信念と態度
武田先生 私が学会に参加すると、最近になってようやく、よく「ファンクショナルトレーニング」というワードを見聞きするようになりました(ピラティスをしていたおかげで、私は十数年前から見聞きしていましたが)。
ファンクショナルトレーニングのシンポジウムやパネルディスカッションなども、開催されるようになったのですが、なぜか気づいたら筋トレとかストレッチの話になっていることが多々あります。
最初はモーターコントロールの話なのですが、徐々に横道に話が逸れていくのです。Paul W Hodges氏(ポール・W・ホッジス)の「腰痛・骨盤痛に対する運動制御の介入の統合モデル」の図を見ても分かる通り、筋力や柔軟性などの個別の要素の状態は重要ではあるけれど、それらは要素でしかないのです。
つまり、モーターコントロール不全に対して、モーターコントロール向上を図ることを第一義としないリハビリテーションはあり得ないわけです。
さらに極め付けは、「信念と態度」という要素も含まれています。つまり、先ほどお話しした「Whole Body Commitment」自分の健康は、自分の信念をもって遂行する。
または、患者さんが遂行するのを心理的にもサポートするという患者教育を含めたアプローチが必要になるわけです。
カラダ取説®︎
ー これまでのお話をお聞きしていると、理学療法士含め患者さんに運動指導をする身として、専門家もコミットメントしていないと成立しないように感じます。
武田先生 その通りだと思います。理学療法士もそうですし、医師もそうだと思います。笑い話ではありますが、太った医師が患者さんにダイエットを勧めるということがあってはなりません。
が、比較的よく見られるのが現実ではないでしょうか⁈ それもTVの健康番組でさえそのような現実を目にします。健康を専門とするものが、健康に気を使っていない、特に実際にそのように行動できていないのは問題ですね。
私のクリニックの職員も、喫煙者はそもそも入職することができません。これは、専門家としての務めであり、マナーでもあると思っています。
実は、そういったことも含めて、ピラティス本来のあるべき姿を、実際の生活に即して教えているのが「カラダ取説®︎」というものです。もちろん、専門的なカラダの使い方もお伝えしますし、最後の部分では「自分の健康は自分で守る」というピラティスの理念「Whole Body Commitment」の意思を根付かせることもプログラムに含んでいます。
理学療法士でヨガの指導者として知られる中村尚人先生ともよく話をしていましたが、私としては、このような教育は、学校教育から積極的に取り入れるべきだと思っています。
本来は、学校の教育として行われるのが理想ですが、どうしても保守的になりがちな行政側の事情もありますので、現状では、まずはこちらで行なっています。
これまでもたくさんの方々に受講いただき、本年度から九州女子大学栄養学科の正式なプログラムに導入されました。理学療法士の養成校にも導入という話もいよいよ現実味を帯びてきています。
ー そもそも、なぜカラダ取説®︎という名前にしたのですか?
武田先生 私がピラティスを学び始め、徐々に日本でもピラティスの名前がメディアを通じて広まってきた中、突如として「マットピラティス」という言葉を目にすることが多くなりました。
私の知っているピラティスは、リフォーマーやチェアーなどのピラティス専用器具を用いたものです。フィットネスの世界では、従来のエアロビクスのスタジオをそのまま使って、新たなコストをかけないでグループレッスンの新しいバリエーションの一つとして取り入れられたので、マットピラティス中心になったようですが、このような多人数の集団を一人のインストラクターが個々のカラダをコントロールさせることは現実的には難しいはずです。
shutterstock:リフォーマー
私は、このフィットネスとしてのピラティスが、日本国内においてはピラティスとして世間一般の方々の印象として根付いていたため、これによって逆にピラティスという名前を使うことが、本当の意味でのピラティスを皆さんに理解してもらうのには邪魔になりました。
事実、ピラティスのインストラクーに私はこんな質問をよくしました。
「初めてピラティスを見た人に、これはなんですか?と聞かれたらあなたは何と答えますか?」
と。そうすると、その回答はインストラクターによって様々な違う答えが返ってきました。同じピラティスというものを学んで、教えているはずなのに、その目的や効果、内容についての回答が人によって違うのです。
「体幹トレーニングの一種」という人もいれば、「体幹を鍛えながらストレッチの要素もある」など、先ほどのファンクショナルトレーニングの話ではないですが、皆、補足的な内容の方が主になる答えが返ってきました。
そのような現実を目の当たりにすると、ピラティスという言葉以外で、本来のピラティスの本質を伝えなければならないと、私は考え始めました。
そこで長年、ピラティスの本質を一言で表すことのできる名前ないかと考え続け、「カラダ取説®」という言葉を作り「カラダ取説®︎」という名前で当初、一般向けの講座を作りました。
