研究成果のポイント
○大阪府寝屋川市の国民健康保険・後期高齢者医療制度の被保険者146,519人において、日常生活活動度が低下して新規に要介護認定された高齢者7,873人は、無作為抽出された高齢者39,365人に比較して、死亡のみならず、透析が必要な末期腎不全のリスクが高いことを明らかにしました。
○日常生活活動度の低下は、死亡や心血管系疾患のリスクであることが報告されていましたが、末期腎不全のリスクであるかどうかについては評価されていませんでした。
○要介護高齢者は透析導入の高リスク群であり、腎臓病の定期的なモニタリングが必要であることを証明する結果となりました。腎臓専門医と連携して、要介護認定された高齢者の末期腎不全を予防する腎診療システムの構築が必要です。
概要
大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループは、2012年9月~2017年3月に大阪府寝屋川市で新規に要介護認定された高齢者7,873人と要介護認定されていない高齢者39,365人の透析を必要とする末期腎不全リスクと死亡リスクを比較しました。その結果、要介護認定された高齢者は、末期腎不全(図1)と死亡(図2)のリスクがともに上昇していることを初めて明らかにしました。
日常生活活動度の低下は、心血管系疾患や死亡のリスクであることが報告されていましたが、末期腎不全との関連はほとんど評価されていませんでした。今回、山本教授らの研究グループは、大阪府寝屋川市の146,519人の医療レセプトデータを利用して、要介護認定者の末期腎不全リスクが上昇していることを明らかにしました。今後、要介護高齢者の末期腎不全を予防する腎診療システムの構築が期待されます。
本研究成果は、2023年2月7日に米国科学誌「Journal of the American Medical Directors Association」(オンライン)に掲載されました。
研究の背景
日常生活活動度の低下は、心血管系疾患や死亡のリスクであることが報告されていますが、末期腎不全との関連はほとんど評価されていませんでした。
研究の内容
大阪府寝屋川市の国民健康保険と後期高齢者医療制度の保険者を対象にしたNeyagawa Health Checkups and Health Care in Kokuho Database (NHHK) 研究において、2012年9月~2017年3月に新規に要介護認定された65歳以上の高齢者7,873人と要介護認定されていない高齢者から無作為抽出した39,365人の透析導入リスクと死亡リスクを比較しました。その結果、要介護認定された高齢者は、透析導入リスク(図1)も死亡リスク(図2)も上昇していることを明らかにしました。初回認定時の要介護度の重症度が高いほど、死亡リスクは高い傾向が確認されましたが(多変解析モデルにおける要介護認定無しに対する要支援1~2+要介護1、要介護2~3、要介護4~5の死亡リスク2.9倍、6.0倍、9.5倍)、透析導入リスクはほぼ同等でした(2.0倍、1.9倍、2.1倍)。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果は要介護高齢者の末期腎不全リスク・死亡リスクが高い事を示しており、要介護予防が近年増加している高齢透析患者数の減少に繋がる可能性を示唆しています。また、腎臓専門医と連携して、要介護認定された高齢者の透析導入を予防する腎診療システムを構築することが必要であると考えられます。
特記事項
研究成果は、2023年2月7日に米国科学誌「Journal of the American Medical Directors Association」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Long-Term Care Needs and Incidence of End-Stage Kidney Disease: A Retrospective Cohort Study”
著者名:Ryuichi Yoshimura, Ryohei Yamamoto, Naoko Otsuki, Maki Shinzawa, Rie Kataoka, Nami Ikeguchi, Suzuna Kanda, Yuki Nii, Hiroshi Toki, Toshiki Moriyama
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jamda.2023.01.008
この研究についてひとこと
高齢化する日本社会において、要介護高齢者の増加も高齢透析患者の増加もいずれも大きな社会問題です。本研究結果は、両者が非常に密接した問題であることを示しており、要介護予防が高齢の透析導入の予防に繋がるかもしれません。今後さらなる研究の進展が期待されます。
詳細▶︎https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230427_1
注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 、さらに研究や実験を進める必要があります。 、専門家の指導を受けるなど十分に配慮するようにしてください。