社会保障審議会・介護保険部会は12月25日、第133回会合を開催し、次期制度改正に向けた「意見書」をとりまとめました。最大の焦点であった「利用料2割負担の対象拡大」については、2026年度の医療保険改革との整合性を図るため、結論を「第10期計画期間の開始(2027年度)の前まで」に先送りすることが決定しました。
制度改正の全容:「意見書」が示す2040年への布石
本日の部会で了承された「意見書」は、2040年の人口構造変化を見据えた制度改正の羅針盤となるものです。事務局(厚労省)より提示された最終案では、前回までの議論を踏まえた重要な修正が加えられました。
1. 利用者負担「2割」の判断時期を明記
もっとも注目を集めた「一定以上所得(2割負担)」の判断基準見直しについては、意見書において「第10期介護保険事業計画期間の開始(2027年度〜)の前までに結論を得る」と明記されました。 事務局の総務課長は、この修正について「医療保険制度における給付と負担の見直し(2026年度)や、高齢者の生活実態を踏まえる必要がある」と説明。医療と介護の双方で負担増となることへの懸念に配慮した形です。
2. 多床室の室料負担は2025年8月から先行導入
給付と負担の見直しにおいて、実施時期が分かれる点には注意が必要です。介護老人保健施設(その他型・療養型)および介護医療院(II型)の多床室における月額8,000円相当の室料負担は、他の見直しに先駆け2025年(令和7年)8月より導入されます。

3. 補足給付の見直しは2026年8月から
一方で、施設入所者の食費・居住費への補助(補足給付)については、2026年(令和8年)8月からの変更となります。
-
居住費(第3段階②): 負担限度額を月額3,000円引き上げ。
-
食費: 基準費用額の引き上げに伴い、第3段階①は30円/日、第3段階②は60円/日の負担増。
4. 過疎地での「新たな特例サービス」創設
中山間地域などサービス確保が困難な地域(人口減少地域)における提供体制も大きく変わります。
-
人員基準等の緩和: 管理者・専門職の兼務や常勤要件を緩和する「新たな特例サービス」の類型を創設。
-
包括報酬の導入: 訪問介護等において、回数ごとの出来高払いではなく、月額定額の「包括的な報酬」を選択可能にする仕組みが導入されます。

現場の声を反映した修正:ケアマネジメントと負担感
本日の議論を経てとりまとめられた意見書には、現場の実情を危惧する委員の声が色濃く反映されています。
「ケアマネジャーの業務負担」への懸念を明記
住宅型有料老人ホーム等の入居者に対するケアマネジメントに関し、中立性を確保するための「新たな相談支援の類型」や「利用者負担の導入」が検討項目に入りました。 これに対し、事務局は修正案の説明において「ケアマネジャーの業務が増加することにならないか」という現場からの強い懸念を意見書本文に追記したと報告しました。新たな負担を現場に強いることへの慎重論が、最終盤で文書に残された形です。
医療・介護の「ダブル負担」への配慮
また、現役並み所得の判断基準に関する議論においても、「高齢者に対して医療と介護の双方で負担増を求めることは影響が大きい」との意見が追記されました。 これは、日本医師会や高齢者代表の委員等が繰り返し主張してきた「生活実態への配慮」が、制度設計のブレーキ役として機能した結果といえます。
まとめ・今後の展望
本日の部会で「意見書」がとりまとめられたことにより、次期制度改正の骨格が固まりました。 2割負担の拡大こそ先送りされましたが、多床室の室料負担(2025年〜)や補足給付の縮小(2026年〜)など、利用者への影響は段階的に生じることになります。 厚生労働省は今後、この意見書に基づき介護保険法の改正案を作成し、国会への提出を目指します。リハビリテーション専門職としても、地域包括ケアの深化や新サービス類型の中でどのような役割が求められるか、引き続き注視が必要です。






