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【林典雄先生 | 理学療法士】触診技術は妥協しないで練習すべき

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将来が不安な若手療法士は、自信がないから不安

今の若手の方が、将来の自分の仕事に対して不安に思っているのかどうかはよくわかりませんが、おそらく、不安があるとすれば自分が行っている理学療法に自信がないから不安なんだと思います。

 

例えば現在の学生が理学療法関係の大学に入ってくる場合、我々の時代と違って今の理学療法士の仕事自体がわかりやすくなってきていますよね。病院に限らずクリニックにも、理学療法士が当たり前のようにいる時代ですね。それをみて、それなりに自分で調べて、患者さんを診る仕事がしたいと思って、入学してくるわけです。

 

私の偏見かもしれませんが、理学療法士になる人たちってどこかで、人に「ありがとう」っていってもらいたい人たちが多分ほとんどだと思うんです。人に感謝してもらいたいっていうのは、ある意味では自分自身を美化していて、言葉は違うかもしれないけど、かっこ良くなりたいと思っているわけですよ。

 

そこには少なからずプライドがあって、患者さんが笑顔で治っている瞬間を想像しているわけです。実際私もそうだったのだと思います。

 

しかしながら、最近では病院であつかう疾患構造が徐々に変化してきています。基本的には高齢者が大多数で高齢者の疾患(老化現象によるもの)は、元通り治るというものは非常に少ないですよね、老化と戦っている、老化とうまく付き合わないといけないとでも言いますか・・・。

 

それに伴って我々理学療法士の対応の仕方もずいぶん変わりましたよね、システム的になって期間が限定されて。そうなってくると、最初に術直後に理学療法を行っていた理学療法士は、その患者さんが最終的にどうなっているのか、しっかりと改善したのかどうか?が見えなくなってますよね。そんな現状は、僕なら面白くないですよね(笑)。

 

昔は、それなりに入院期間もありましたし、患者さんを継続してフォローできる時間も多かったので、自分がどれだけその患者さんに貢献したかがわかるんですよね。これが、楽しかったというか、仕事しているなと感じられる瞬間でした。

 

でも今は、急性期で担当していた患者さんは、次々に違う機関に送られているわけですから、その後の状態がフォローできないと思うと、ちょっと面白くなくなってしまうのではないでしょうか。その分、患者がよくなることに理学療法のおもしろさを感じている人にとっては、どのような施設に勤めるかによって、ずいぶん仕事に対する思いが違うのだと思います。

 

理学療法士の職域は、昔よりもずいぶん広がってきていますし、「どのように自分の人生を創造してゆくか?」を考えると、地域の最前線で患者と接するクリニックの存在価値がどんどん高まってくると私自身思っています。

 

他人任せの勉強

どうすれば患者を良くできるのか?について考え、悩むことが普通であることが多分わかっていない。僕たちも若い頃は、今から思えば情けない理学療法をやってたな~って思いますけども、それでも、「僕が触った以上は今より良くしよう」というハートは持っていたように思います。

 

でも、どうすればそのすべを身につけられるかは学校では教えられていないですし、そんな魔法の杖みたいなものはありませんよね。ある意味、大学教育が主流になった今でも、その内容自体は昔から何も変わっていないですよ。

 

やっぱり今も昔も、解剖学、生理学、運動学、の重要性をどれだけ認識しながら仕事をしているか、それを周りの先輩がどのくらい後輩たちにしっかりと伝承しているかが非常に大切なところだと思います。卒後の教育システムも大事だとは思うのですけども、結局最後は、自分で、継続して、やれたかやれなかったしかないのだと思います。でも、そこらへんが他人任せになってしまっているのではないかと感じていますね。

 

人の身体を診るときに重要な構造と機能を正しく知っているか?、患者さんを治すのに必要な構造と機能について十分に知っているか?、これは診療を行う人の基準であると考えています。ここら辺は理学療法士としての基礎にあたる部分であって、結局まだまだ不十分なところなのだろうと思います。

 

