リアルワールドデータを用いて体格指数(BMI)と心房細動アブレーションの安全性との関連を解析

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国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)のオープンイノベーションセンター情報利用促進部の利根川玲奈研究員、岩永善高部長らと慈恵医科大学の研究チームは、我が国の診療群分類包括評価(DPC)の大規模リアルワールドデータを用いて、体格指数(Body Mass Index: BMI)18.5未満の痩せ型体型と心房細動カテーテルアブレーションにおける安全性との関連について分析を行い、痩せ型体型の患者では心房細動アブレーションにおける心タンポナーデ発症のリスクが高いことを示しました。

 

本研究成果は、査読付き科学雑誌「JACC: Clinical Electrophysiology」にて、2022年11月1日早期オンライン公開されました。

■背景

心房細動に対するカテーテルアブレーションの有効性が明らかになり、その施行数は増加傾向にあります。心タンポナーデは、稀ではあるものの致命的になり得る心房細動アブレーションの重要な合併症です。しかしながら、BMI18.5未満の痩せ型体型の患者は、アジア諸国では6%程度に認めるものの、欧米諸国では2%未満にとどまり、痩せ型体型の患者における心房細動アブレーションの安全性の検討は十分ではありませんでした(注1)。

 

本研究では、循環器疾患実態調査のDPCデータを用いて、心房細動アブレーション治療に伴う心タンポナーデの発症と、体格指数(Body Mass Index: BMI)の関係について解析を行いました。

■研究手法と成果

59,789症例(平均66歳、女性29%)の心房細動アブレーションが行われた入院症例を同定し、647例(1.1%)で心タンポナーデが起こりました。BMI18.5未満の痩せ型体型の症例では、正常体型(BMI18.5以上25未満)を参照とした場合、心房細動アブレーション中の心タンポナーデ発症のリスクが有意に高いことが示されました。一方、過体重(BMI 25以上30未満)や肥満(BMI30以上)は、正常体型を参照とした場合、心房細動アブレーション中の心タンポナーデ発症のリスクは有意な上昇あるいは減少を認めませんでした。

■今後の展望と課題

本研究の成果は、痩せ型体型の患者では心房細動アブレーションにおける心タンポナーデ発症のリスクが高いことを示しました。今後、今回の研究では測定されていない他の因子も含めた解析や、痩せ型体型と他の合併症や治療有効性との関連についての研究が必要です。

■発表論文情報

著者:Reina Tonegawa-Kuji, Michikazu Nakai, Koshiro Kanaoka, Yoko Sumita, Kengo Kusano, Yoshitaka Iwanaga, et.al.

題名:Impact of Low Body Mass Index on Cardiac Tamponade During Catheter Ablation for Atrial Fibrillation

掲載誌: JACC: Clinical Elecctrophysiology

■謝辞

本研究は、厚生労働科学研究費「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業」補助金および国立循環器病研究センター「循環器病研究開発費」より資金的支援を受け実施されました。

(注1):Global BMI Mortality Collaboration, Di Angelantonio E, Bhupathiraju ShN, et al. Body-mass index and all-cause mortality: individual-participant-data meta-analysis of 239 prospective studies in four continents. Lancet 2016;388:776–86.

詳細▶︎https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_34990/

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 、さらに研究や実験を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。

リアルワールドデータを用いて体格指数(BMI)と心房細動アブレーションの安全性との関連を解析

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