【1/14】小倉秀子先生の講演「機能的リハビリテーション・発達運動学的アプローチをPTとして獲得するためには何が必要か」
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ヤンダアプローチ、DNSアプローチとの出会い
―――ヤンダアプローチ、DNSアプローチに出会ったきっかけを教えてください。
小倉先生:荒木茂先生から、ぜひヤンダアプローチを学びたいから講師の先生と英語で交渉してほしいという話になりました。はじめは日本人の方々を集め、アメリカでワークショップをする予定でした。しかし、講師のクレアフランク先生が、「私が日本に行った方が安くない?」と言って下さり、日本で開催することとなりました。MTI(マニュアルセラピーインターナショナル東京)は2003年から様々な講師を海外から招いて非営利の勉強会を行っていましたので、2006年からクレア先生をお招きし、日本各地を巡っています。
―――ヤンダアプローチ・DNSアプローチ以外の療法も行っていると思いますが、なぜこれらの講習会を日本で開催し続けているのですか?
小倉先生:チェコの療法は深い医学知識と観察力に研ぎ澄まされた臨床的アプローチが特徴のように感じています。日本で知られているボイタ氏もチェコプラハスクールのご出身で、天才的な観察力と優れた医学知識に基づいた素晴らしき反射性運動療法を生み出しました。
日本ではボイタ法の講習会が行われていることは本当に幸せな環境だと思います。私はどうしても日程が合わず、日本で行われているボイタ法講習会はA,Bと受講したもののCコースが受講できませんでしたが、いつかまた挑戦したいと思っています。
ボイタ氏はドイツに亡命しましたが、ヤンダ氏はチェコに残り、共産主義下で様々な辛い経験をしたと聞いています。ヤンダ氏は10代でポリオ菌に罹患し、数年間車椅子生活もしいられました。お亡くなりになる直前まで教育を続けましたが、ポリオの後遺症との戦いであったとも聞いております。
DNSアプローチを考案したコーラー氏は、ヤンダ氏、ボイタ氏らの素晴らしい教育を直接受け、新たな領域を開発しました。私はクレア・フランク先生を通して、DNSと出会い、臨床基本コースのAコースから、医療従事者専門コースのDコースまで修了し、DNS認定理学療法士となりまして、現在日本で医療従事者のためのDNS講習会を主催しています。
ヤンダアプローチ、ボイタ法、そしてコーラー氏のDNSアプローチは臨床で毎日アプローチを活用し、治療の幅が大きく広がったと実感しています。私は夫がチェコで生まれ育ったことから、チェコに何度も行く機会があり、チェコの人々が経験した辛く苦しい環境や歴史について学ぶ機会がありました。
日本で育った私では想像を絶する苦境に立ちながらも、負けずに生き抜いて、素晴らしき療法を生み出し、リハビリテーションの教育と向上に貢献したヤンダ氏やコーラー氏の療法を、日本の皆様に紹介ですることが自分の天命のように感じ、講習会を行えることをとても幸せに感じています。
ブラディミア・ヤンダ氏(Vladimir Janda 1923-2002)は、教育者・研究者・医師として50年以上の経験があるチェコの神経学者・リハビリテーション医。10代の頃にポリオ菌に罹患したことがあり、四肢麻痺になり2年間車椅子生活をしていた。様々な理学療法を受け、医学の道へ。ヤンダ氏は、個性的で実践的な臨床研究を世界各地で発表し、筋骨格系の痛み症候群の専門家として知られている。また、チェコ共和国のリハビリテーションの父として、リハビリテーション医学における「プラハ教育」アプローチに不可欠な存在としても知られている。
パベル・コーラー氏(Pavel Kolar)は理学療法士であり、現在のプラハスクールのリーダーです。短期間で内在システムを活性化させ、機能向上の活性化レベルを到達する独自の徒手的アプローチである動的神経筋活性化—DNSアプローチを展開しました。 DNSアプローチは徒手的医学プラハスクールによって確立された運動システムの発達における神経生理学側面、運動発達学を基本としており、臨床治療の選択において期待できる新たな方向性を発展し続けています。
―――チェコの理学療法は発展していますか?
小倉先生:ヤンダ氏・ボイタ氏、そしてコーラー氏を生み出したプラハスクールのあるチャールス大学付属モトル病院には、大変優秀なリハビリテーション科があります。
私は講習会で何度か訪れましたが、モトル病院で働く大変優秀なセラピストに数多く出会いました。DNSコースのDコースはここで行われ、実際の患者様の治療なども取り入れた専門家のための臨床実践的な講習会で、世界各地からセラピストが参加しています。
私は日本でのA、B、Cコースのお手伝いをさせていただいています。
海外と日本の理学療法を比べて
―――今の理学療法士(海外と日本)、昔の理学療法士(海外と日本)で比べた時に何か感じることとかありますか?
小倉先生:米国と比べると中枢神経系理学療法と訪問リハに関しては、日本には素晴らしい療法や環境があるように思います。また、QOLを考える日本の訪問リハも、リハビリテーションの根本を感じる素晴らしさがあります。
ただ少し残念なのは、最近の日本ではセラピーの重要性を低く見ているように感じています。具体的に言えば、ボバースやボイタ、PNFなどの素晴らしき療法を、臨床で軽んじている印象を持っています。
アメリカの場合、急性期が短期であり、退院後に外来に行く前に在宅を行うことが大きな違いでしょうか。在宅リハは、外出を安全に行えるようにすることが大きな目的ですので、在宅リハの期間は非常に短いです。外出できるようになったら外来PTへと移行する流れとなっています。
―――外来リハビリの終了基準というのは保険的に決めることが多いですか?
小倉先生:機能で決定します。臨床的には機能を数量化、点数化することが常に求められます。
―――日本では、これからは機能というよりは「活動と参加」という所に比重を置かれていく印象です。これから超高齢社会に対応していくために機能面より社会参加という広い範囲での対応が重要視されてきていると思います。高齢化の流れだと思います。アメリカでは機能面より社会参加という見方はありますか?
小倉先生:極めて機能重視です。手が上がらなかったのが上がるようになった、重いものを持てなかった人が持てるようになった、立てなかった人が立てるようになった、歩けなかった人が歩けるようになったという機能そのものが重視されます。
【1/14】小倉秀子先生の講演「機能的リハビリテーション・発達運動学的アプローチをPTとして獲得するためには何が必要か」
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【目次】
第一回:アメリカに行ったワケ
小倉秀子先生の経歴
東京都新宿区出身。東京都府中リハビリテーション学院卒業し、
現在日本では理学療法士・
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