── 物価対応は「特別項目」で決着
中央社会保険医療協議会(中医協)総会は1月9日、令和8年度診療報酬改定に向けた物価高騰への対応方針と、選定療養の見直し案を了承した。リハビリテーション分野では、パブリックコメントを通じて「回数制限超過後の疾患別リハ」や「維持期・生活期リハ」、「装具レンタル」など多岐にわたる提案が現場から寄せられていたが、今回事務局が示したのは「摂食機能療法」と「リンパ浮腫複合的治療料」の2項目のみだった。これらについて委員から異論は示されず、その他の多数の要望については、個別の採否や整理方針が示されることのないまま総会は終了した。
物価対応:診療報酬に「特別項目」を新設し+0.76%で対応
昨年12月24日の大臣折衝を踏まえ、令和8・9年度における物価高騰対応(2年度平均+0.76%)の具体的な枠組みが示された。
厚生労働省は、初・再診料や入院料といった基本診療料の引き上げとは切り分け、「物価上昇に関する評価」という特別な項目を新設して対応する方針を提示。将来の経済・物価動向に応じて調整を行う余地を残す仕組みとした。
一方、令和6年度改定以降の経営環境悪化に対応する分については、次期改定で診療報酬本体に組み込む。入院料への配分は、急性期・回復期・慢性期といった医療機能に応じてメリハリをつける考え方が示された。
選定療養に追加されるリハビリは2項目のみ
選定療養の見直しでは、「医科点数表等に規定する回数を超えて受けた診療」の対象として、以下の2項目を追加する方針が示された。
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摂食機能療法
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リンパ浮腫複合的治療料
これらは、すでに選定療養の対象となっている「疾患別リハビリテーション」と同様に、算定回数制限を超えても、患者の希望があれば全額自己負担で治療を継続できる枠組みとなる。
事務局は提案理由として、「一定の患者ニーズが存在するため」と説明した。
「これまでの議論の整理」、SOFAスコア見直しに慎重論
総会では「令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)」も提示された。リハビリ関連では以下の項目が盛り込まれている。
- 休日のリハビリテーション実施体制の充実:休日であっても平日と同様のリハビリを推進する観点から、新たな評価を行う
- リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の算定要件見直し
- 摂食嚥下機能回復体制加算:言語聴覚士の専従要件や実績計算方法を見直し
- 回復期リハビリテーション病棟:高次脳機能障害患者の退院支援体制を要件に追加
特定集中治療室管理料に関しては、日本病院会副会長の太田圭洋委員が「SOFAスコアは多臓器障害の指標であり、ICUにおける集中治療が必要な患者の一部しか反映されない。見直しにより医療安全上の問題が生じる可能性がある」と慎重な検討を求めた。
松本委員も「休日リハビリについては新たな評価ではなく、既存評価の要件厳格化で対応することも十分あり得る」と指摘。効率化・適正化の観点から注視する姿勢を示した。
【注目】資料に掲載されていた多数の現場要望は議論されず
今回の総会で特筆すべき点は、会議資料には掲載されていたものの、当日の議論では一切触れられなかった多数のリハビリ関連提案の存在である。
厚生労働省が公開した「選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集の結果」には、リハビリテーション分野から以下のような要望が実際に寄せられていた。
※以下は、同資料に掲載された内容の一部である。
資料に掲載された主なリハビリ関連の提案(抜粋)
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維持期・生活期リハビリテーションの拡充(算定期限超過後の維持目的の介入を含む)
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ADL維持・向上を目的とした20分未満の短時間リハビリの選定療養化
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リハビリに使用する靴、装具、歩行補助具等のレンタル料
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精神疾患のみをもつ患者への疾患別リハ ビリテーション
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6歳未満患者へのリハビリテーション提供費用
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自動車教習所等での運転評価、ドライブシミュレーター評価
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家屋評価時の移動コストや長時間拘束に対する評価
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早朝・夕方など時間外リハビリテーションへの対価
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セラピスト2名体制でのリハビリ実施(安全確保の観点)
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BCAA などアミノ酸飲料の選定療養費
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外来でのがんリハビリテーション、心不全予防教室 など
しかし、当日の総会において事務局から具体的に提案されたのは、前述の2項目のみだった。これらのリストアップされたその他の要望について、採用・不採用の理由や整理の考え方が説明されることはなく、委員からも関連する発言はなかった。
委員の発言:事務局案に「異論なし」で了承
質疑応答において、リハビリテーション分野の選定療養に関する議論は深まらなかった。
支払側委員である松本真人氏(健康保険組合連合会)は、「事務局が示した対応方針について異論はない」と述べた。
また、診療側委員の江澤秀樹氏(日本医師会)も、対応方針全体について「異論はない」と発言している。
結果として、現場から寄せられた多くのリハビリ関連ニーズは、議論の俎上に載ることなく、事務局が整理した2項目のみが了承される形となった。
まとめ・今後の展望
今回の中医協総会では、物価高騰への対応として「物価上昇に関する評価」を新設する枠組みと、摂食機能療法およびリンパ浮腫複合的治療料を選定療養の対象に追加する方針が事実上決定した。
一方で、維持期・生活期リハビリや短時間介入、装具・環境評価など、リハビリテーション現場から寄せられていた多様な提案については、今回は具体的な検討対象とはならなかった。
今後は、了承された項目の具体的な運用ルールや算定上の取扱いが、個別改定項目(いわゆる「短冊」)の議論を通じて整理される見通し。






