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脳卒中理学療法評価:National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)の活用法

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脳卒中患者のリハビリテーションにおいて、適切な評価は治療計画の立案に不可欠です。本稿では、急性期脳梗塞患者の神経学的重症度を評価するツールとして世界的に使用されている「National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)」について解説します。

NIHSSとは

NIHSSは、急性期脳梗塞患者の神経学的重症度を評価するために開発されたスケールです。検査者間の信頼性が高く、病巣の大きさとの妥当性も確認されています。評価は11項目(一部に小項目あり)から構成され、各項目は0点から2〜4点で採点し、合計42点満点で評価します。点数が高いほど重症度が高く、一般的に以下のように分類されます:

・軽症:0〜5点

・中等症:6〜14点

・重症:15〜24点

・重症:25点以上

評価時の注意点

1.11項目をリストの順に実施する。

2.各検査項目の結果は施行直後に記載し、評価の変更は不可。

3.推測での記載は避け、実際に測定を行う。

4.指示された部位以外での患者誘導は禁止。

5.実施できなかった項目があれば理由を記載。

6.最重症の場合、運動失調の評価が困難なため、実質的な満点は40点となることがあります。

評価項目と方法

1. 意識水準(0〜3点)

0点:何もせずに起きている

1点:声掛けですぐに目覚める

2点:刺激を加えて起きる

3点:刺激しても反応なし

2. 意識障害-質問(0〜2点)

「今何月ですか」と「年は何歳ですか」を質問。

0点:両方正解

1点:一方のみ正解

2点:両方不正解

3. 意識障害-従命(0〜2点)

「目を閉じて/開けてください」と「手を握って/開いてください」を指示。

0点:両方可能

1点:一方のみ可能

2点:両方不可能

4. 最良の注視(0〜2点)

眼球の水平運動を評価。意識がない場合は頭位変換眼球反射(人形の目)を使用。

0点:正常

1点:部分的注視麻痺

2点:完全注視麻痺

頭位変換眼球反射

5. 視野(0〜3点)

対座法で上下左右4分割の視野を評価。

0点:視野欠損なし

1点:部分的半盲

2点:完全半盲

3点:全盲または評価困難

6. 顔面麻痺(0〜3点)

歯を見せる笑顔と額にシワを寄せる動作を評価。

0点:正常

1点:軽度麻痺(笑顔不対称など)

2点:部分的麻痺(顔面下半分の完全/ほぼ完全な麻痺)

3点:完全麻痺

7. 上肢の運動(0〜4点)

座位90°または背臥位45°で10秒間の保持を評価。手のひらは下向き。両側評価。

0点:10秒保持可能

1点:10秒以内に下垂するがベッドまで落ちない

2点:重力に対する動きあり、10秒保持不可

3点:重力に対する動きなく即座に落ちる(軽度の筋収縮あり)

4点:全く動きなし

8. 下肢の運動(0〜4点)

背臥位30°で5秒間の保持を評価。両側評価。配点は上肢と同様。

0点: 5秒間保持できる

1点: 5秒以内に下垂

2点: 重力に逆らう動きはあるが保持できない

3点: 筋収縮のみ

4点: 全く動かない

9. 運動失調(0〜2点)

鼻指試験と膝かかと試験で評価。上下肢の運動麻痺が満点でない場合は評価不可。

0点:失調なし、または評価不可

1点:一肢に失調あり

2点:二肢以上に失調あり

10. 感覚(0〜2点)

痛み刺激(針刺激や軽いつねり)で評価。両側評価。

0点:正常

1点:軽度〜中等度の感覚障害

2点:重度〜脱失、または両側障害

11. 最良の言語(失語)(0〜3点)

これまでの評価での観察から判断。視覚障害者は触覚で評価。

0点:正常

1点:軽度〜中等度の失語

2点:重度の失語

3点:無言または全失語

12. 構音障害(0〜2点)

これまでの評価での観察から判断。

0点:正常

1点:軽度〜中等度

2点:重度

13. 消去現象と注意障害(0〜2点)

視覚、触覚、聴覚、空間、自己身体への注意を評価。

0点:異常なし

1点:一つの感覚様式で消去現象あり

2点:重度の半側不注意または2つ以上の感覚様式で半側不注意

NIHSSの臨床活用:予後予測

NIHSSは急性期からの予後予測に有用です。3ヶ月後の機能予後について、以下のカットオフ値が報告されています:

・前方循環(内頚動脈、前/中大脳動脈領域)脳梗塞:8点未満で予後良好

・後方循環(椎骨脳底動脈、後大脳動脈領域)脳梗塞:4〜5点未満で予後良好

・脳出血:7点以下で予後良好(発症後および3ヶ月後のmRSが4以下)

ただし、入院時NIHSSは24時間後や退院時のNIHSSよりも予後予測精度が低いとされています。急性期の意識障害の影響を考慮する必要がありますが、一つの目安として活用できます。本稿では、NIHSSの各評価項目と採点方法、そして臨床での活用法について解説しました。理学療法士として、この評価ツールを正しく使いこなし、脳卒中患者の適切なリハビリテーション計画立案に役立てましょう。

参考文献

・Sato S, et al. Baseline NIH Stroke Scale Score predicting outcome in anterior and posterior circulation strokes. Neurology. 2008;70(24 Pt 2):2371-7.

・Inoa V, et al. Lower NIH stroke scale scores are required to accurately predict a good prognosis in posterior circulation stroke. Cerebrovasc Dis. 2014;37(4):251-5.

・Finocchi C, et al. National Institutes of Health Stroke Scale in patients with primary intracerebral hemorrhage. Neurol Sci. 2018;39(10):1751-1755.

参考動画:脳卒中リハビリテーション マネジメント-評価の実際

評価の実際 (実技)-4「Fugl-Meyer Assessment(下肢)編」
評価の実際 (実技)-5「Berg Balance Scale編」1
評価の実際 (実技)-6「Berg Balance Scale編」2
評価の実際 (実技)-7「National Institutes of Health Stroke Scale編」1
評価の実際 (実技)-8「National Institutes of Health Stroke Scale編」2
評価の実際 (実技)-9「臨床における評価文化の形成編」
評価の実際 (実技)-10「歩行評価編」1
評価の実際 (実技)-11「歩行評価編」2

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脳卒中理学療法評価:National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)の活用法

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