近年のお産について
——————産前のケアもされるのですか?
岡本先生:産前のケアはどの領域の助産師も実施しています。
病院で産む人は病院で受けます。病院での産前健診時の保健指導等の対応時間は比較的短く、長くて30分程度です。
助産院では最低でも1時間程行っています妊娠中の健診は、血圧測定や尿検査、赤ちゃんの大きさ、腹囲や子宮底などから異常になっていないかを看ます。超音波で逆子になっていないかもチェックします。
その時、体重が増えていれば食事指導など生活指導が多いですね。
妊娠中の腰痛や恥骨の痛みなどに対しては、妊婦体操などの指導はしますが程度によっては、整形外科や整体を紹介することも多いです。
——————男性の助産師もいるのですか?
岡本先生:日本にはいません。制度的に女性のみです。
保健師や看護師には男性がいます。医師とは違い、私たち助産師業務は“点”で関わるというよりは、“線”で関わっていきます。
生殖器も直接触りますし、乳房にも触れます。
異性がいるだけで緊張してしまうということもありますから、そういうことを懸念する方も多いのです。
時々勉強したいという男性もいて、大学によっては、学問の自由ということで、学ぶことを許可しているところもあります。
ただ、資格としては、日本ではとれませんので、学んだことを活かす場所がなく、学ぶ人が少ないのが現状です。
制度的に開くことに関しては賛否両論あります。とても難しいところですね。
父親の立会いも普及していますから、良いのではないかという意見もあり、男性の思春期の青年には男性が指導した方が良いのではないか、という肯定的な意見もあります。
——————助産師として長年働いていて、最近の傾向としてどのような問題がありますか??
岡本先生:先ほどもお話しした通り、結婚年齢とともに出産の高齢化が問題になっています。
40歳の初産も珍しくはありません。そういう方が増えているのが現状ですね。
ただ、早く結婚することを促すのは難しいですね。生の人間と恋愛をするのが面倒くさいと感じる方もいますしね。
草食系にもならない。本物の人間が煩わしいというふうに感じる人が増えてきています。
性教育で、性のことをもっとポジティブに、「人を好きになる事もすごく大事だ」ということを低学年から言っておかないと難しいですね。
若いお母さんは生活の方法が身についていないせいか、菓子パンしか食べなかったり、そのせいで母乳が出にくい方もおられます。
子供食堂ならぬ「赤ちゃん食堂」が必要だという方も出てきています。
せめて、お味噌汁とおにぎりくらい食べていただくような、そういった場所が必要だという考えのようです。
粉ミルクより母乳が良いのですが、母乳の指導は生活指導と一体になっています。
食事をしっかり取らないと母乳が出ないのです。そのため生活指導が必要になってきます。
「自然なお産」という理由や「痛いのが嫌だから」という理由で、帝王切開や麻酔による無痛分娩の希望者が増えています。
自分の力で産むという事が失われつつあります。正常なお産が少なくなってきていることも問題の一つですね。
「経膣分娩で産む」という行為にはきちんと意味があります。例えば、肺などに羊水が溜まっているのを、狭い産道を通過することよって、排出し肺呼吸がスムーズになります。
赤ちゃんにとっても意味があるのですが、帝王切開分娩によって損なわれていることもあります。
無痛分娩が増えてきていますが、麻酔が母子の心身や育児にどんな影響を及ぼすか、というところまで深く考えていないこともあると思います。
医師は、最低限安全に産ませるというのが役割重要ですが、助産師はその後のことも考えなければなりません。
育児をスムーズにやっていくにはどうしたら良いか、といったことも考えます。
今のお産のあり方はお母さんにとっては考えさせられる事がありますね。育児も他人事のような感じなのです。
自分の力で産んだら自信になって、育児も頑張ろうと思えるですが、そうならないケースが増えます。
正常であれば、自然分娩が良いでしょう。生命の誕生からの歴史は38億年、人類の歴史だけでみても200万年の歴史があり、人間のお産に合うような体になっているのです。
その人のぺースに合うよう、リラックスして、力が発揮できるようにするのが助産師の役割です。
それは、ほっておいてなるものではありません。妊娠中努力して、初めて食事に気をつけたり、運動をちゃんとしたり、そういう生活を整えてようやくできるものです。
目次
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[1]助産師会の歴史
[2]開業助産師の実際
[3]近年のお産について
[4]プロフェッショナルとは?