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教授ユーチューバーが語る作業療法教育のこれから【京極真】

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第352回のインタビューは、吉備国際大学 作業療法学科の教授・学科長の京極真先生です。”教授ユーチューバー”として、作業療法の本質や研究法、信念対立解明アプローチ等の情報発信を続ける先生にお話を伺いました。

 

YouTubeで情報発信する目的

 

ー 先生はYouTubeを積極的に活用して情報発信をしていますが、京極先生の中にある「狙い」みたいなものについて教えてください。

 

京極 まず一番は、現代作業療法の基本的な考え方を学べる場を提供したいっていうのがありました。

 

以前から、僕の論文、本、講演等から知識を得た作業療法士から「作業療法がやっとわかった気がする」というご意見を頂くことがありました。

 

話を聞くと、養成校で学んでいるときから、ちゃんとした作業療法を教えられていないんですよね。

 

もちろん、作業療法は教えられているんだけども、作業療法の一番の芯の部分が特定されていない。

 

だから、それが何なのかよくわからないまま作業療法している人がいるわけです。

 

それが原因で、患者さんに本来の作業療法を提供できず、しわ寄せがいくような状態は避けなくてはいけません。

 

そういう問題を解決したくて、YouTubeで情報発信をはじめました。

 

YouTubeでは作業療法以外に、信念対立解明アプローチ、研究法なども話していますので、そういうことに関心がある人に届けばいいなぁと思っています。

 

 

既存の教育システムを補完する

 

京極 またこれは、既存の教育システムを補完する努力だと思っています。

 

まず教育の1番の本質は何かっていうと、自由の相互承認を通して学習者の自由を最大化することです。

 

これは友達の苫野一徳くん(哲学者、教育学者)からの受け売りでもありますが、生きたいように生きられるよう支援するのが、教育の本質です。

 

では、教育システムの本質は何かというと、ロバスト性(様々な外部の影響によって影響されにくい性質)の高さだと思うんですよね。

 

ロバスト性のあるシステムというのは、政治や市場が変わるたびに柔軟に改変されない制度ということです。

 

それがないシステムは、外部環境の変化によって、ころころ変わります。

 

教育は社会共通資本ですから、それだと困ってしまいます。

 

なので、教育システムというのは社会が変化しても、安定供給できるようにロバストな制度設計になっているわけです。

 

しかし、現行の作業療法の教育システムは、作業療法がいったい何たるかわからないままスタートしてしまったところがあります。

 

本来ならば、作業療法が何たるかがわかったら、教育システムを柔軟に変えればいいんですけども、ロバスト性という特徴があるからなかなか難しい。

 

もしかしたら僕の生きている間に作業療法の教育システムが変わることは不可能かもしれません

 

では打つ手なしかというと、そんなことないと思っていて、現代ならオンラインサロンやYouTubeなどでいくらでも学べる機会を提供できるわけですから、それがさらに充実していけば従来の教育システムを補完することができます。

 

これからは、従来型の教育システムと、別の次元で発展した新しい教育システムがうまく補い合うカタチが、ニューノーマルになっていくのではないでしょうか。

 

時代遅れの国家試験問題

 

京極 教育について関連してお話すると、作業療法国家試験に関しても、「いつまでこの内容の問題を出し続けるつもりなんだろう」と疑問に思っています。

 

現在の国家試験問題で合格しようと思ったら、解剖学・生理学・運動学を中心に勉強するのが一番です。

 

この3つを抑えておけば、一般問題は点数が取れるし、実地問題にも応用が効きます。

 

しかし、実際の作業療法場面において、基礎医学というのはパラメーターの一つでしかありません。

 

本来の作業療法というのは、人間の意味のある行動を通して、健康状態や幸福を改善していくものです。

 

この国家試験を乗り越える期間に、学生の頭の中に「解剖学・生理学・運動学が大事」と刷り込まれてしまうがために、臨床に出て心身機能・身体構造ばかり気にする作業療法士になってしまわないかと危惧しています。

