4日診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会が開催され看護師をはじめ理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など医療従事者に対する処遇改善の方針として具体的な議論が進められています。2024年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃金アップを重点的に取り上げ、病院と診療所に対して異なるアプローチを採用することが検討されています。2024年度にベア(ベースアップ)+2.5%、2025年度にベア+2.0%の賃上げ(診療報酬での2.3%の賃上げ加え、賃上げ促進税制の活」や従前から各医療機関で行われてきている取り組みを組み合わせる)を予定しています。
前回、看護職員処遇改善評価料のように複雑な難しいとの意見に対し、「実質の事務負担は変わらない」とのことから、検討の焦点は「過不足なく行う」このに焦点が挙げられ検討が進んでいます。
診療所の対応方針:シンプルな対応
一方、診療所に対しては、初診料や再診料などの一律の上乗せを行うシンプルな方法が検討されています。多くの無床クリニックが小規模であるため、点数の一律引き上げによりすべての診療所で賃上げに必要な財源の確保を可能とする方針です。以下のシミュレーションを確認すると、シンプルな方法で一律賃上げを行うと2.3%の賃上げに必要な財源に対して多くもらいすぎる診療所や逆に少なすぎるクリニックが出てきます。過不足なく賃上げを行うためには精密な制度設計が必要になる反面、事務負担に耐えられない診療所が出てくることも予想されます。現状では、一律引き上げによるシンプルな制度設計の方が現実的でしょう。
病院の対応方針:精緻な調整への転換
病院に対しては、150種類以上の詳細な診療報酬体系を用いて、施設ごとに必要な賃上げ額を計算し、それに応じた賃上げを行う方針です。基本的な診療報酬の引き上げに加えて、入院料の追加引き上げを行うことで、賃上げの過不足を最小限に抑えることが可能になる見込みです。今回は2つのシミュレーション(5区分と150区分)が示され5区分では2.3%の賃上げが可能となる病院が多い一方で、必要以上(4%以上)に賃上げされる病院と必要以下(1.0%以下)の賃上げ病院が少なからず生じる結果となりました。一方150区分では90%以上の病院で「2.3〜2.4%の賃上げ」が行えることがわかりました。この方針には、病院の事務負担を軽減するための計算シートの提供も予定されおり、どちらも事務負担に変化はないとしています。
今後の課題
訪問看護ステーションに対しても、クリニックと同様にシンプルな対応が現実的とされていますが、過不足が大きな事業所への対応策は今後の重要な論点です。また、訪問看護に関しては、介護報酬による対応も検討されており、社会保障審議会・介護給付費分科会での検討が進められる予定です。
2024年度診療報酬改定は、医療従事者の処遇改善という重要な目標を掲げていますが、その実施には細かな調整が必要です。病院とクリニックの違いを踏まえた対応策は、賃上げの公平性と効率性を確保するために不可欠です。今後の詳細な検討が進む中で、これらの課題の解決策が模索されることが期待されます。
▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00239.html
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