生活保護「医療扶助」見直しの議論が本格化 訪問看護の適正化が論点に

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厚生労働省は12日、第6回「医療扶助・健康管理支援等に関する検討会」を開きました。生活保護を受ける人の医療(医療扶助)について、医薬品の適正使用や適正受診をどう進めるかを議論する場です。この日は、給付事務の簡素化、残薬や重複投薬への対応とあわせて、近年に1件当たりの請求額が大幅に増えている訪問看護の適正化が論点として取り上げられました。

検討会は何を議論しているのか

医療扶助は、生活保護を受ける人の医療費を公費でまかなう仕組みです。診療報酬や診療方針は医療保険とほぼ共通ですが、患者側に自己負担がない、福祉事務所が受診する医療機関を選定するなど、いくつかの違いがあります。

検討会は、昨年12月にまとめた「中間的な整理」で「引き続き検討」とされた項目を順次深めています。当面の柱は、給付事務のあり方、医薬品の適正使用、適正受診に向けた取り組みの3点で、これにデジタル化・データ活用が加わります。事務局(保護課)は、適正な運用の確保と、医療関係者・行政の業務負担の軽減を一体で考える姿勢を示しました。

訪問看護の「適正化」が新たな論点に

新たな取り組みの一つに、医療扶助の訪問看護への対応が挙がりました。資料は、医療扶助の訪問看護について「1件当たり請求額が大幅に増加している」と指摘。まず国がNDB(レセプト情報データベース)で利用者の状態像や訪問頻度などの実態を把握・分析したうえで、指導権限を持つ都道府県等に対し、個別指導の対象を選ぶ際の参考資料としてレセプトの分析結果を提供する方針です。事務局によると、こうした分析結果の提供には昨年度末から訪問看護が追加され、個別指導の留意点をまとめた事務連絡も発出されています。

訪問看護をめぐっては、令和8年度(2026年度)の診療報酬改定でも、同一建物に住む利用者への評価の見直しや、1日当たりで算定する包括型の報酬の新設など、適正化に向けた内容が盛り込まれています。医療扶助でも同じ方向の対応が議論される形です。

日本看護協会の松本珠実構成員は、適正化の必要性を認めたうえで「必要な方へ必要なケアが確実に提供されるよう配慮してほしい」「適正化でどのような影響が出たのか、影響面も十分に考慮して慎重に検討してほしい」と求めました。訪問看護ステーションでリハビリを担うPT・OT・STが訪問する場合も、こうした実態把握や個別指導の対象に含まれ得ます。利用者の状態像や訪問頻度の分析が進めば、訪問でのリハビリ提供のあり方にも関わってくる論点です。

医薬品の適正使用——残薬・重複投薬・向精神薬

医薬品の適正使用では、残薬への対応、重複・多剤投薬への対応、向精神薬の不正入手が疑われるケースへの対応が議論されました。

残薬については、ケースワーカーの家庭訪問や、訪問看護・訪問介護の従事者が訪問時に残薬を確認した人を、薬剤師による服薬状況の確認や処方医への疑義照会などにつなぐ優先順位が高いとされています。国は令和8年中をめどに、残薬を確認した場合の対応方法を整理・周知する予定です。なお、検討会で示された残薬に関する意識調査は中医協の資料で、生活保護受給者を対象としたものではない点には注意が必要です。

重複投薬への対応では、電子処方箋管理サービスで重複投薬等のチェックが可能になっていることが紹介されました。昨年末には、薬剤情報の閲覧同意が得られない場合などに調剤を行わなくても関係法令に触れない旨を明確化する通知も発出されています。後発医薬品については、平成30年の生活保護法改正で使用が原則化され、令和6年6月審査分の使用割合は89.7%(前年比1.5ポイント増)と、原則化前の平成30年から12.1ポイント増えています。

日本薬剤師会の村杉紀明構成員は、福祉事務所のレセプト活用に差があることを挙げ、医薬品の専門知識が十分でない場合は地域の医療専門職を活用する解決策を継続的に周知してほしいと要望。向精神薬の不正入手が疑われるケースでは、薬局が保険者に報告しても対応がない事例や、医師会・警察・保健所など、どこに情報共有すべきか迷うケースがあるとして、検討会で一定の対応方法を示すよう求めました。事務局は、現場ごとの判断ではなく全国的な基本的な流れを整理する方向で検討すると応じています。