もちろんそれらの構造が理解できたからって何でも治せるようになるっていうことではないですが、明らかに間違ったこともしないと思いますよ。理学療法士は、メスを持って切開して悪い部分を診たり取り除いたりすることは出来ませんから、いかに皮膚の上から「触ってそれらを診る」すなわち触診技術は妥協しないで練習すべきと思います。

 

研修会などで、「どんな治療すれば良いですか?」って聞かれますけど、その前に「どこがどう悪いんですか?」って思いますね。そうなると、しっかりした知識の中で患者を評価し、解剖学、生理学、運動学で解釈できれば、治療の方針は自然に出てくるのではないでしょうか?もちろん。理学療法士だからこそできる技術を駆使して。

林典雄

 セミナーに出て出来るようになる訳ではない。己の無力さを知るだけ

 最近では、全国の理学療法士会の研修部の方や起業している方々人たちが企画するにセミナーに呼んでもらって講演することが多くなりましたけども、セミナーに出たからといって治せるようになる訳ではないですからね。発見もあるでしょうけど、多くは自分の無力さを知るだけですからね。何となくセミナーに出て満足して、翌日から同じことをしている、これは悲しいですね。

 

やっぱり、自分で努力して、「患者さんを良くしよう」って気がなきゃダメでしょうし、せっかくセミナーで頭は良くなったのですから、その分技術も変化しないと嘘でしょうし、私はScienceとSkillは常に共存すべきだと思います。それは常にアップデートされて、今でも勉強して、新しいことがわかるとワクワクして・・・ですから、去年の僕の技術が今年はさらに洗練されたり、簡単になったりしていくわけです。

 

わからないことがいっぱいなんですよね。でも嫌じゃないんですよ。

 

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林典雄先生経歴

昭和61年:国立療養所東名古屋病院附属リハビリテーション学院理学療法学科卒業

昭和61年4月~:国立津病院整形外科機能訓練室

平成3年4月~:学校法人誠広学園平成医療専門学院理学療法学科専任教員

平成 13 年4月~:吉田整形外科病院・五ヶ丘整形外科運動療法センター

平成 19 年1月~:中部学院大学リハビリテーション学部開設に伴い理学療法学科教授として就任

 

【所属学会】

日本理学療法士学会 ・日本肩関節学会 ・日本腰痛学会 ・日本靴医学会

日本義肢装具学会 ・日本足の外科学会 ・日本整形外科超音波研究会

整形外科リハビリテーション学会(代表理事)

 

【業績(著書:単著 【業績(著書:単著)】

運動療法のための機能解剖学的触診技術(上肢):メジカルビュー

運動療法のための機能解剖学的触診技術(下肢・体幹):メジカルビュー

「運動療法のための機能解剖学的触診技術」2冊については、韓国語ならびに中国語に 翻訳され韓国、台湾。

 

【業績(責任編集・著 【業績(責任編集・著・)】

関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション(上肢):メジカルビュー社

関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション(下肢・体幹):メジカルビュー社

「この2冊も先頃、台湾にて中国語翻訳が決定しました。」

 

【業績(共著)】

理学療法ハンドブック「体表解剖」を執筆:協同医書 ・理学療法士ブルーノート「解剖学」を執筆:メジカルビュー社

理学療法士・作業療法士グリーンノート基礎編「解剖学」を執筆:メジカルビュー社

理学療法士のための実践ケーススタティー「大腿骨頸部骨折」を執筆:中外医学社

理学療法士・作業療法士ポケット・レビュー帳 基礎編「解剖学」を執筆:メジカルビュー社

実践肩のこり・痛みの診かた治しかた「理学療法士から診た肩のこり・痛みのメカニズム」 を執筆:全日本病院出版会

スポーツ傷害の理学療法「スポーツ傷害の機能解剖と評価」を執筆:三輪書店

復帰を目指すスポーツ整形外科「伸展型腰痛」「成長期のスポーツ障害」を執筆:メジカルビュー


【バックナンバー】
第2回:整形外科医はPTを必要としている。
第3回:研究のテーマは臨床にある。
最終回:私が考える理学療法業界改革案。
【林典雄先生 | 理学療法士】触診技術は妥協しないで練習すべき

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