OTを実践する上で重要になること【日本作業療法士協会 会長|中村春基先生】

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【2020年10月19日】中村会長とのオンライン意見交流会を開催します!

 

OTを実践する上で重要なこと 

中村先生 以前僕がもっていた患者さんで本当に重度な左片麻痺、ステージでいうとⅡくらいの状態。装具つけて介助でやっと歩けるような状態の人。それでCOPMをとったら「調理をしたい」と。じゃあ調理やってみようとなったんですね。それでPTでは立つ練習を多くしてもらった。そうしたら、最初は座ってしかできなかった包丁で切る動作が「やりにくい」と言って立ってできるようになった。

 

それではじめは危ないってことがわかっているから、すこし斜に構えて支えながらやっていたんです。でもね、非麻痺側の右足の力がついてくると麻痺側の左足が保持できないのに、昔の保持できるプログラムをつかってやりだすんですよ。そうなると転倒しだしたんです。おもしろいですよね。危ないから注意して、体がよくなってきて転倒するんです。

 

ー 良くなるとリスクも高まると。

 

中村先生 そう。機能がよくなるのと平行してリスクが高まるんだなと。だからそのタイミングを察知してあと1回、2回は学習を加えていかないといけないと教えられましたね。まぁヒヤリハットを何度も書きましたよ(笑)。

 

そういう形で作業療法をやっていたら、その人のご家族も「作業療法士は何をしてくれる人」というのがわかってくださるんですよね。その方がどういう形で退院されたかというと、最初は調理なんて誰もできると思っていませんでしたから、キッチン周りはなにも改修していなかったんですね。

 

だけど、退院後すぐに調理を開始しようという話になってすぐにキッチン周りの底上げとキッチンの改修を行いました。それでケアプランも、病院では毎週金曜日にOTで調理をしていたので、帰った後も金曜日はその方の仕事ということで水曜日から買い出しにいくなどの準備をするようにしました。

 

そして、金曜日はヘルパーさん見守りの元で調理をするというプランになったんです。黙っていてもこういうプランになりました。ケアマネージャーさんは病院にいる時に見学に来てくれていましたし、それを見たケアマネージャーさんからヘルパーさん見守りの提案をして下さいましたね。

 

ー  今言われた話だと、やっぱり調理を家で続けるというモチベーションは病院で何度も何度もできたという経験が大きい気がします。

 

中村先生 そうですね。はじめはクタクタでしたけどね。調理を僕のほうで10工程にしたんですけど、そのうちの8工程を僕がやっていました。患者さんは最初からそんなに多くはできないし、体力もない。

 

ただ何度も繰り返していくうちに最終的には全工程できるようになったんです。いいんですよね、最初は。2工程しかできなくても、結果として例えばカレーライスを自分が作った。という事実が結果として残ることが大事なんです。

 

ー そうした達成感というか、少しでもいいから携わって「できた」という感覚が大事なんですね。

 

中村先生 そうそうそう。とにかく褒めちぎる!!!笑 これが本当に大事ですね。そういうことって地味ですけど、地道に多くのOTがやったらいいですよね。

 

ー なるほど。褒めちぎる他に何か重要なポイントはあったのでしょうか?

 

中村先生 すばらしいPTがパートナーだったことですね。そのPTとよく話をしましたし、一緒にやったことがうまくいった要因ですね。OTだけでは絶対にできなかったと思います。

 

例えば、「台所で下のものを拾う時に少しふらつくんだけど、そういった部分に対するアプローチないかな。」とPTに話してみる。そうすると、その日から下方へのリーチを実践してくれる。こういった役割分担をしてやりとりすることは本当に大事ですよね。

 

OTとは何をする人なのか  

ー 一般的に理学療法と言語聴覚療法に比べて作業療法がわかりにくいと言われますが、今後対外的に広めていくために、何かわかりすい表現とか武器とかっていうのはありますか?

