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最終回:社会保障の限界【国立長寿医療研究センター 健康増進研究室室長|理学療法士 土井剛彦先生】

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予防への意識

土井先生 日本の社会保障のシステムは、非常に優れていると思います。ただし、今後の人口動態を考慮すると、財源が不足することは大きな課題です。

 

介護保険の負担額を増やすなどの修正が適宜行われていますが、どこかで必ず現状の制度では対応が難しくなる時期が来るでしょう。そうであれば、やはり「予防」に積極的に取り組む必要があると考えられます。

 

私はアメリカの、ニューヨークに住んでいたのですが、マンハッタンなど中心街にいる人はランニングしている人が多く、郊外では肥満体型の方が多い印象でした。西海岸でも、海沿いを多くの人が走っている場面をよく目にしました。

 

日本では、その素晴らしい社会保障があるからこそ、予防に対する意識が高いとはいえず、その点においては足かせになっている可能性すらあるかもしれません。予防ができている人には、何かしらの形で還元する、例えば保険費用を減額するなどの対応が必要になって来るでしょう。

 

— 確かに日本のホテルではジムを併設しているところは少ないですが、海外ではジムが設置してあるホテルが多い印象です。

 

土井先生 確かにそうですよね。お金を持っている人ほど健康に気を使って走ったり筋トレしたりしている印象です。

 

予防を普及させるためには、必然的にそうなるよう仕向ける必要があると思うのですが、我々の力だけではどうにもできないことも多いので、社会全体の仕組みから考える必要があるかもしれません。

 

ー そうすると社会保障をやめたらいいとなりますが、まず完全になくなることはないですよね。やめてしまえば、失敗だったと認めることにもなりますからね。

 

土井先生 現実問題としては非常に難しいと思います。ただ、現在、年間1万人近くの理学療法士が誕生している中で、その人たちの多くは保険制度のもとで働いていることを考えると、その部分の社会保障費は最低限でも増えていくということです。

 

理学療法に関する部分だけでもそうですから、他のこともあわせてこの現状を考えれば、変えていかなければならないのは必然でしょうね。

 

だからこそ、研究という仕事で社会に寄与したいというような高齢者をテーマにした研究者になりたいという人がいたら気兼ねなく相談してほしいと思います。笑

 

ただ、なりたいとコンタクトを取ってくる人は少ないのが現状です。こないだ人に言われたのですが、その人のイメージでは、研究者はデータだけあつかって論文書いていればいいの?ということでした。

 

当然、そんなに甘い世界ではありません。多種多様な苦労が絶えないものですが、その分プロジェクトが無事に終了すると達成感があると思っています。

 

もし研究者としての道に興味があれば、ぜひご一報ください。笑

 

ー 先生にとってプロフェッショナルとは?

土井先生 やらなければならない当たり前のことを、当たり前にできる人。

 

【目次】

第一回:研究者として生きる

第二回:高齢者の介護予防と健康増進

第三回:楽しいリハビリ

最終回:社会保障の限界

 

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土井剛彦先生のプロフィール

資格:理学療法士

学位:博士(保健学)

所属学会:日本理学療法士協会、日本老年医学会

受賞歴:

  • 第4回藤田リハビリテーション関連施設臨床研究会 最優秀発表賞
  • 第49回日本理学療法学術大会 優秀賞
  • Geriatrics & Gerontology International the 2015 Best Article Award受賞
  • 第8回理学療法学優秀論文 最優秀賞

社会活動:

  • 愛知県理学療法士会学術誌部
  • 日本理学療法士学会 編集委員会査読委員

好きなサッカー選手:

セバスティアン・ダイスラー(Sebastian Deisler)

ジャンルカ・ザンブロッタ(Gianluca Zambrotta)

論文実績:

Research Map(http://researchmap.jp/takehiko/

主な著書:

 

 

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