リハビリ業界は可能性に満ちている
インタビュアー:前回の「医学的リハビリテーションと社会的リハビリテーション」のお話はとても興味深かったです。
−−−先生は、今後はどのようなことを考えてらっしゃいますか?
達川先生:
今までは要支援とか軽度の前期高齢者に向けてやっていたのですが、これからは後期高齢者や認知症の方、中重度の方が増えてくると思うので、そういう方々の対応やサポートをどういう風にするかっていうことを考えています。予防ということに対して、低コストで対応する一方で、中重度の方々に対してどう対応していくかを考えています。地域の中で強みを補完し合えるようなグループを作っていく必要があるかなと思います。あとは保険だけにこだわらずどうやったら地域の健康度をあげられるかっていう手段を考えていこうと思っています。インタビュアー:これからのこの業界に対して不安に思っている人が多いですが?
達川先生:私はリハビリ業界がこれほど可能性に満ちている時代はないと思っています。リハビリテーションは「再び適合する」という意味だから、今現在、高齢化や不景気で揺れている日本自体がリハビリテーションを必要としていると思います。今までは理学療法ができますよって全面的に出していましたが、これからは、色々な分野の背景になれるかが必要なのかなと思います。これからはそのパートナーを見つけることが必要ではないですかね。
インタビュアー:今の臨床に出る前での問題点っていうのはありますか?
達川先生:時代に即してないと思いますよね。例えばほとんどの実習地が病院だったりして、コミュニケーションや社会性という部分でのレクチャーがされていない気がします。
インタビュアー:需要が少ないというのもありますよね。
達川先生:教員も社会性があるかどうかですけどね。実習の中で、基準が曖昧ですよ。学生のレベルだったらこういうツールを使って、ここまでできたらいいっていうものが曖昧なので、学生も混乱していますよね。今は多様化しているから、なお混乱しやすいのかなと思います。
インタビュアー:先生がバイザーをされていて、実習で苦労をしている子を見て、学生自体に問題があるんじゃないかなって思うときはありましたか?
達川先生:私は学生のほとんどは教えると出来ると思っています。しかし、ちゃんと教えられてなかったり、やり方を勘違いして覚えてしまったりしている子が多いと思います。例えば、コミュニケーションが苦手っていいますけど、「コミュニケーションってどういう意味なの?」と聞くと答えられない子が多いですよね。それって漠然としていて、本当に苦手であれば具体的に何が苦手かわかると思います。苦手意識はあるのだろうけど、それに根拠がない気がします。だから、私の施設では、コミュニケーションが苦手という人がいれば、ちゃんと丁寧に挨拶をするところから教えます。
インタビュアー:それは大事だなって思います。しかし、それってできて当たり前って思ってしまう自分もいます。
達川先生:今の若い人達って、自分の年代以外の人、特に大人の人と話す機会が減ってきていると思います。SNSでも同世代の人とだけ友達承認したりとか、そういうことから、実習で目上の人や先輩とうまく話せないんじゃないのかなって思います。
世の中が揺れているので、ニュートラルということが大事
インタビュアー:それは彼らの社会的問題という事ですね?
達川先生:それは彼れらの問題ではなくて、世代をこえた交流が乏しくなっていますよね。
インタビュアー:そういうことをもっと混ぜていけばいいってことですね。
達川先生:最初からそういう経験していれば、そこまでコミュニケーションが苦てだと、あまり言わないと思いますよね。
インタビュアー:逆に損していますね。私はアルバイトをしていて、お客さんで50歳くらいの方が一緒に飲みに行くといろいろ教えてくれてとおいしいもの食べさせてもらえました。
達川先生:年長の方々にかわいがられるという経験がないのかもしれないですね。それに、年長の方々の割合が高いのだから、若い子たちだけのコミュニティだととても狭くなっちゃいますよね。 今の若い人たちがそこに関心を持つことが大事かなって思います。セミナーの団体でも同年代で集まって安心しているっていう部分もある気がします。
インタビュアー:以前のセミナーも、先輩が後輩を教えたりとかご飯に連れて行ったりとかが多かったですもんね。
達川先生:セミナーをするにあたって、1から技術を作ったのならお金をとってもいいと思うのですが、その技術も先輩からもらったものだと思います。その技術でお金をもらうのはどうなのかなって思います。私達も当時は先輩方から教わりましたし、それでお金をもらおうなんて発想がなかったですよね。
インタビュアー:いつからですか?
達川先生:最近だとは思います。 セミナー団体が悪いってわけじゃないけど、セミナー講師の質とか担保がないと、若い子たちは全部真に受けちゃいますからね。若い人たちが勉強に興味を持って集まるという事は良いと思います。幕末の塾みたいな一種のコミュニティとしては良いと思うけど、少しお金を取りすぎる部分があるのではないかと思います。
インタビュアー:給料も下がってきていますしね。
達川先生:給料が安いからそれを補填するために自分の技術を切り売りするというのは、ちょっと違うのではないのかなって思います。本来は、この分野をみんなに広めたいんだけど、関心が低いっていうときに、マーケティングが必要になってくると思います。集客やお金を稼ぐためのマーケティングってなると意味合いが全く違ってきますからね。社会にとって本当に大切なことを伝えるために動いてるセミナーは素晴らしいと思います。
インタビュアー:間違ったマーケティングをしている人は多いですね。
達川先生:そうですね。ビジネスとしては正解かもしれないですけど、大義ではないですよね。そこに先輩たちが苦労してエビデンスを出したものをのっけてっていうのはちょっとね…
インタビュアー:こうやってインタビューしていると、ニュートラルな人が多いなって感じます。
達川先生:世の中が揺れている中で、どの考え方が日本を支えるかっていうのがわからない状態なので、そう意味でニュートラルという事は大事にしています。どれも否定をしないっていうね。私は自分も周りも楽しくなればいいと思っています。また、周りから「ダメだ」と言われている人が世の中のためになっている事を見ているとスカッとします。
最終回、「先生にとってプロフェッショナルとは?」来週配信です。
(インタビュー:輪違 記事編集:蜷川・林)
達川 仁路先生経歴
【資格】
理学療法士、ケアマネジャー
【学歴】
福井医療技術専門学校卒業
【職歴】
平成4年4月より市立敦賀病院リハビリテーション科勤務。
平成17年5月より有限会社リハぷらす設立、現代表取締役
二州介護支援員連絡会会長