カラダ取説は基本的に、どころか、今の日本のピラティス指導の現状を考えると、むしろ「カラダ取説」こそが、“正にピラティスそのもの”と言えます。ピラティスの動きを日常生活に組み込むことで、スタジオ以外でも自分自身の正しい姿勢とカラダの使い方を向上でき、その結果として、日常生活の中でカラダを痛めないで体づくりができます。
スタジオだけでピラティスというある種のエクササイズとしてだけで動いて、日常生活では適当に自分のカラダを動かすのでは意味がありません。日常生活の中での姿勢と動作の改善・向上にこそ真の健康が隠されているのです。
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続くー。
【目次】
第二回:一流の医師から学ぶ仕事の流儀
第三回:自分にも患者にもコミットメント
最終回:ピラティスを越えたその先へ
武田淳也先生のプロフィール
<経歴>
平成 5年 福岡大学医学部卒
平成 5年 福岡大学病院 整形外科教室入局
平成 7年 臨床研修修了
平成 7年 福岡市保健福祉局 中央保健所 予防課医師(在職中、国立公衆衛生院長期研修、結核予防研究所長期研修)
平成11年 福岡市保健福祉局 東保健所 予防課予防係長(医長級)
同年 以降 広島県立病院麻酔救命救急治療科、島根医大整形外科、アメリカへスポーツ医学研修留学(7医療機関)、整形外科進藤病院、川嶌整形外科病院、船橋整形外科スポーツ医学センター、アメリカへピラティス・リハビリテーション 認定資格取得コース等、国内外で研修、勤務
平成17年 Polestar Pilates(米国マイアミ本部))にてピラティス・リハビリテーション指導者資格取得、
同年 福岡市にスポーツ・栄養クリニック開業
平成18年 Pilates Lab福岡開業、日本ピラティス研究会設立
平成20年 Pilates Lab代官山開業
平成24年 スポーツ・栄養クリニック薬院 通所リハビリテーションセンター開業
平成25年 スポーツ・栄養クリニック代官山開業
同年 ストレッチ&コンデッィショニングDr.Plus開業
<資格・所属学会・団体など>
- 日本整形外科学会認定専門医/認定スポーツ医/認定運動器リハビリテーション医/認定脊椎脊髄病医/認定リウマチ医
- 日本体育協会公認スポーツドクター
- 日本医師会認定健康スポーツ医/認定産業医
- 日本骨粗鬆症学会認定医
- 日本臨床内科医会認定臨床内科専門医
- 日本糖尿病協会療養指導医
- 認定認知症相談医
- 日本抗加齢医学会認定専門医
- 義肢装具判定
- 介護支援専門員
- 全日本スキー連盟公認指導員/検定員/ドクターパトロール
- 日本ピラティス研究会会長
- Motor Control: ビヨンド・ピラティス®代表、クリエーター
- PMA-CPT(Pilates Method Alliance Certified Pilates Teacher)
- Core Align®認定インストラクター、ファカルティトレーナー(日本に5人のみ)
- Bodhi サスペンション・システム認定インストラクター、ファカルティトレーナー(日本に2人のみ)
- Pfilates®認定インストラクター(ファカルティトレーナー、アジアエリアコーディネーター)
- カラダ取説マスター・シニアエデュケーショナル
- 日本整形外科学会 会員
- 日本臨床整形外科医会 会員
- 日本整形外科スポーツ医学会 会員
- 日本関節鏡・膝・スポーツ医学会 会員
- 日本臨床スポーツ医学会 会員
- 日本運動器科学会 会員
- 日本腰痛学会 会員
- 日本ダンス医学会 会員
- 日本骨粗鬆学会 会員
- 日本抗加齢医学会 評議員
- 運動器抗加齢医学研究会 世話人
- 日本肥満学会 会員
- 日本糖尿病学会 会員
- 日本臨床内科医会 会員
- 全日本スキー連盟 会員
- PMA(Pilates Method Alliance) 会員
- 日本ピラティス研究会 会長
- NPO法人芸術家のくすり箱 プロフェッショナル会員(ダンサー、芸術家のメディカルサポート)
- 日本カラダ取説協会 会長
- 広域医療法人明和会 スポーツ・栄養クリニック理事長
- Pilates Lab(代官山・福岡)代表
- ストレッチ&コンデショニングDr.Plus 顧問
- ToeSox Japan 顧問
- 日本経済大学健康スポーツ経営学科客員教授
著書
12月9日(土)ビヨンド・ピラティス無料体験会の詳細
東京会場:12月9日(土) 15時~18時
場所:Pilates Lab代官山スタジオ
〒150-0021
東京都渋谷区恵比寿西2丁目21−4 代官山パークスビル3F
内容:
・ピラティスの効果、エクイップメント(器具)を使ったピラティス体験
・立位でのMotor Control 改善に最適な、新時代トレッドミル「CoreAlign®」体験
・クライミングロープを使ったサスペンション等ツールの機能的進化版「Bodhi Suspension System®」体験
・臨床応用・予防事業へ展開の提言・ディスカッション
第二回満員につき急遽、第三回(12/9)開催決定!