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膝前十字靭帯再建の移植腱を大腿四頭筋腱と膝蓋腱で比較 大腿四頭筋腱の移植は、移植腱にかかる過剰な負荷のリスクが低い

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本研究のポイント

・膝前十字靭帯の大腿骨付着部と移植腱として大腿四頭筋腱と膝蓋腱の解剖学的特徴を比較

・大腿四頭筋腱の方が膝蓋腱よりも膝前十字靭帯再建後移植腱にかかる過剰な負荷のリスクが低い可能性を示唆

赤色は大腿骨挿入部位における移植腱の曲げ角度、黄色両頭矢印は移植腱の折れ曲がり角度、黄色▲は骨栓を示します。大腿四頭筋腱は膝蓋腱よりも折れ曲がる角度が小さいので、大腿骨の移植腱挿入部位にかかる過剰な負荷のリスクが低い可能性を示唆しています。

概要

大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の木下拓也大学院生(博士課程4年)、橋本祐介講師、中村博亮教授らの研究グループは、本研究で膝前十字靭帯の再建術時に移植腱として大腿四頭筋腱を用いた方が、膝蓋腱を用いた場合よりも移植腱の折れ曲がり角度が小さいことを発見しました。本研究成果は、膝前十字靭帯の再建術時に大腿四頭筋腱を用いた方が再建後の移植腱にかかる過剰な負荷のリスクが低い可能性を示唆しています。

膝前十字靭帯は、膝関節の中で大腿骨と脛骨をつないでいる靭帯です。膝前十字靭帯の損傷は、スポーツ外傷の中でも頻度が高く、自然治癒は困難であると言われています。膝前十字靭帯の再建では、解剖学的再建(靭帯の本来の付着部に新しい靭帯を再建する手術)によって術後成績が良好になることは以前から知られていましたが、移植腱間の解剖学的特徴の比較や移植腱の移植後の状態についてはこれまであまり研究が進んでいませんでした。

そこで本研究グループは、膝前十字靭帯の大腿骨付着部と、移植腱として大腿四頭筋腱、膝蓋腱に着目し、屍体膝20例を用いて組織学的にそれぞれの靱帯・腱について付着部幅・厚さと靭帯・腱の角度を計測しました。その結果、大腿四頭筋腱の方が膝蓋腱よりも付着部幅・厚さが大きく、さらに膝前十字靭帯再建後のCT画像により膝前移植腱の折れ曲がり角度が小さいことを発見しました(概要図参照)。

本研究の成果は、2022年8月1日に米科学誌「The American Journal of Sports Medicine」(IF = 7.010)のオンライン版に掲載されました。

「膝前十字靭帯再建後のCTで大腿骨骨孔に大腿四頭筋腱骨栓が綺麗に収まっているのを確認した時、大腿四頭筋腱の方が膝蓋腱よりも解剖学的な再建ができているのではと考え、本研究の着想に至りました。本研究が膝前十字靭帯再建の成績向上の一助になれば幸いです。」木下 拓也 大学院生

掲載誌情報

雑誌名:

The American Journal of Sports Medicine(IF=7.010)

論文名:

ACL   Graft   Matching:   Cadaver   Comparison   of   Microscopic   Anatomy   of Quadriceps and Patellar Tendon Grafts and the Femoral ACL Insertion Site

著者:

Takuya  Kinoshita,  MD,  Yusuke  Hashimoto,  MD,  PhD,  Ken  Iida,  MD,  and Hiroaki Nakamura, MD, PhD

掲載URL:

https://doi.org/10.1177/03635465221110895

研究の背景

膝前十字靭帯は膝関節の安定性に重要な役割を担い、前十字靭帯損傷に対しては再建手術が適応となります。膝前十字靭帯再建後、移植腱の損傷は大腿骨側で起きやすく、その部位での解剖学的特徴を明確にしておくことは重要です。

膝前十字靭帯再建では解剖学的再建によって術後成績が良好になることは知られており、膝前十字靭帯大腿骨付着部の解剖学的特徴についてはこれまでにも多くの報告がなされてきました。しかし、各移植腱間の比較やそれら腱を移植した時の状態についてはこれまで研究があまり行われていませんでした。特に近年は移植腱として大腿四頭筋腱に注目が集まっており、大腿四頭筋腱の解剖学的特徴について詳細な検討が求められていました。

研究の内容

本研究では、膝前十字靭帯の大腿骨付着部と、移植腱として大腿四頭筋腱、膝蓋腱の関係に着目しました。屍体膝を用いて膝十字靱帯、大腿四頭筋腱と膝蓋腱について組織学的にそれぞれの付着部幅・厚さと靭帯・腱の角度を計測しました。その結果、付着部幅・厚さについて、大腿四頭筋腱は膝前十字靭帯より有意に大きく、膝蓋腱は膝前十字靭帯よりも有意に短かったです。また、膝前十字靭帯再建後のCT画像で移植腱の折れ曲がりの角度(GBA)を計測したところ、GBAと組織学的に計測した靱帯・腱の曲げ角度の関係から大腿四頭筋腱の方が膝蓋腱よりも移植腱の折れ曲がり角度が小さいことを発見しました。この結果は、膝前十字靭帯再建後、膝蓋腱よりも大腿四頭筋腱の方が移植腱にかかる過剰な負荷のリスクが低い可能性を示唆しています。

今後の展開

膝前十字靭帯再建では移植腱として大腿四頭筋腱の有用性に注目が集まり、今後、大腿四頭筋腱を使用した膝前十字靭帯再建の臨床成績の向上が期待できます。

詳細▶︎https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-01704.html

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単に論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎません。論文で報告された新たな知見が社会へ実装されるには、多くの場合、さらに研究や実証を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。

膝前十字靭帯再建の移植腱を大腿四頭筋腱と膝蓋腱で比較 大腿四頭筋腱の移植は、移植腱にかかる過剰な負荷のリスクが低い

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