生理 マナブくん
Aさん,今回は腰背部痛について考えてみましょう.例えば,臥位から立位への体位変換に腰背部痛が出現・増悪する痛み,長時間の立位・歩行で腰背部痛が増悪する場合,Aさんは何を考えますか?
A さん
それ,学生時代に習いました!腰痛の症状については,姿勢変換に伴い椎間板内圧が変化することを!ですので,下肢や体幹の可動域評価や筋力評価,疼痛誘発姿勢や姿勢アライメント,その他を評価します.
生理 マナブくん
そうですね.Aさんは整形外科疾患については,よく勉強され得意分野ですよね.しかし,例えばこの患者さんが若い痩せ型の女性であったらどうしますか?
A さん
訪問で若い女性を担当することはないですよね...
生理 マナブくん
確かにそうですね.苦笑.でも,便宜上,この設定にさせてください!苦笑
A さん
若い女性でも,,,同じようにいわゆる腰痛を疑いますが..
生理 マナブくん
そうですよね.しかし,LE訪問看護リハビリステーションに勤務しているAさんは,もう一歩先を考えられるようにしましょう!知識をたくさん蓄積し活用させて,地域で生活されているご活用者様の生活・生命を守れるような地域リハ専門職として活躍してほしいです..
A さん
はい.でも...若い女性でいわゆる腰痛ではない,別の原因を考えるということは・・・?全然想像ができません.
生理 マナブくん
今回はいわゆる骨,関節,筋疾患に起因するものではない腰背部痛について学習していきたいというのが意図なのです.ですので,まずは腰部に位置する腹部臓器について復習してみましょう.
A さん
腰部に位置する臓器ですか・・・.すみません,わかりません.
生理 マナブくん
まずは解剖の本を開いてみましょう.腰部に位置し左右両方に存在する臓器は何でしょうか?
A さん
腎臓ですか?
生理 マナブくん
そう,腎臓です.腎臓はおおよそ第12胸椎から第3腰椎の高さに存在すると言われています.
A さん
腎臓と「臥位から立位への体位変換に腰背部痛が出現・増悪する痛み,長時間の立位・歩行で腰背部痛が増悪」が全然つながらないのですが...
生理 マナブくん
もう少し,詳しく見てみましょう.腎臓がその位置にありますが,どうやって固定されてると思いますか?
A さん
腎臓が固定?周囲の臓器があるので,固定も何も...
生理 マナブくん
そうしましたら,もう少し詳しく解剖を見てみましょう.今度は,解剖学の教科書を開いてみてください。腎臓が位置する横断面像を見てみましょう.
A さん
腎臓が脂肪組織に囲まれていますね.
生理 マナブくん
そうなんです.それがポイントです!腎臓が脂肪組織に囲まれていることが.脂肪組織によって,腎臓がその位置を保つことができるのです.
A さん
もしかして,痩せ型の若い女性とは,全身的に体脂肪組織が少なく,腎臓にも脂肪組織が少なくなってしまい,それが腎臓の固定に不具合が生じているということですか?
生理 マナブくん
そうです!いい発想ですね.あえて今回,便宜上で痩せ型の若い女性とさせてもらったのは,そういった意図があったのです.今回は,腎臓の疾患でも腰背部痛が出現するということを念頭に入れておいてほしく提示しました.
A さん
腎臓疾患と腰痛の関係ですね.「腰背部痛=骨関節疾患」,とすぐに考えてしまいますが.
生理 マナブくん
そうですよね.でもAさんがLEで地域における専門性の高いリハスタッフとして活躍してもらいたので,知識を増やしていきましょう!今回,提示しました症例は結論から言いますと「腎下垂 (遊走腎)」という症例です.腎下垂は,臥位から立位となった際に患側腎が2椎体,あるいは5 cmを超えて下降する状態を指します.
生理 マナブくん
若い痩せ型の女性に多いと言われており(男:女=3:100),ほとんどの場合は無症状ですが,10-20%に腰部鈍痛 (最多),嘔気,嘔吐,間欠的血尿などを認めます.この原因としては,腎周囲の支持組織が脆弱なためだと考えられていますが,未だに完全な解明には至っていないようです.