米国心臓協会(AHA)のArteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology/Peripheral Vascular Disease学術集会にて、次のような研究が発表された。
今回の研究では、PAD患者13人(平均年齢71歳)を対象に、足関節を約15%曲げる装具(スプリント)を用いて、ふくらはぎの筋肉のストレッチを1日30分間行ってもらった。1カ月間のストレッチ後、患者の血流は改善し、疼痛が軽減し、6分間歩行テストの歩行距離が延長した。また、疼痛で立ち止まることなく歩行できる距離も延長した。
日本において、末梢動脈障害のある方は40万ほどいると推測されており、非常に多くの高齢者が悩まされている。
脳卒中や、運動器の処方でリハビリのオーダーが出ても、末梢動脈障害患者を合併している患者さんは非常に多い。
末梢動脈障害患者の最も典型的な症状は、間歇性跛行(かんけつせいはこう)を呈した歩行障害で、長時間の連続した歩行時にこむら返りやふくらはぎに痛みやしびれを生じ、少し休むとまた歩けるようになる症状を訴える。
リハビリはリスク管理を徹底した歩行訓練を行われることが多いが、ストレッチを行うことで末梢動脈障害患者の下肢疼痛が軽減する可能性が出てきた。
ただ、重症下肢虚血(CLI)という末梢動脈障害の重症度が高い方には、逆にストレッチが禁忌になる場合もあり、注意が必要である。
末梢動脈障害に対して苦手意識を持っている理学療法士・作業療法士の方も、この機会にぜひ勉強してみてはいかがだろうか。