国際協力という生き方【元UNICEF 理学療法士|中村恵理】

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自分らしくいられる場所を探して

-国際協力と聞くとハードルが高く感じる人も多いと思いますが、中村さんはいかがでしたか。

中村:私にとって国際協力は「日本で感じる生きずらさから距離をとるための手段」だったので、気持ちの面で他の人より海外に出やすかったのではないかと思います。私は小学生の頃、引っ込み思案の性格から、友達の輪に入れず一人でいることが多い子でした。

 

そんな私を見かねた学校の先生が「みんなと同じようにしみたら」と提案してくれたのですが、私にはそれが、日本の社会がみんなと同じでいることを強要して、私の個性を潰しに来ているように思えて、物凄く生きずらさを感じたんです。

 

日本でその生きずらさを日々感じながらどんどん自分自身を嫌いになってしまい、自分が自分らしくいられる場所を探し日本の外へ目が行くようになりました。なので、国際協力は私にとってそもそもハードル(障害)ではなく、藁にもすがる思いで手を伸ばした小さな希望だったんです。

 

-海外に出てみて改めて日本を見つめたとき、日本に対する気持ちは変わりましたか?

中村:私以外の日本人もよくおっしゃることですが、海外に出たことで日本のいいところがたくさん見えましたし、日本人でよかったと心から思うことができました。ただ、自分の居場所は海外にあると改めて思いました(笑)。今のところどこかの国に定住するという考え方はなく、仕事に応じて国と地域を移動する働き方が続けられたらいいと思います。

 

-国際協力に興味のある人は、まずは海外旅行から…というのもアリですか?

中村:もちろんアリだと思います。別に途上国でなくても、日本以外の国に足を運び文化に触れることでまずは「楽しい」という気持ちを感じてもらえたらいいと思います。現地語や英語ができるといいですが、できなくても意外とコミュニケーションが取れるものですよね。楽しい成功体験を積み重ねて「なんとかやってこれた」というちょっとした自信の積み上げをして、少しずつできることを増やしていくといいと思います。

 

-今の若い世代はどのようにキャリア形成をするべきだと感じますか?

中村:私は昭和最後の年に生まれて、血反吐を吐いてでもやれ、這いつくばってでも頑張れ…という昭和っぽい教育にも触れてきました。でも今、同じことを言ってもできる人とできない人がいると思うんですね。もちろんそれがいいとか、悪いとかの話をしているわけではありません。

 

最近、若い世代からもらう質問として多いのは「どちらの選択肢がキャリア的にいいですか?」。私はこれまでスムーズにいくことを考えたことがなく、目の前にある選択肢の中で一番やりたいことを選んできました。本当にやりたいことへの気持ちを消さないようになんとかここまできたので「スムーズなキャリア形成」という概念がなく、返答に悩みます。

 

私のやり方でできる人とそうでない人がいるので、押し付けてはいけないと思っています。これは国際協力だけに限らず、それぞれのやり方で見つけていくしかありません。自分のやりたいことをやっている人は、実現までの過程でそれなりに苦労している人が多いんじゃないかと思います。

 

-国際協力に興味がある人は、具体的にどんな行動を取るといいでしょうか?

中村:海外に興味を持つ人が増えればいいな、あわよくば途上国に興味を持ち、足を運ぶ人が増えればいいなといつも思っています。でも現地に行かなくても協力隊に入らなくても、興味のある人が自分のできるレベルでやれることをすればいいとも思います。

 

「興味があるけどできない」理由としてよく挙げられるのは資金や休日の問題ですが、今はお金や時間がなくてもできることがたくさんあります。オンラインセミナーを探して受けてみてもいいでしょう。またSNSで同じ思いを持つ人とつながり将来のために準備するとか、ネットで調べてモチベーションを上げるとか、本を読んでみるとか。今いる場所でできることはたくさんあると思うんです。

 

-国際協力を目指すなかで、悔しい思い、悲しい思いは経験しましたか?

中村:これまで出会った先生方からは「国際協力で食っていけるなんて考えるな、厳しい世界だから甘い考えは通用しない」と言われてきました。私はなにくそと思いここまでやってきましたが「先生がそう言うから無理なんだ」と諦める友人も間近で見てきました。「若い芽を摘むなんて…」と悔しい気持ちでした。

 

「PTが途上国に来たって意味がない」と言われたこともあります。私を「中村恵理」という一人の人間ではなく「PT」と切り取られたことと、「PTは緊急支援ができない」というその人の固定概念にショックを受けました。でもその言葉をきっかけに、単なるPTと見られないようにさまざまなことを学んできました。

 

怒りは大きなエネルギーになりますよね。なにかを続けている人は周りから心ない言葉を浴びせられることもあると思いますが、ネガティブな感情を力に変えてやってきていると思います。そんな言葉に屈したくなくて、私もここまでやってきました。

 

-国際協力の現場でのPTの可能性について教えてください。

中村:開発支援の現場でのPTの活躍は取り上げられることが多いものの、紛争地や難民キャンプなのど緊急支援現場において、PTの需要が高いことを多くの人はまだ認知しておりません。水や火、電気がないところでもリハビリはできます。

 

自分の手さえあれば仕事ができるというのはPTの最大の強みだと思うんですよね。リハビリのポテンシャルはすごく高いです。途上国の現場で既に需要があるし、今後も需要が高まっていくはず。夢を追いかけるか迷っている人には「世界が求めているよ」と伝えたいです。

 

-国際協力やPTを目指す人に限らず、キャリアを考えるすべての読者に向けてメッセージをお願いします。

中村:日本は先進国に属しGDPも高いのに、幸福度が低いですよね。豊かさや幸せってなんだろう?と学生時代はずっと思っていました。途上国は物質的に足りないものも多いけれど、みんな幸せそうに暮らしている。私はそれが羨ましくて、その豊かさや幸せに浸かっていたくて途上国に向かうのかもしれません。

 

でも日本を出てみたら、日本の豊かさと幸せにも気がつくことができました。それを教えてくれた国際協力での経験は私が生きる上で大切なもの。生きることすべてであり、生活の一部です。

 

これは国際協力に限った話ではなく、自分自身が成長できた経験は大切にしてほしいと思います。自己肯定感が低い、人前に出るのが苦手、他人づきあいが嫌…それぞれに葛藤があると思いますが、困難だらけの日々を乗り越えて、経験を積み重ねるうちに少しだけ自分を好きになれるはずです。

 

私自身がそうでした。ずっと強くなりたいと思っていましたが、国際協力を通して少しずつ強くなれていると感じています。一番大事なのは自分を信じること。大変なときはいつも「自分が自分を信じてあげなくてどうするんだ」と問いかけています。

 

読者の皆さんが仕事での経験を通して少しでも自分を好きになれたらいいですね。

 

ー完。

 

【目次】

前編:私は世界に恋をした

後編:国際協力という生き方

 

PROFILE

1988年生まれ、北海道出身。国際医療福祉大学を卒業後、理学療法士の国家資格を取得。急性期総合病院に5年間、理学療法士として勤務した後、2016年10月、協力隊員としてキルギスに赴任。18年10月に帰国。19年からUNICEFキルギス共和国事務所に赴任。

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