大学病院に就職した理由
POSTインタビュアー:バイトばかりしていたみたいですけど、最初に就職したのは大学病院ですよね?
榊原さん:はい。そうですね。
インタビュアー:じゃあ学校の成績は良かったのですか?
榊原さん:どうなんですかね?あまり成績の善し悪しも気にしてなかったですから(笑)でも卒業の時に愛知県の優秀学生がもらえる「愛知県知事賞」をもらえたので良かったんだと思います。
POSTインタビュアー:大学病院へ就職する経緯は?
榊原さん:ある日学校の先生に呼ばれて、三重大学病院の空きがでたから一度見学だけでも行ってこないかって言われたんですね。それで、僕も見学のつもりだったんですけど、行ってみたら就職試験みたいになってて、そのまま就職するための書類にサインをして、決定。みたいな。
「あれ?」って感じでしたね。(笑)でも、これも何かの縁だと思って就職しましたね。
インタビュアー:そんなことあるんですね。いいか悪いかは別としても、すごいですね。(笑)
榊原さん:もちろん事前に学校の先生が推薦してくれてたってことでスムーズに決まったのだと思いますが、ビックリですよね(笑)
必死に勉強するしかなかった。
POSTインタビュアー:実際に就職してみて、理学療法として働いた2年はどうだったんですか?
榊原さん:本当にいい経験でした。うちの病院は大学病院ってこともあって難病の方が多かったんですよね。しかも、PTが4人しかいなかったから就職してすぐの5月にはもう担当が20名くらいいましたね。だから、本当に必死に勉強しましたね。
インタビュアー:その状況だと、するしかないですね。とうか一生勉強ですよね。
榊原さん:周りの先輩達も凄く勉強していたので、ついていくのに必死でした。仕事終わってからはもちろん、朝も6時には起きて勉強していましたよ。
それを続けていくと、先輩達のようにめちゃくちゃ頑張っているセラピストと、こういっちゃ悪いですがあまりがんばっていないセラピストがいることも見えてきました。
今は医療現場から離れちゃっていて少しわからないんですが、診療報酬はどんなに頑張っても、全然頑張らなくても同じ対価しかもらえないってのはやっぱりおかしいですよね。
もちろんそれによって一番被害を受けるのは患者さんです。でも患者さんをいくらリハビリして結果を出して喜ばしても、結局診療報酬上同じという現状がある。
当時は目の前の患者さんに必死で、そこまで考える余裕はなかったんですけど、今一歩さがってみて状況をみるとそれをすごく感じますね。もちろんそういう国民皆保険という守られた仕組みがあるのでポジティブな面もネガティブな面もあるわけなんですけどね。
POSTインタビュアー:診療報酬体型に守られている中で、本気の人とそうじゃない人がいるのは結構どこの施設・病院とかでもあると思います。
榊原さん:実際に、今PTじゃない仕事で働いています。それで一回会社をつくった経験もあるからかもしれませんが、例えば一つの依頼があったとして、「よし、もうこれで依頼主にだせるレベルだ」と自分が思うレベルでも、本当に時間ギリギリまで見直す。
少しでもクオリティーを上げて依頼主に渡す。そこまでしないと次の仕事がもらえないかもしれない。そう思っているんです。だから、常に最善をつくすようにしています。
そう考えるとリハビリテーションの世界はある種特殊なのかなとも思いますね。ただ、振り返ってみるとPT時代に自分がそこまでの意識でできていたかはわかりません。でも最善をつくすことは誰でもできますからね。
インタビュアー:それがプロですよね。
榊原さん:そう思います。
映画製作を考えたきっかけ
POSTインタビュアー:ところで、就職してから映画監督にどのタイミングで気持ちが変わったんですか?
榊原さん:PTとして就職したからには、まずは経験をつもうと思ったんです。それでとりあえず1年はやろうと。そんな中で、担当した骨肉腫の患者さんがいらっしゃいました。
当時僕は21歳だったんですけど、彼女も同じ21歳。それで、担当になって電子カルテとかで色々データをみるじゃないですか。ある時から、CT画像に肺にぽつ、ぽつと白いものが見えてきて。
「肺がんじゃん」ってなったんですね。そのときの気持ちは今でも鮮明に覚えています。それで、彼女はそれをたぶん知らずに必死にリハビリテーションを頑張っていたんです。
その姿を見た時に、「こういう頑張っている人がなんでむくわれないんだ。こういう頑張っている人を少しでも世の中に伝えなきゃ」と思ったんです。ある種使命感みたいな感じかもしれません。
インタビュアー:それですぐに映画監督になろうと思った?
榊原さん:いや、経験を積むと決めた以上は1年働いただけではわからないと思ったので、とりあえずもう1年続けて経験を積もうと思いました。このころは映画監督になるというより、こういった人の映像をとりたいという気持ちのほうが強くなっていましたね。
だから1年目が終わるときには、先ほど言ったような、やる気があまりない療法士のモチベーションを「ガン!!」と底上げる仕組みをどうにかしなきゃと思う気持ちと、今話したような人を「世の中に伝えなきゃ!」という気持ちがありましたね。
POSTインタビュアー:かっこいい。
榊原さん:ちなみにこの間、ショートショートフィルムフェスティバル(補足:正式名称「Short Short Film Festival & Asia 2014」)にノミネートされた有村架純さん主演の映画(補足:映画タイトルは「平穏な日々、奇蹟の陽」)はこの方の影響を受けて作品作りをしました。
闘病生活みたいなことを主軸として扱っているわけではないのですが、作品作りの中では常に意識をしていましたね。(補足:この映画主演女優の有村架純はベストアクトレスアワードを受賞)
【目次】
第一回:映画監督になった理学療法士
第二回:映画製作を考えたきっかけ
【栞-shiori-】公式HPオープン!主演:三浦貴大(理学療法士役)監督:榊原有佑(元理学療法士)
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映画ページ:
栞 -shiori-
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◆公式HP
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元理学療法士の榊原監督による、理学療法士のリアルな葛藤を描いた異色作、映画「栞」クランクアップ
具体的なストーリーや主要キャストのコメントをこちらからご覧いただけます。
榊原有佑さん経歴
2005年 あいち福祉医療専門学校 理学療法学科 入学(3年間) 2008年 三重大学医学部附属病院 理学療法士として入職(2年間勤務)
2010年 上京し映像学校で映像の基礎を学ぶ(1年)
2011年 映像制作会社に勤務(1年) 2012年 同期と映像制作会社を起業(1年)
2013年 映画監督としてデビューする 【平穏な日々、奇蹟の陽:予告編】
2014年 (現在:数本の映画企画の脚本執筆中)
<所属・役職・受賞歴>
株式会社アドウェイズ・ピクチャーズ所属
映画監督・CMディレクター 2013年「平穏な日々、奇蹟の陽」(主演:有村架純)で映画監督デビュー 同作品がアジア最大の国際映画祭「ShortShrotFilmFestival & Asia」に入賞。ベストアクトレスアワード受賞。