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今回は、臨床で良く遭遇する「梨状筋の痛み」に対しての評価・治療法を紹介したいと思います。皆さんも日々の臨床の中で、梨状筋に痛みを訴えている患者さんは、非常に多いのではないでしょうか?梨状筋のリラクゼーションを行い、介入直後は「痛みが楽になりました」と満足して帰られるのですが、次のリハビリの際に「やってもらった後は良かったんですけど、また痛くなりました」なんて事、多くないですか?
そもそも梨状筋はなぜ痛くなるのでしょうか?これを考えない事には、いつまでたっても梨状筋の疼痛を改善することは出来ません。今回、僕なりの梨状筋が痛くなる原因、評価・治療法について紹介していきたいと思います。是非最後までご覧になっていただき、梨状筋の疼痛に対して自信をもって介入できるようになりましょう!
何故、梨状筋は痛くなるのか?
結論から申し上げると骨盤前傾位が原因であると僕は考えています。僕の経験上、梨状筋に痛みが生じている方のほとんどは、骨盤前傾位(股関節屈曲位)になっています。では何故、骨盤前傾位だと梨状筋に痛みが生じやすくなるのでしょうか?
①梨状筋が”外転筋”として活動するから
一つ目の理由は、梨状筋が外転筋としての活動を要求されるからです。「え?梨状筋は外旋筋でしょ?外転作用なんてないじゃん!」と思う方もいらっしゃると思いますので先に梨状筋の作用の変化について説明します。
【股関節屈曲角度による梨状筋の作用変化】
梨状筋を含めた股関節の外旋筋は、股関節屈曲角度によって作用が変化するという特徴がります。下の図をご覧ください。
図の赤い線が梨状筋です。股関節屈曲0°の時は、大腿骨頭の後方を梨状筋通過している為、作用としては股関節の外旋になります。それと比べて、股関節を60°ほど屈曲した右の図では大腿骨頭の中点を通過しているため外旋作用が消失します。そして代わりに股関節外転の作用が高まります。建内宏重先生の書籍には、
例えば、梨状筋は股関節屈曲約60~75°では梨状筋が収縮しても回旋運動は生じない。そのポジションでは、梨状筋は股関節外転及び伸展モーメントを有すため、股関節を回旋せずに伸展・外転させる作用となる。
建内宏重 著 「股関節 協調と分残から捉える」 HUMAN PRESS P54より
と記載されています。ちなみに75°よりも屈曲させた姿位では、梨状筋は内旋作用に変化します。このように梨状筋は股関節屈曲角度によって、作用が変化していきます。
【何故、外転筋として活動すると痛くなるのか?】
下の図をご覧ください。
正常歩行での股関節屈曲角度は、イニシャルコンタクト(IC)時で約30°程度です。その為、梨状筋は外転作用よりも外旋作用を有している状態ですので、外転筋としての役割は要求されていません。しかし、骨盤前傾例(例えば正常よりも15°前傾している)の場合、IC時の股関節屈曲角度が30+15=45°となってしまい、正常歩行例と比べると梨状筋の外旋作用が弱まり、外転作用が強まります。
さらに外転筋の中心として働いてほしい中殿筋も股関節屈曲角度が増加すると、前部線維が短縮してしまい活動が弱まってしまいます。以上の事から、中殿筋前部線維の代わりに梨状筋が外転筋としての役割を任されてしまい、負担が増加した結果疼痛が生じる。これが、僕が考えている梨状筋に疼痛が生じる原因の一つです。
骨盤前傾からの運動連鎖で股関節が内転内旋しやすくなるから
さらに追い打ちをかけるのが、股関節内転内旋です。骨盤が前傾位になると下行性の運動連鎖によって股関節は内旋しやすくなります。立脚初期で股関節が内旋すると、同時に内転も生じやすくなりますので、
骨盤前傾⇒股関節内旋・内転が生じます。
これによって、梨状筋はさらなる負担を強いられるため、疼痛が生じやすくなってしますのではないか?僕はこのように考えています。
まとめると、
①骨盤前傾位によって、歩行時の股関節屈曲角度が増加し、梨状筋が中殿筋前部線維の代わりに外転筋としての役割も要求される
②骨盤前傾位からの下行性運動連鎖によって、股関節内転・内旋位となり、さらに負担を増加させる
この二つの理由から、骨盤前傾位は梨状筋の疼痛を生じやすいと考えています。
梨状筋の評価法
梨状筋の触診
まずは梨状筋の触診から確認していきましょう。
梨状筋を触診するためには
①大転子の上端(梨状窩)
②上後腸骨棘(PSIS)
を触診してランドマークにします。そして、PSISのちょっと下方、と梨状窩を結ぶ線上に指を中てて梨状筋を触ります梨状筋の評価に触診は必須ですので、必ず触れるようにしましょう。
梨状筋の検査
梨状筋の検査方法として、有名なのがフライバーグテストです。フライバーグテストは、検査側の足を屈曲・内転・内旋位として、梨状筋の疼痛や座位骨神経痛が生じれば陽性となります。しかし,この方法では梨状筋に伸張ストレスをかける事が出来ません。何故かというと、梨状筋は先ほど説明した様に股関節屈曲角度が60~75°になると外旋作用は消失し、屈曲90°位の際には内旋作用になっているからです。その為、屈曲・内旋では伸長されずに屈曲・外旋によって伸長されます。それを考慮した方法を整形外科リハビリテーション学会の林典雄先生は提唱しています。
(林典雄 監修 「運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 下肢編」運動と医学の出版社 を参考)よって、梨状筋を評価する際には、圧痛所見を取る事と、フライバーグテスト変法(屈曲・内転・外旋)をやってみてください。
梨状筋痛に対する治療
梨状筋に対する治療としては、梨状筋のリラクゼーションの他に以下を行っていきます。
①股関節伸展ストレッチ
骨盤前傾位アライメント改善の為に股関節伸展ストレッチを行います。股関節伸展ストレッチは下の図のように、体を使ったストレッチがお勧めです。
②中殿筋前部線維トレーニング
骨盤前傾位によって活動が低下していた、中殿筋前部線維のトレーニングをします。中殿筋の前部線維を狙ってトレーニングをするには、股関節伸展位での外転を行うのが大切です。
③内転・内旋位歩行の改善
歩行時に股関節の内転や内旋が生じている場合、これを改善していきます。方法は様々ありますが、内側アーチが低下している例には、内側アーチを挙上するインソール療法が効果的です。
まとめ
・梨状筋の疼痛の原因は、骨盤前傾位にあるのではないか
・骨盤前傾位によって、中殿筋前部線維の代わりに梨状筋が外転作用を求められる影響で負担が増大しているのではないか
・よって治療では、
・骨盤前傾位の改善
・中殿筋前部線維の訓練
・内転内旋位歩行の改善
を梨状筋のリラクゼーションと並行して行う。以上、参考になれば嬉しいです!最後まで読んでいただきありがとうございました!
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