「要否意見書」の形骸化、給付事務の見直しへ

給付事務では、医療要否意見書の扱いが論点になりました。本来は受診前に医療機関が記載して福祉事務所に提出し、嘱託医の確認を経て医療扶助を決定する流れですが、実態として受診前に提示されるケースは少数で、事務負担も大きく、手続きが形骸化しているのではないかとの声が寄せられています。

福祉事務所で嘱託医を務めた経験がある神戸大学の西岡構成員は、「業務の削減・簡素化は、誰の業務を減らすのかを丁寧に分けて検討すべき」と指摘。意見書1通の発行にはケースワーカー、査察指導員、嘱託医、医療機関の医師など多くの関係者が関わると説明したうえで、全員に網羅的に確認するのではなく、レセプトを踏まえて重点的に確認する対象者を基準で絞り込む仕組みを提案しました。あわせて、1人が複数の医療機関を受診している実態が紙の意見書1枚ずつでは見えにくいとして、個人に着目してその人の全ての医療機関分の要否がまとめて把握できる、デジタルを含めた仕組みづくりを求めました。

自己負担をめぐる議論と「適正受診」

適正受診では、かかりつけ医を持つなど「上手な医療のかかり方」の普及・推進が挙げられました。現状では、紹介状なしで大病院を受診した際の定額負担について、生活保護受給者を含む公費負担医療の受給者は対象から除外されています。また、今国会で成立した健康保険法等改正で、市販薬に似たOTC類似薬の薬剤費の4分の1を別途負担とする仕組みが創設されました。事務局は、法案審議で生活保護受給者はこの負担の対象外とする旨が答弁されていると説明しました。

一橋大学の小塩構成員は、生活保護では選定療養が原則対象外とされる一方で、大病院の定額負担が例外的に免除されている点について、定額負担なしで大病院を受診している人がどの程度いるのか、エビデンスを把握したうえでルールを考えるべきだと述べました。

これに対し西岡構成員は、自己負担を求める議論は「自分の健康ニーズを十分に判断して行動できる強い個人」を前提にしているように見えると指摘。そうした行動が難しい人も多い中で受診控えが生じうるとして、影響のアセスメントが重要だと述べました。千葉市の横田構成員は、制度の公平性・信頼性の観点から、医療保険を受ける人と医療扶助を受ける人の受診行動に差がないかを検証していく必要があると求めています。

デジタル化と介護扶助の業務簡素化

後半の議題では、オンライン資格確認の推進に向けて、福祉事務所の生活保護システムの課題が報告されました。あわせて事務局は、介護扶助の業務簡素化を提案。現在はケアマネジャーに毎月ケアプランの写しを求め、福祉事務所が毎月、紙の介護券を介護事業所に郵送していますが、ケアプランは新規・内容変更時のみ、介護券は新規提供時のみとする案が示されました。福祉事務所の発行・郵送コストや事業所の管理コストを大きく減らせるとしています。

横田構成員は、自治体がシステム標準化の途上にあるとして、見直しは標準化のタイミングに合わせて1回で済むよう配慮を求めました。介護扶助の運用改善案について、座長は「おおむね了承いただいた」と取りまとめました。

今後の予定

前半の医薬品の適正使用・適正受診については、事務局が次回さらに議論を深められるよう、本日の意見の整理と各種データ・補足資料の準備を進めます。実態把握では、今年度の厚生労働科学研究でNDBデータを用いた分析が進められており、随時、検討会に共有される予定です。事務局は、次回(第7回)の日程・会場・開催方法は追って連絡するとしています。

出典:第6回 医療扶助・健康管理支援等に関する検討会(令和8年6月12日開催)資料1「医薬品の適正使用・適正受診等」、資料2「医療扶助等におけるデジタル化・データ活用」、当日議事

生活保護「医療扶助」見直しの議論が本格化 訪問看護の適正化が論点に

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