こうした資格者が在籍していて、しっかりと親身に対応をしてくれるお店、ご自身に合うお店を見つける事が大切ではないでしょうか。
マーケットボリュームが持つ可能性
ー 補聴器メーカーに関わっている言語聴覚士ってまだまだ少数なので、キャリアとしての魅力について教えていただけますか?
梅村 断定はできませんが、言語聴覚士になって一般企業で働くことができる領域はそう多くないと思います。聴覚領域はその一つだと思います。
一般企業で働くということは、仕事の間口が広いということが言えるのではないでしょうか。ですので、様々なキャリア形成の可能性が大いにあると思います。
補聴器は、日本では年間60万台以上、弊社の本拠地があるアメリカですと、年間300万台程度販売されていると聞きます。。それだけのマーケット規模があって、かつ、セラピストの専門性がいかせる製品は他に無いように思えます。
今後も伸長していくとも言われていますので、働き手としてチャンスも大きいのではないでしょうか。
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