第三回:呼吸ケアサポートチームの結成【日本理学療法士学会 栄養・嚥下理学療法部門 運営幹事 | 中島 活弥先生】

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管理職になるメリット

—現在は藤沢湘南台病院に勤務されていると思います。こちらでは管理部分を多く担当されていると思いますが、最近では管理職につきたくない療法士も増えていると聞きます。その中で、先生からアドバイスを是非お願いします。

 

中島先生 たたき上げで管理職になるのであれば、現場もわかっていますし、やりやすい環境ではあると思います。これは持論ですが、管理職になれば勤務管理やトラブルの対応など様々あり、苦労も増えます。しかし、40、50歳となった時に、トラブルに対応できない人間ではダメだと思います。

 

当然、管理職の立場として上から下からと板挟みになることも多いですが、どちらの意見も聞きつつ行えば、無理な仕事ではありません。私も実際、みんなの意見を聞いて決断する民主主義的な管理を行います。もっと言えば、自分自身も上司や先輩に育てられてきたわけです。次は自分の番ですし、それを部下に託していかなければなりません。それが組織というものだと思います。

 

やりたくない理由は、メリットを感じないからでしょう。ただ、ここ(藤沢湘南台病院)では原則的にある程度責任あるポストにいなければ、外部からの業務を受けられません。まずは組織内での仕事を責任もってやり、それから自己の道を開いていくというモチベーションとしてこのような制約があるのだと思います。

 

組織に対して不満を呈することは大切です。ただ、何もしないでただ不満を呈するだけでは意味がありません。自分がその中に入ってみて、実際の状況を体験して、その上で提案して、ということを繰り返し行わなければ何も変えることができません。私自身、現在は日本理学療法士学会、神奈川県理学療法士会の仕事をさせていただいて、以前よりは後輩たちの声を上に上げることができるようになりました。

 

ー内部障害を専門とされたきっかけは何かありますか?

中島先生 病棟を歩いている時に、気道閉塞疑いの患者さんを発見しました。症状がみるみる進展していく中、当時は吸引の資格もありませんでしたので、徒手排痰と体位ドレナージを行いました。

 

自然とその時は焦らず対応できたのも訪問での経験があったことが功をそうしました。排痰の手技等を行っていると、チアノーゼが徐々に改善してきた頃に、医師がやってきてアンビューバックを任されました。看護師に吸引してもらい、一命をとりとめた時に、看護師から「あなた呼吸器できるの?」と声をかけられ、呼吸器外科部長を紹介されました。

 

会ってすぐに「呼吸器をやれ。呼吸療法認定士をとれ」と言われましたが、当時その資格がどんな資格か詳しくは知りませんでした。1度目の試験は見事に落ち、2度目で見事合格、それを待ってから呼吸ケアサポートチームを呼吸器外科部長と発足させました。

 

ー現在地域の活動にも参加されていると伺っていますが、どのような活動をされているのですか?

 

中島先生 目黒区の保健所からのご依頼で呼吸リハビリテーション(喘息管理コース)の講師をやらせていただいています。厚木保健福祉事務所大和センターでは神経系難病訪問、教室の講師をさせて頂いています。この保健所での経験や地域の方との会話でふと引っかかることがあります。

 

医療介護連携という言葉がありますが、実際には実質両者に隔たりを感じることが多くあり、そのような話も見聞きします。これって医療介護連携が出来ていると言えるのでしょうか。

 

その折、藤沢市民病院の呼吸器内科部長と藤沢湘南台病院の呼吸器外科部長と私で、飲む機会がありました。そこで私が「もっと横の繋がりを作ることはできないですか?」と、チーム医療を考える会というような形ではなく、もっとフラットに話せる場が必要だということを提案しました。

 

先生方の第一声は「よし、やろう」ということで、「医療と在宅呼吸管理勉強会」を藤沢市で始めました。最初から30人ほど集まり、話を聞いていくと、医療側も介護側ともに。不満が多く聞こえてきました。そこで上がった意見は全て、勉強会HP上にアップして共有するようにしています。

 

結局、医療側は介護側の、介護側は医療側の意見に耳を傾け、理解し合うことがまずは大切です。参加は、藤沢市民、神奈川県民が優先ですが、私に連絡いただければ、参加できます。この会について論文を書かせて頂いております。宜しければ、ご覧ください。

 

中島 活弥、西川 正憲、熊切 寛、他:特集 呼吸器在宅医療のサイエンス 地域に根差した呼吸器在宅医療・介護の体制作り―湘南東部医療圈での多職種参加型「医療と在宅呼吸管理勉強会」の目的―、THE LUNG perspectives,25(1),60-65、2017

 

次のページ>>呼吸の専門家がなぜ、栄養・嚥下部門へ?

 

【目次】

第一回:苦い思いの実習と運命の出会いに恵まれた実習

第二回:突然のスカウト

第三回:呼吸ケアサポートチームの結成

第四回:呼吸の専門家がなぜ、栄養・嚥下部門へ?

最終回:持論

 

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中島先生のプロフィール

平成6年  東京衛生学園専門学校リハビリテーション学科 卒業 理学療法士 免許 

     財団法人 緑成会 緑成会病院 リハビリテーション部 入職 

      小平市機能訓練指導員、東京都医療技術員非常勤職員

平成12年 専門学校東都リハビリテーション学院 専任講師

      目黒区保健所 公害保健事業 

      呼吸器リハビリテーション 喘息管理コース講師

平成14年  理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 養成施設等教員講習会修了

平成16年  一般財団法人同友会 藤沢湘南台病院 リハビリテーション科  

      神奈川県厚木保健福祉事務所大和センター非常勤職員

平成18年  3学会合同呼吸療法認定士 取得 

藤沢湘南台病院 呼吸ケアサポートチームサブリーダー

平成27年  呼吸ケア指導士(初級) 取得     

平成28年  藤沢湘南台病院 呼吸ケアサポートチーム チームリーダー

〇所属学会

日本理学療法士協会

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会

日本リハビリテーション栄養学会

〇公職

日本理学療法士学会 栄養・嚥下障害理学療法部門 運営幹事

〇研究会

医療と在宅呼吸管理勉強会 副会長

○執筆

・中島 活弥;訪問理学療法士からみた在宅介護者の暮らしと健康 (特集;重度障害児・者を介護する家族の暮らしと健康) 、リハビリテ-ション (403), 12-16,1998-05

・中島活弥,熊切 寛,徳田有美,他:理学療法士などによる 吸引業務に関する院内講習会開催とその評価.呼吸ケア,11:98-103,2013

・中島 活弥:臨床実習サブノート臨床実習のリスク 地雷を踏むな!・4 摂食嚥下障害.理学療法ジャーナル,9:888-895,2016

・中島 活弥、西川 正憲、熊切 寛、他:特集 呼吸器在宅医療のサイエンス地域に根差した呼吸器在宅医療・介護の体制作り―湘南東部医療圈での多職種参加型「医療と在宅呼吸管理勉強会」の目的―、THE LUNGperspectives,25(1),60-65、2017

【専門分野】

呼吸ケア(喀痰等吸引、排痰)、呼吸器リハビリテーション、リハビリテーシ

ョン栄養、栄養・嚥下理学療法

 

第三回:呼吸ケアサポートチームの結成【日本理学療法士学会 栄養・嚥下理学療法部門 運営幹事 | 中島 活弥先生】

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