沖縄科学技術大学院大学の研究員らは、パーキンソン病の発症に関わる原因物質「αアルファシヌクレイン」が神経細胞に過剰に発現することによって生じる毒性のメカニズムを同定した。
本研究成果は、北米神経科学学会が発行する「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス The Journal of Neuroscience」のオンライン版に掲載されている。
研究内容
αシヌクレインは通常、主として脳に発現しており、特に神経細胞の軸索終末端に局在する機能不明のタンパク質であった。
今回の研究では過剰発現したαシヌクレインの毒性の第一標的が、神経終末端の小胞回収脳の高次機能を支える神経伝達に関わる「エンドサイトーシス機構」であることを突き止めた。
1. αシヌクレイン過剰によって神経伝達の持続維持が損なわれることを発見
通常、神経伝達において活動電位の信号が神経末端に到達して、次のニューロンに受け渡される際に、小胞内に充填されている伝達物質がこのプロセスを媒介する。
伝達物質は小胞内からシナプス間隙(ニューロン間の隙間)に放出され、空になった小胞は、神経末端内に回収され、再利用される。
しかし、αシヌクレインが過剰になると、この小胞膜の再回収である「エンドサイトーシス機構」が障害される。
2. 過剰αシヌクレインの毒性メカニズム
過剰αシヌクレインがエンドサイトーシスを抑制するメカニズムを更に研究したところ、微小管の過剰形成が関わることが明らかになった。
沖縄科学技術大学院大学の研究員らは、過剰のαシヌクレインによる、この抑制過程がパーキンソン病の初期、未だ神経変性などの形態的変化が起こっていない時期に起こると考えている。