 

実際、知りあいの医師から「作業療法士に作業の問題について対応してもらおうとしたら、筋や運動の話ばかりで作業についてぜんぜんだった」という意見をもらったことがあります。

 

他の職種が「作業療法は作業の問題を解決する専門職」と気づきはじめているのに、作業療法士が対応できていないわけです。

 

もちろん、その影響のすべてが国家試験にあるわけではないし、解剖学・生理学・運動学が作業療法士にとって重要であることは否定しません。

 

けど、国家試験において、その比重が大きすぎるのではないかと思っています。できることなら国家試験は、本来の作業療法に合わせたものに変えるべきです。

 

具体的には、解剖学・生理学・運動学の出題数を減らして、作業に関する知識、作業と生存に関する知識、作業と健康と幸福に関する知識、作業と健康と幸福の相互作用に関する知識、作業で評価・作業で介入する知識などの問題を増やした方がいいのではと考えています。

 

今の国家試験問題は、作業療法の専門性を着実に習得した作業療法士を育てるためのものになっていないと思っています。


 

既存の教育システムでは埋めることができなかった穴

 

ー あと、研究法についてもYouTubeで発信していますが、これからもしかしたら研究分野も変わっていくものなのかもしれないですね。

 

京極 そうですね。YouTubeで約3時間20分の質的研究のオンラインコースを配信しているのですが、同職種からだけでなく、他職種からも相談を受けることが増えてきました。

 

例えば、医師や看護師の方から「大学院に通っているんだけど、質的研究を教えてくれる人が周りにいないから教えてほしい」と連絡をいただくことがあります。

 

今までは指導教員に教えてもらったり、自分で勉強したり、研修会に参加するなどの努力でしたが、インターネットによって既存システムでは決して埋めることができなかった穴を埋めることができるようになったと感じています。

 

僕以外にも先見の明に長ける先生方が既にチャレンジしはじめています。

 

例えば、金子唯史先生が率いるSTROKE LAB関連のYouTubeチャンネル、寺岡睦先生のYouTubeチャンネル、竹林崇先生のオンラインサロンやYouTubeチャンネルなどは、既存の教育システムの穴を埋める挑戦ではないかと思っています。

 

挑戦の成熟の促進を考えると、こういう取り組みはこれからどんどん広がっていくことが期待されますね。

 

YouTubeはさらなる勉強のきっかけに過ぎない

 

京極 YouTubeで色んな動画講義をアップしていますが、これらはきっかけに過ぎないと思っています。

 

動画を見て興味を持った方が、原著論文を読んだり、哲学書・理論書を読んだりすることが大切です。

 

YouTubeなどのSNSは勉強のハードルを下げるけども、それ自体はゴールでも何でもないです。

 

今はスマートフォン1個で世界の情報を一瞬で得ることができますので、その意味において情報は全員に平等です。

 

僕が読んでいる研究論文も、誰でもどこにいてもアクセスすることができるものばかりです。

 

特別な情報源は1つもありません。

 

だからこそ、僕は「ちゃんと勉強しましょう」ということを、ここで伝えたいです。

 

作業療法の本質とは何か、各々がもっと自身の資格に強みを理解するためにちゃんと勉強したほうがいいと思いますし、それが中々時間が取れず、負担なのであれば、せめて僕のYouTubeを流し聞きでもいいので視聴していただければと思います。(笑)

 

 京極真先生のYouTubeチャンネルはこちら

▶︎ https://www.youtube.com/channel/UCWpvAxIhiF9jFugw2zC_0ng/join

 

【目次】

第一回:教授ユーチューバーが語る作業療法教育のこれから

第二回:「同じ作業療法を語っているはずなのに」 信念対立はなぜ生まれるか

第三回:低い認知度が引き起こす作業療法現場のジレンマ

 

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