 

中村先生 平たく言えば『活動と参加』でしょうね。課題は、活動と参加ではない時期があるので、それ以外の時期にどう活動と参加を埋め込むかですね。

 

 僕が最近結構言っているのは、OTは「生活者として見る」ということです。病院の中にいてもこの人は退院後に主婦としてどういう役割を担っていくのか。調理だったら、調理ができるために今何をするべきなのか。そういう視点では他の職種はみないと思いますからね。

 

その時のキーワードは主体性”ですね。これが根底にある。つまり障害を持っていても自分らしく生きていいんだ、考えていいんだというのを体験してもらう。気づいてもらう。回復期というのはそういった自分の生活を再学習するところだと思うんです。それができない時期に、できないことをどうやって考えていったらいいんだと患者自身がわかるということですね。

 

利き手の右手が麻痺だ、じゃあどうすればいいかを自分で考えてもらいながら生活ができるようになること。この『自分で考えながら』というのが主体性ですよね。

 

さっきの調理の例で言えば、釘で野菜を固定できるまな板の意味をどう捉えさせるか。ただまな板を紹介してやるだけではなくて、手が使えなくても、こういった手段でできるんですよといちいち考えてもらうべきだと思いますね。釘以外でも固定する手法なんていっぱいあるわけですよね。

 

ーー 考えてもらうということですね。そういう意味では作業療法士は多くの経験をして、色んな教養を身につけて、色んな手法を武器としてもっておくべきですね。

 

中村先生 そうですね。ただOT自身が考えるだけではなくて、実際に片麻痺で生活の達人はいっぱいいらっしゃいますからそういった方々に教えて頂くのもいいですよね。

 

ーー そういう方々の声を集めるだけで教科書になりますね。

 

中村先生 そうそう。そういったことを学習してもらうのが回復期でのOTの役割だと思うんですよね。自分の中でそういった可能性にどう気づいてもらうのか。

 

全てに”いちいち”意味づけをすること

中村先生 麻痺の手が挙がることはとっても大事なんです、でもその挙がった手をどう使うのか。挙がったことの意味とかですね、続ける意味とか。そういうことを考える。ちょっとの変化をみつけて、それを伝えてあげればいいんですね。

 

それでそこをみたら機能訓練に意味がでてくるんですよ。例えば、患者さんにADLをするからこの練習をしなさいと繰り返していう。ただ、ある時期からこれはやめた方がいいと。自分でこう動くからこういった形で使いなさい。

 

身の回りのことが一辺倒で考えるのではなくて、身の回りのことでこれをしたら身体にどういう影響を与えるのか、そういったものを伝えて考えてもらう。それには機能をきちんと見て、ADLを見ていくこというのが大事ですね。身の回りの中でそういった一つのアイデアがどういう場面に役立つのか。こういったことも常に考えてもらわないといけない部分ですね。

 

それには機能もちゃんとみれて、ADLも見なきゃいけません。例えば、麻痺側についていつも思っているのは、痛みをださない。邪魔な手にさせない。最低でもこれは必要ですね。少なくとも拘縮はさせない。この意味を考えないといけない。

 

使えないからやらなくてOKとは絶対に考えさせてはいけない。なんでかというと、OTにとって先ほど重要と言った『活動と参加』に大きな影響を与えますからね。そういったことを一つの機能から想像しないといけないんですよね。

 

常に意味づけをして、それを患者さんに”言葉で”説明していく。こういった繰り返しが、主体性をつくりあげていくと思います。

 

【2020年10月19日】中村会長とのオンライン意見交流会を開催します!

日時:10月19日 (月) 21:00 ~ 23:00

参加費:無料 (セキュリティーの関係上、POSTの会員登録[登録は無料]が必要になります)

会場:ZOOM会議室にて行います。申し込みいただいた方には、前日にURLをお送り致します。

申し込み方法:以下URLからお申し込みください。

▶︎  http://ptix.at/f3brDA

 

 中村春基先生経歴

所属先:兵庫県立リハビリテーショ中央病院
昭和52年(1977)3月国立療養所近畿中央病院附属リハビリテーション学院卒業
昭和52年(1977)4月兵庫県社会福祉事業団玉津福祉センター附属中央病院
昭和59年(1984)4月国立療養所近畿中央病院附属リハビリテーション学院
平成 6年(1994)4月兵庫県立総合リハビリテーションセンター中央病院
平成18年(2006)4月兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター
リハビリテーション西播磨病院
平成22年4月 兵庫県立総合リハビリテーションセンター中央病院
リハビリ療法部部長

【社会的活動】
(社)日本作業療法士協会会長
義肢装具学会評議委員
(財)訪問看護振興
財団評議委員
作業療法ジャーナル編集委員

【著書】
脳卒中の在宅リハビリテーション (在宅ケアハンドブック)(編集責任者)
作業療法各論 (リハビリテーション医学全書 (10))
筋骨格障害系理学療法学 (系統理学療法学)
義肢装具 (理学療法MOOK (7))
作業療法のとらえかた(糖尿病に対する作業療法)

 

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