1.広背筋の機能と構造
2.広背筋の臨床的意義
3.広背筋が関連した投球障害
4.広背筋テスト(Shoulder Adductuion Flexion)
5,広背筋の筋トレ(自重)
6,広背筋のストレッチ
7,文献
広背筋は、下部胸腰部の大部分を占める広くて平らな筋肉です。筋肉の主な機能は上肢ですが、呼吸補助筋とも考えられています。この筋肉は棘突起に広く付着しているため、グローバルモビライザーとしての機能があり不慮姿勢では機能低下を起こす可能性が指摘されています。
現在、この筋肉が脊椎の伸展、側屈、または回転にどの程度の影響を与えるかについての証拠はまちまちです。筋肉は体幹に広く付着し、上腕骨に強い作用を及ぼしますが、この筋肉を外科的転位に使用しても、正常な機能への影響や制限は限られているようです。
広背筋の機能と構造
広背筋は、胸部と上腕の両方の動きに寄与する筋とされています。筋肉は、僧帽筋が棘突起に付着する前に、Th6-12の棘突起に付着しています。胸腰筋膜を介して広背筋は腰椎と仙骨の棘突起(T6からS5レベル)、および棘上靭帯に付着します。
筋の他の付着部には、後腸骨稜、外腹斜筋と肩甲骨の下角と噛み合う下部の3〜4本の肋骨が含まれます。筋線維はさまざまな方向に配置されており、最上部の線維はほぼ水平であり、下部の線維は胸部で垂直になります。筋線維が腋窩に向かって伸びると、線維は大円筋の前面に巻き付いて、結節間溝に平らな腱として挿入されます。
線維が合体して上腕骨に挿入されると、束は互いにねじれ、正中線の最も優れた線維が溝の最下部に挿入され、正中線の下部の線維が溝のより高い位置に挿入されます。結節間溝の広背筋の付着は、溝の外側唇の大円筋の付着よりもはるかに上に伸びています
上腕骨の前方付着部を介して、広背筋は大円筋および大胸筋と作用して肩関節を内転させます。広背筋は、大円筋および大胸筋の胸骨頭とともに、上腕骨の伸展にも積極的に関与しています。
部分的な屈曲または外転、あるいは2つの動作の組み合わせの位置から動作を開始すると、伸展と内転が最も強くなります。筋は、上肢が頭上に固定されている場合、登ったり、懸垂などの活動を行ったりするときに、体幹を前方および上方に動かすのにも重要です。研究はまた、広背筋が深い吸気の間、そして咳やくしゃみなどの強力な呼吸機能で活動していることを示しています。
起始 |
Th6-12棘突起 腰仙椎棘突起 腸骨稜 下部肋骨 肩甲骨下角 |
停止 | 上腕骨小結節稜 |
支配神経 | 胸背神経 |
髄節 | C6ーC8 |
作用 |
肩関節外転90°:内転・内旋 肩関節外転90°:伸展・内旋 上肢固定肢位:骨盤引き上げ |
英語 |
Latissimus Dorsi Muscle(略:LD) |
広背筋は比較的薄く、面積が広い筋肉です。付着部が多くあるため、様々な動きに関与します。特徴的なのはプッシュアップにも使われている点です。上肢を固定した状態で広背筋が収縮すると骨盤が持ち上がります。図で見るとわかりやすいので確認しましょう。
また広背筋は4つの筋束があってそれぞれ肩甲骨の下角に向かって集まり、上腕骨小結節稜に付着します。停止部では大円筋の近くに付着します。前から見ると大円筋を挟み込むようにして前方に回り込んで付着します。ただ、ここは大円筋の腱と分けられないこともあります。
広背筋の臨床的意義
広背筋は、外転、屈曲、内転の動きが制限されている患者に関係している可能性があります。この筋肉の評価は、上肢の機能障害がある患者にとって非常に重要です。
上肢の滑らかで滑らかな動きには、大円筋と大胸筋の適切な機能と協調が不可欠です。腰痛のある患者の場合、脊椎と骨盤に付着しているため、広背筋の長さと柔軟性を評価することが重要です。この筋肉の長さの減少または硬直の増加は、腰痛を悪化させる可能性のある運動パターンおよび/または姿勢の変化につながる可能性があります。
広背筋が関連した投球障害
広背筋はよく投球障害肩で関連することが多いです。広背筋の攣縮に伴うフォームの乱れや肩関節の後下方部の硬さによって生じることが多いです。この硬さが原因でフォームが乱れ(肘下がりなど)、それが原因で肩峰下インピンジメントのリスクを高めます。これを広背筋症候群といい、肩関節に痛みを訴えます。
またオーバーハンドスポーツ(野球、バレーボールなど)に多い動きで、肩甲骨の過剰な上方回旋と外転による肩甲骨下角の摩擦が繰り返されると、広背筋挫傷がおこり、背部に痛みを訴えます。そのため、オーバーハンドスポーツ選手が背部を含んだ肩関節痛を訴えた場合は、広背筋の評価もしなければいけません。
広背筋テスト(Shoulder Adductuion Flexion)
①座位にて両上肢ともに肩関節・肘関節90度屈曲位にする。
②両上肢を指先から前腕までつける。
③この肢位から両腕離さないまま自動で肩関節を屈曲する。
④肘(肘頭)が鼻の高さまで来なければ、広背筋の柔軟性低下を疑う。
*立位では腰椎伸展による代償が起こる可能性もあります。両姿勢(坐位、立位)で行う場合もありますが、目的に応じて変更する必要があります。
*自動、他動両方でも評価しましょう。自動で行えなくても他動にて十分な可動域を確保できているケースもあり、その場合上肢挙上筋力の問題も疑われます。
広背筋の筋トレ(自重)
先ほど言いましたが、広背筋はプッシュアップの時にも作用します。それを行うだけで十分なトレーニングになるので行ってみましょう。
〇やり方
①ベットに腰を変えるように座る。
②手の平をベットについてそのままお尻を持ち上げる。この時に足はついたままでOK!
*)トレーニングは重さで決まるのではなく、重さと回数の総重量で決まります。つまり、50kgを1回持ち上げるのと、10kgを5回持ち上げるのではトレーニング効果が同じです。怪我予防のためには、少ない不可で多い回数行うほうが安全です。
*)重さは徐々に増やしていきましょう。重りの目安は、10回ギリギリ持ち上げられる重さ(10RM)が理想です。
広背筋のストレッチ
〇やり方
①手を挙げる
②片方の手で手首を掴みます。
③手首を掴んだ方の手を引っ張る
④脇をストレッチするような形をとる。
⑤40秒伸ばし続け、10秒休憩を3セット(約3分間)行いましょう。
*どのストレッチも基本週3回以上行えば、効果が期待できますので無理なく続けられるように行いましょう。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11243904/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28939333/