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ホスピス型有老ホームの訪問看護「報酬適正化」を厚労省に要望──1日平均7回訪問の実態データも提示

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全国介護事業者連盟(介事連)は12月23日、令和8年度診療報酬改定に向け、集合住宅における訪問看護の報酬適正化を求める要望書を厚生労働省に提出した。いわゆる「ホスピス型有料老人ホーム」をめぐっては、一部事業者の不適切な運営が報道で問題視されており、業界団体として自浄作用を示した形だ。要望書には、入居者の88.6%が1日3回以上・平均7回の訪問を受けているという独自調査データも盛り込まれた。

厚労省保険局に要望書を手交

介事連の斉藤正行理事長と、同連盟内に設置された「集合住宅における終末期ケア在り方検討部会」の渡邉仁部会長は12月23日、厚生労働省保険局の間隆一郎局長、林修一郎医療課長宛ての要望書を林課長に手交した。

要望書は4つの論点で構成される。①ホスピス型有料老人ホームの定義の明確化、②1日あたり訪問回数の実態把握と報酬の在り方、③個別ケア・個別医療の提供体制、④報酬及び各種加算の算定要件──である。

背景には、大手2社が外部調査により不正や問題点を指摘されるなど、集合住宅での終末期ケアに対する社会的な批判の高まりがある。介事連は「業界としての健全化が求められている」との認識を示し、自ら報酬削減を含む適正化を求める異例の要望に踏み切った。

独自調査で「1日平均7回訪問」の実態が判明

要望書には、検討部会所属委員の施設で実施した独自調査の結果が添付された。2024年9月1日から12月15日までの期間に入居実績のある613名を対象に調査したところ、543名(88.6%)が1日3回以上、平均7回の訪問を受けていた。

このうち加算算定できない訪問が1日平均3回あり、喀痰吸引など短時間で終わる処置は現行制度では報酬算定の対象外となる。調査期間中に逝去した194名の平均入居日数は約82日だった。

介事連は「病床での療養費を超える1人あたりの費用が集合住宅における訪問看護で生じることは不適当」と指摘。複数の看護師による訪問加算や深夜・早朝の加算について、「一般在宅への訪問を前提とした報酬設定であり、集合住宅での対応に見合った単位数への適正化が必要」と訴えた。

「過度な締め付け」への懸念も併記

一方で要望書は、適切な運営を行う事業者への配慮も求めている。「現在の集合住宅で生活をされている利用者の生活環境を守るためにも、事業の実態把握が十分とは言い難い状況での過度な適正化とならないよう慎重な対応を検討いただきたい」との文言が盛り込まれた。

具体的な要望として、介護保険の制度を参考にした短時間算定を認める報酬体系の検討、緊急訪問看護加算における短時間評価の検討、長期的には在宅がん医療総合診療料のような包括報酬の検討──などが挙げられている。

主治医との連携についても言及があり、「状態変化に合わせて訪問していただけない主治医や、記載が少ない主治医意見書も多く見られる」として、ガイドラインの策定を求めた。

まとめ・今後の展望

介事連は今回の要望提出にあたり、厚労省との事前の意見交換を重ねてきたという。斉藤理事長は「業界内外でも賛否両論が激しく、センシティブな対応が求められる」としつつ、「大局視点、利用者本位視点での要望書にまとめた」と説明している。

令和8年度診療報酬改定の詳細は年明け以降に決定される見通し。介事連は引き続きロビー活動を進める方針だ。

▶︎集合住宅における終末期ケアの在り方を踏まえた訪問看護に関する要望


検討部会の構成(敬称略)

  • 部会長:渡邉仁(ベストリハ株式会社 代表取締役)
  • 副部会長:浜中俊哉(株式会社PlanB 代表取締役)
  • 委員:國本正雄(医療法人健康会 理事長)、鏡山俊彦(株式会社ケアギバー・ジャパン 代表取締役)、津田篤志(株式会社AT 代表取締役)、三重野真(日本ホスピスホールディングス株式会社 顧問)、薮康人(株式会社シーユーシー・ホスピス 代表取締役)、斉藤正行(株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役)
ホスピス型有老ホームの訪問看護「報酬適正化」を厚労省に要望──1日平均7回訪問の実態データも提示

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