看護師が運動を指導する
Vol.1のとおり、ウズベキスタンでは理学療法やリハビリテーション教育がされておらず、現地の医療従事者たちにとっていわば未知の分野ともいえるでしょう。
調査によると、理学療法士の資格制度はなくとも、インストラクターと呼ばれる専門家が看護師へ指導し、その教育方法のほとんどをOJT(On the Job Training)で行っているようです。
主に活動する部門ではパラフィンや電気治療を使った物理療法、徒手的マッサージ、そして運動療法が行われており、現地のそれは“治療的体操”と訳され、動的に行われるものがほとんどです。
実習生には、’’体験’’を通じて実感してもらう
わたしの配属先では2~3ヶ月に一度の頻度で、看護実習生たちを受け入れており、期間は短いもので1~2週間・長くて2ヶ月程度、実習スタイルは見学と手技自体の指導です。
わたしの理学療法場面を見学に来ることもあり、その都度、日本が抱える高齢化・少子化、それに起因する社会問題や医療の現状を話すようにしています。
臨床経験のない彼女たちに対し、リハビリテーション医学を伝えても理解し難いでしょうから、理学療法については体験を交え、学校の授業や教科書からは得られない”実感”を与えられるよう関わっています。
ここは日本の臨床実習でも同じことが言えると思います。
養成校で学ぶ知識は理想論に近く、実際には教科書どおりに進まないことも往々にしてあります。
学生と関わる際にはまずその事実を伝え、学校と臨床の乖離をできる限りなくしていく必要があり、その部分こそ臨床家としての責任を持つべきところと思います。
「花の美しさはない、美しい花があるだけだ」
「花の美しさはない、美しい花があるだけだ」という言葉があります。
眼前の事象に対し過剰な意味づけをするのではなく、あるままの姿を提示し、事後の解釈は当人たちに任せるべきでしょう。
そうすることで指導者の押し付けではない、学生自らの感性と観察眼を養うことができるのではないでしょうか。
看護実習生たちはとても素直です。医療従事者としての知識や技術が未熟な分、基本的なことから応用的な手技まで興味をもって質問してくれます。
協力隊活動をする上では文化の相違を受け入れ、その中で関われる部分を見つけていくことが大切になります。
ですから日本の医療にとどまらず、文化や歴史・お互いの家族や生活について話し合うことから始めるようにしています。
実習生を介して同僚たちともディスカッションができ、重い空気感になりがちな医療現場の良い潤滑剤に実習生がなっているように思います。
*目次
【Vol.1】ウズベキスタンにおけるリハビリテーションの現状
【Vol.2】ウズベキスタンにおけるリハビリテーション教育
【Vol.3】ウズベキスタンの住環境と地域リハビリテーション
【Vol.4】ウズベキスタンで理学療法士をしている理由