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診療報酬での消費税補填に限界 日病協、厚労相に協議体設置を要請へ

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日本病院団体協議会(日病協)は10月24日、代表者会議後の記者会見を開き、消費税の診療報酬補填問題について、厚生労働大臣に対して協議の場の設置を求める建議を行う方針を明らかにした。社会保険医療協議会(中医協)の委員が厚労相に建議できる権限を活用する。

中医協では今月、消費税補填率の集計誤りが判明し、厚労省がデータを修正する対応を進めている。補填の仕組みそのものをめぐる制度的課題が改めて浮き彫りになっており、日病協は「議論の場の不在」を問題視した形だ。

会見で副議長の神野正博氏(全日本病院協会会長)は、厚労省が示した補填率データについて「診療報酬で消費税を補填する仕組みそのものに問題がある」と指摘。現状では消費税問題を議論する場が存在しないことを踏まえ、「厚生労働省にそういった場を設置していただくよう申し入れるべきだという話になった」と説明した。

総-2-1補てん状況の修正について

神野氏によると、日本医師会と病院団体との間では医療経営税制の議論はあるものの、国の公式な協議の場がないことが課題だという。中医協には社会保険医療協議会法第2条で、自ら厚労相に文書をもって建議できる規定があり、この権限を活用する方針で一致した。

時期については「12月以降に令和5年、6年の消費税補填率が出てくる。そのあたりで中医協の議論が一段落すると思うので、その頃ではないか」との見通しを示した。

総合入院体制加算などの課題も議論

会見ではこのほか、中医協の議論を受けた診療報酬上の課題について報告があった。

神野氏は、総合入院体制加算と急性期充実体制加算について、点数差の縮小や関係整理の議論が進む中で、人口規模の小さな医療圏の病院では救急車搬送件数や全身麻酔の手術件数といった実績要件を満たしにくい問題を指摘。「地域によっては取れない可能性が出ている。その辺の検討をしっかりしてもらいたい」と述べた。

また、総合病院の精神科病床が減少傾向にあることについて、急性期充実体制加算で精神科病棟の要件が外れたことが一因ではないかとの議論があったことを紹介。両加算の関係整理を議論する中で、精神科病床の問題もしっかり考える必要があるとの意見が出たという。

ハイケアユニット(HCU)については、ICUがある病院とない病院で入院患者の重症度が異なることから、「ICUの有無で区別して評価する方法もあるのではないか」との意見があったことを報告。同様のことがSCU(脳卒中ケアユニット)にも当てはまるとした。

敷地内薬局の位置付け明確化を要望

敷地内薬局については、規制改革の流れで設置が進む一方、診療報酬上の評価が不明確な状況を問題視。神野氏は「患者にとっては距離も近く、支払う金額も少し安くなる可能性がある」と指摘した上で、「敷地内薬局を認めろという議論ではない。そもそも敷地内薬局の立ち位置、定義付け、位置付けをしっかりしてから議論してほしい。国の立場をまず明確にしてほしい」と強調した。

このほか、後発医薬品の使用割合について数量ベースだけでなく金額ベースの議論もあってよいのではないかとの意見や、かかりつけ医機能と診療報酬のリンクについて慎重な検討を求める意見が出たことも報告された。

この記事の執筆者
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今井俊太
【POST編集部】取締役 兼 編集長

理学療法士としての現場経験を経て、医療・リハビリ分野の報道・編集に携わり、医療メディアを創業。これまでに数百人の医療従事者へのインタビューや記事執筆を行う。厚生労働省の検討会や政策資料を継続的に分析し、医療制度の変化を現場目線でわかりやすく伝える記事を多数制作。
近年は療法士専門の人材紹介・キャリア支援事業を立ち上げ、臨床現場で働く療法士の悩みや課題にも直接向き合いながら、政策・報道・現場支援の三方向から医療・リハビリ業界の発展に取り組んでいる。

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