前回の内容:ガンリハにおけるエビデンス
がんリハビリテーション領域のEBM
学生インタビュアー:近年言われてきているEBM(根拠に基づいた医療)という言葉に対して、がんのリハビリテーションはどのような状況なのでしょうか。
國澤先生:もちろんがんの領域でもはっきりしていない部分はありますけど、PTの領域としても経験による医療となってしまっている部分が多いですよね。EBMの理解の面でも疑問点が少しあります。
EBMの正しい意味をきちんと理解できていればいいんですが、EBMの中にある科学的根拠の部分だけを論じている場合も見受けられることがあります。
本来EBMを提唱してきた人たちは、科学的根拠だけでなく、患者さんの価値観や意向、現場の環境や医療者の経験などを総合的に勘案して医療を提供すべきと説明しているんですよね。
例えばこの疾患にこの道具を用いて治療することがいいと述べていても、施設によってはそこにハード面としてしっかりと環境がそろっていなければできませんよね。
他に例えると、手術手技としてAという治療法よりBという治療法の方が良かったという報告があったとしても、何十年もAという治療法を行ってきた医師が突然今日はBにするとしたら、それは失敗するリスクも高まりますよね。その医師が治療を行うの場合はAという治療法の方が治療成績が良いかもしれませんよね。
なので、一般的なガイドライン等で提唱されているものと、その場の環境と、本人が何を望んでいるのかをしっかりと吟味した上で治療を選択し行っていくことが本当の根拠に基づいた医療ということだと思います。
狭義の意味だけで話をしている人がまだまだいるんじゃないかなと思いますね。私は同じくらい患者さんの価値観や環境が大事だと思います。
環境に置かれた状態での根拠
環境に関してはそれこそ専門職の特性をどう活かせるかですよね。根拠のある医療として日本で行われている医療が発展途上国でできるかと言っても、それは環境の問題として不可能であったり、その国の事情や地域の事情も影響してきますよね。
東京と僻地でも同じことが考えられると思うんです。東京でできても僻地ではできない医療って当然あると思うんですけれども、だからといって僻地はEBMではないのかと言ったらまたそれは違う話だと思うんですね。
なので、その環境に置かれた状態で根拠に基づいて治療を行うのが本当のEBMなんだと思っています。
次回に続く・・
前回の内容:ガンリハにおけるエビデンス
國澤 洋介先生経歴
早稲田医療技術専門学校(現人間総合科学大学)の第1期生として卒業埼玉県内の一般病院に就職後、4年半務め、埼玉医科大学総合医療センターに異動。
1年半前に埼玉医科大学の教員として働き始め、現在は週1回程度で埼玉医科大学総合医療センターにも勤務。
授業は1年生に対する理学療法概論や統計学の講義、1年次の体験実習を担当。
また、博士課程では脊髄損傷に関するテーマで研究を行っていたこともあり、脊髄損傷の講義、職業倫理職場管理学という講義を担当。