目次
- 「眠れない膝OA患者」は手術が早まる?12万人規模の追跡調査から
- 睡眠と痛みの「負のスパイラル」を断ち切るには
- 不眠の認知行動療法(CBT-I)は本当に効くのか
- 明日から使える!睡眠アプローチ4つのポイント
- まとめ:膝OAリハに「睡眠」という視点を
「眠れない膝OA患者」は手術が早まる?12万人規模の追跡調査から
「先生、最近ぜんぜん眠れなくて…膝が痛くて夜中に何度も目が覚めるんです」
こんな訴え、膝OAの患者さんからよく聞きませんか?実は最近、この「眠れない」という症状が、単なる随伴症状ではなく、人工膝関節全置換術(TKA)への進行を早める独立した要因かもしれないという驚きの研究結果が報告されました。
2026年1月、英国の医学誌RMD Openに掲載されたHaberらの研究は、UK Biobankという大規模データベースを活用。膝痛のある81,958人と股関節痛のある41,737人を長期追跡し、不眠と手術(膝ならTKA、股関節ならTHA)の関係を調べました。
不眠と人工関節手術の関係を、これだけの規模で長期追跡したコホート研究はほとんど例がありません。
結果:膝では関連あり、股関節では関連なし
結果は、膝と股関節で明暗が分かれました。
【膝痛の患者さん】
「いつも眠れない(usually)」と答えた群は、「眠れないことはない(never)」群と比べて、登録から4.7年以内にTKAを受けるリスクが14%高かった(調整ハザード比1.14、95%CI 1.04-1.25)。ただし「時々眠れない(sometimes)」程度ではリスク上昇なし。
【股関節痛の患者さん】
不眠の頻度にかかわらず、人工股関節全置換術(THA)リスクとの関連は認められなかった。
つまり、「不眠が手術を早める」という関係は、膝OAでは見られたけれど、股関節OAでは見られなかったのです。
興味深いことに、膝でも4.7年を過ぎるとこの関連は消失しました。著者らは「不眠のある人が早期に手術を受けることで、残存コホートではリスク差が見えにくくなった可能性」などを考察しています。
⇆ 横にスワイプして各研究の比較を確認できます
Haber et al. 2026コホート研究
TKAリスク +14%
「いつも不眠」の膝痛患者(4.7年以内)
膝痛81,958人+股関節痛41,737人を長期追跡
ポイント:膝では関連あり、股関節では関連なし
RMD Open 2026;12:e006357
睡眠-疼痛の双方向性メタ分析
睡眠→痛みの影響大
複数のシステマティックレビューで一貫した知見
睡眠問題は慢性筋骨格系痛の発症リスク上昇と関連
ポイント:睡眠への介入が痛みの「上流」対策になりうる
Rheumatology 2023;62:2951-2962 他
McCurry et al. 2021RCT
電話CBT-Iが有効
電話でのCBT-I vs 教育のみ(12ヶ月追跡)
60歳以上のOA患者282名が参加
ポイント:電話6回で不眠改善、遠隔でも実施可能
JAMA Intern Med 2021;181:530-538
Smith et al. 2015二重盲検RCT
睡眠も痛みも改善
膝OA+不眠の100名を6ヶ月追跡
アクティブプラセボ対照の質の高い試験
ポイント:睡眠を治すと、痛みも良くなる
Arthritis Rheumatol 2015;67:1221-1233
Lin et al. 2023メタ分析
効果量 中程度
CBTの痛み・不眠への効果をRCTで検証
膝/股関節OA患者が対象
ポイント:効果は治療後も持続する
Front Med 2022;9:1083095
なぜ膝と股関節で違いが出たのか?
この違いは何を意味するのでしょうか。著者らはいくつかの仮説を挙げています。






